ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
たきな
隊長、遅かったですね……?
たきなが少し視線を険しくしながらも、安堵を隠せない声で迎える。
緋村零
ちょっと予想より敵の数が多かったもんでね。待たせてすまない
千束
遅いよ、隊長! でも、来てくれると信じてたよ! ……それより、そちらの綺麗な女性は?
私が興味津々に視線を向けると、零君は優しく微笑んで彼女を前に促した。
緋村零
あぁ、紹介するよ。黛煙。俺やグローザの前前世のメンバーであり、俺の妻だ
黛煙
始めまして。戦術人形、黛煙と申します。よろしくお願いします
戦場とは思えないほど凛とした、美しい一礼。その気品に圧倒されながらも、私とたきなはすぐに言葉を返した。
たきな
ご丁寧に……。井ノ上たきなです
千束
錦木千束です〜。よろしくね!
新しい仲間との出会いに私が笑顔を浮かべた瞬間、フキが怒りを爆発させて怒鳴り込んできた。
フキ
お前たち、何者なんだッ! 千束、たきな! 本部を裏切ってそんな不審者たちと手を組むつもりか!?
激昂するフキの前に、零君が静かに歩み出る。その圧倒的な存在感に、リコリスたちの間に緊張が走った。
緋村零
始めまして、リコリスの諸君。俺は緋村零。千束たちが新たに所属する組織の小隊長だ。……あぁ、君たちには『JTR』と言った方が伝わるかな?
フキ
……! お前が、あのJTRだと!?
フキが驚愕に目を見開き、一歩後退りする。リコリスの誰もが必死に隠蔽し、恐れていた伝説の存在。まだ半信半疑の彼女たちに向けて、零君は懐からあの不気味な仮面を取り出してみせた。
緋村零
この仮面が証拠だよ。偽物だと思うかね?
フキ
なっ……! お前、何者なんだ! 私たちが総力を挙げて調査しても何も出なかった男が、なぜここにいる!
確信に変わった恐怖から、フキの声が裏返る。そんなフキを哀れむように、たきなが冷たい声を響かせた。
たきな
フキ、無駄な詮索はやめなさい。零さんは、私の行動を認めてくれた人です。あの銃撃戦の時、本部の誰もが私をクズ扱いした。だけど零さんは言ってくれたんです。ルールを守らない奴はクズだが、仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ、と
その言葉は、無線機越しに聞いている楠木司令や、目の前のリコリスたちの胸に鋭く突き刺さる。
たきな
組織としては間違っていたかもしれない。でも、人間としては間違っていなかった。隊長は、私の意志を、魂を認めてくれたんです
緋村零
その通りだ。命令に盲従するだけなら猿でもできる。例え組織の命令であっても、間違っていると思ったら立ち止まり、自分を貫く勇気を持つべきだ。それができない君たちはどうだ?
式
私達から見れば、貴方達は自分の頭で考えもしない、ただ上からの命令で人を殺すだけの獣よ。人間以下だわ
式の冷酷な一言が、リコリスたちのプライドを粉々に打ち砕く。私はやれやれと首を振り、無能な司令部に向けてトドメを刺した。
千束
だいたいさ、悪い兵隊なんて最初からいないんだよ。あるのは無能で悪い指揮官たちだけ。上が馬鹿だと、いっつも現場の人間が割を食うんだよね〜。今回の作戦の穴だらけっぷりを見て、まだ気づかないの?
黛煙
機械や本部のデータに頼りすぎた結果、皆さんは自分で考えることを放棄してしまったのですね。特にこのような、一度歯車が狂えば崩壊する融通の利かない組織は、あまりにも脆いものです
楠木
『……クッ……!』
無線越しに、楠木司令の屈辱に満ちた歯軋りが聞こえる。目の前のリコリスたちは完全に戦意を喪失し、その手から銃が次々と床へ落ち、硬い音を立てた。
緋村零
さて、これ以上ここに留まるのは危険だ。周囲には負傷者も多い。これより我々の指示に従って下に降りてもらう。異論は認めないよ?
たきな
皆さん、死にたくなければ大人しく従ってください。……でないと、次はその脳天に風穴を開けることになりますよ?
たきなが冷徹な笑みを浮かべ、再び銃口をフキの眉間に突きつける。その本気の殺気に、フキは悔しそうに拳を握りしめ、ついに頭を下げた。
フキ
……わかった。従おう
緋村零
よし、これより一時撤退する! 全員、遅れるな!
黛煙
了解いたしました
式
了解
千束
了解〜!
たきな
了解です!
腐りきったDAという過去に別れを告げ、私たちは新しい『正義』のリーダーと共に、光の差す出口へと歩き出した。