ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
私はたきなと共に拳銃の銃口をリコリスの集団に向けたまま、淡々と冷たい現実を告げた。彼女たちは治療を終えて動ける状態だが、武器を置けば安全だ。
フキ
どういうつもりだッ! 千束、たきな! 本部に反旗を翻す気か!?
フキが血相を変えて噛み付いてくる。私は呆れを通り越して、はぁ、と小さく溜息をついた。
千束
はぁ〜、ほんと馬鹿だねぇ〜。フキ、よく聞きなよ? 私たちはもう、DAに所属するしがないリコリスじゃないんだよ
たきな
その通りです。私たちは既に、日本を正すための別の組織に所属しています
私たちがそう言い切った瞬間、無線機から楠木司令の低く、険しい声が割り込んできた。
楠木
『千束、たきな、どういうことだ!? 裏切ったのか!?』
千束
何言ってんの〜楠木さん。裏切った? 違うよ〜。ねぇたきな?
たきな
そうですね。おもてがえっただけですよ
楠木
『なんだと……』
千束
そもそもさ、私は最初からリコリスの『命をかけて人を守る』なんて、DAの歪んだ大義名分はどうでもよかったんだよね〜。自分が楽しいと思える場所で、自分の好きなことをしたかっただけだから
たきな
私もです。……なんであの頃の私は、あんなにも本部に戻ることにこだわっていたのでしょうか。今思えば、呪いに縛られていたようなものです
私とたきなは、DAの作戦がいかに腐敗しきっているかを指摘し始めた。
千束
何度も言わせないでよ。DAの考える作戦って、全部が全部、穴だらけなんだよね〜
たきな
ですね。私達は此処に真島達が居ない事は分かっていましたけど、本部(DA)の連中はまだそこに気づいてすらいない
楠木
『どういうことだ!?』
たきな
まず、真島たちが手に入れた銃は約1000丁。仮に1000人の反乱分子がいれば、この閉所にいる私達を殲滅するのは容易いはずです。しかし、真島たちはそうしなかった
千束
そして真島はその銃を街中にばら撒いた。此処から考えられる目的は唯一つ。それは……
「「リコリス、果てはDAの存在を、この国中に知らしめること」」
私たちの言葉に、リコリス達が一斉に息を呑む。楠木の沈黙が、その図星さを物語っていた。
千束
平和ボケした日本人の前で、あの放送を流して、最後には銃まで発砲した。リコリスは日常的に銃を使っているから麻痺してるけど、真島はそこを逆手に取ったのさ
たきな
ばら撒かれた1000丁もの銃をすべて回収するのは物理的に不可能です。そして、その銃を持った民間人が発砲し、その事件を処理するためにリコリスが動けば……どうなると思いますか?
千束
情報社会の今の日本なら、隠し通すことはできない。1000件もの事件が起きれば、リコリスの存在は完全に露見する。DAがこれまで積み上げてきた『隠蔽』の城は、真島の一手で崩壊するんだよ
無線越しに、楠木たちが戦慄しているのが分かる。ようやく真島の恐ろしい真意に気づいたようだ。
楠木
『……! 銃を持った民間人には関わるな! 絶対に発砲するな……! リコリスの存在をあぶりだすことが、奴の本当の狙いだ……ッ!』
千束
だから、それら今私たちが言ったこと。それを最初に考えんのがアンタの仕事でしょうよ。今のDAは、もう脳みそまで腐りきってるってこと
楠木
『クッ……ッ!』
たきな
こんな腐った組織に自分の命を預けるなんて、もうできません。だから私たちは……
その時、背後の扉が重々しい音を立てて開いた。
??
どの道、DAは解体される
聞き覚えのある、芯の通った声。私は顔を綻ばせ、振り返った。
たきな
遅かったですね……?
緋村零
少し、予想外のことがあってね
千束
でも、来てくれると信じてたよ!
そこに立っていたのは、迷いのない瞳をした零君と式さんだった。
ようやく来てくれた。私たちの新しい場所、私たちの『正義』のリーダー。
千束
遅いよ、隊長!
私は拳銃をホルスターに収め、最高に晴れやかな笑顔で彼らを迎えた。