ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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突入作戦準備。懐かしい相棒

 

作戦テントの内部は、これから始まる地獄のような屋内戦を前に、静まり返った緊迫感に包まれていた。

 

今回、延空木の内部に突入して直接戦闘を担当するのは、エルモから俺、黛煙、千束、たきなの4人。そして陸上自衛隊第1普通科連隊のレンジャー隊員、警視庁のSIT、SAT、NPSの精鋭たちだ。

救出部隊には警察機動隊、消防部隊、そして各医療機関の面々が控え、残りのエルモのメンバーや大門軍団は周辺の完全な警戒任務に当たることになっていた。

俺は作戦机の上で、これまで使っていたM4A1カスタムのボルトキャリアを引き抜き、整備を進めていた。そこへ、静かな足音とともに黛煙が歩み寄ってくる。

 

黛煙

零、この銃を

 

彼女の両手には、重厚な黒いライフルケースが捧げられていた。

 

緋村零

黛煙、これは……?

 

黛煙

あなたにとって、本当の真の相棒です。ロックナンバーはゼロ・ゼロ・ツー・ゼロですよ

 

俺は言われた通りに4桁のダイヤルを「0020」へと合わせ、金属製のバックルを外してケースを開いた。油とスチールの匂いとともに、その中に収められていた鈍い黒の兵器が目に飛び込んでくる。

 

緋村零

20式小銃……

 

それは、俺がかつて「十六夜」として血煙の舞う戦場を駆け抜けていた頃に愛用していた、文字通りの相棒だった。

 

黛煙

あなたが前の世界で命を落とした後、ずっとそよ風小隊の皆で大切に保管していたんです。あなたと、再び共に戦える日が来ると信じて……。内部の整備は私が完璧に施してありますから、安心して引き金を引いてください

 

俺はケースから20式小銃を厳かに取り出し、そのグリップを握り締めた。現在は生身の人間の身体であり、まだ戦術人形に戻っていないため烙印システムは機能していない。だが、驚くほどに掌へ馴染み、しっくりとくる。まるで自分の肉体の一部が戻ってきたかのような懐かしい感覚だ。

 

緋村零

ありがとう、黛煙。まさかこの世界で、またこいつの手触りを感じられるなんて思ってもみなかったよ

 

黛煙

ふふっ。やはり零には、その武器が一番似合います。各種アクセサリー類もここに揃えておきましたよ

 

ケースの二重底から、当時使っていた各種カスタムパーツが顔を出す。今回は極限の閉所戦闘――すなわちCQBとCQCが強く意識される苛烈な屋内戦だ。俺は迷うことなくパーツを選別し、20式へと組み込んでいく。

・二脚付きフォアグリップ

・EOTech EXPS3ホロサイト

至近距離での精密射撃と、不意の遭遇戦に対応するための完璧なCQBカスタム。サイドアームには、これまで通り信頼性の高いSFP9をホルスターに収めた。

隣の黛煙も、手慣れた動作で俺と同じようなカスタムを自身の愛銃に施していく。そこへ、天幕の隙間から二人の少女が顔を覗かせた。

 

千束

零君、黛煙さん、状況はどう?

 

たきな

こちらはいつでも突入できる準備が整いましたよ

 

入ってきた千束とたきなは、すでに完璧な戦闘装備を身に纏っていた。

千束はHK416と、その腰にデトニクス・コンバットマスターを。

たきなはAR15とS&W M&P9を装備している。たきなの持つAR15の銃身は、至近距離での格闘戦を想定したCQC仕様へと見事にカスタムされていた。

 

緋村零

あぁ。こちらの準備も今終わったところだ

 

黛煙

ええ、完璧ですよ

 

俺と黛煙が答えると、二人の視線が俺の持つ20式小銃へと釘付けになった。

 

千束

ねぇ零君、それって……もしかして20式小銃だよね?

たきな

以前、人間から戦術人形になって、戦術人形20式と言っていたのはしってますが…

 

二人とも興味津々といった様子で目を丸くしている。この世界においても、20式は一部の精鋭にしか配備されていない最新小銃だ。外にいる第1普通科連隊の一般隊員たちですら、まだ89式小銃が主力なのだから無理もない。

 

緋村零

前の世界で俺が肌身離さず使っていた武器なんだよ。ある意味、俺の本当の相棒が戻ってきた、ってところかな

 

千束

じゃあ、これがあの恐ろしい終末世界で、零君の命をずっと守り続けてきた武器なの……!?

 

たきな

これが……あの世界の技術で調整された銃……

 

二人は感嘆の息を漏らしながら、20式のレシーバーを凝視してくる。すると、千束がふと何かに気づいたように人差し指を立てた。

 

千束

そういえばさ……。前からちょっと不思議に思ってたんだけど。黛煙さんが使ってるのって中国の95式自動歩槍だよね? 絳雨さんは97式だし、朝暉さんは06式短機関銃、緋さんはCZ75。みんな中国とか東側の武器だし……

 

たきな

言われてみれば、グローザさんはOTs-14、ネメシスさんはOM50、キャロリックさんは刀で、コルフェンさんは380Curve……。零さんや黛煙さんを含めても、エルモの皆さんって装備の統一性がまったくありませんよね? 組織としては不自然というか……

 

鋭い指摘だ。軍や警察の組織であれば、弾薬や部品の補給の観点から普通は銃器を統一する。俺は20式を肩に担ぎ直し、二人に向き直った。

 

緋村零

黛煙や絳雨たちが『戦術人形』だということは教えてあるだろ。実は戦術人形には、それぞれ固有の『スティグマモデル』っていうものが存在するんだ

 

千束、たきな

スティグマモデル?

 

二人が同時に小首を傾げると、黛煙が銃のボルトを軽快に引きながら説明を引き継いだ。

 

黛煙

スティグマとは、戦術人形のメンタルモデルと特定の銃器の間に特殊な繋がりを持たせ、戦闘能力を極限まで向上させる技術のことです。スティグマモデルとは、その人形の魂と完全に結びついた『専用銃』を指します

 

緋村零

この技術が施された戦術人形は、その銃がまるで己の右腕や半身のように感じられるんだ。自分の専用銃を用いている時に限り、人形の運用効率や銃撃精度は大幅に向上する。それどころか、手元を離れて離れた位置にある銃の『銃口の向き』すら空間的に感知することが可能になるんだよ

 

千束

なに……その恐ろしいチート技術……

 

千束が呆然とした表情で呟く。銃弾を完全に見切るお前が言うな、と内心で突っ込みを入れたが、今は黙っておく。

 

たきな

つまり、その専用銃が黛煙さんにとっては95式であり、絳雨さんにとっては97式である、ということですか?

 

黛煙

そういうことです。だから私たちが別の銃を使っても、その驚異的な恩恵は受けられないのですよ

 

緋村零

実際、俺も前の前世界では、この20式小銃を自身のスティグマモデルとして設定していたからな。生身の今でも、身体が感覚を覚えている

 

千束とたきなは完全に啞然とし、驚きのあまり言葉を失っていた。やがて、千束の目がギラリと輝きを帯びる。

 

千束

……ってことはさ! 私たちももし本当に戦術人形になって、私のHK416とデトニクスをスティグマモデルに設定したら、今よりもっと銃撃精度とか反応速度が跳ね上がるってこと!?

 

緋村零

まぁ、理論上はそうなるな。本来、最初から戦術人形として製造された黛煙たちは、人生で1つだけのスティグマモデルしか設定できない。だが、生身の人間から戦術人形へと改造された個体の場合は、例外的に2つのスティグマモデルを設定できる特権がある

 

たきな

2つの武器を、自分の身体の一部に……。本当に凄い技術ですね……

 

たきなが自身のAR15を愛おしそうに見つめる。

 

緋村零

まぁ、人間から戦術人形になるなら、脳以外は戦術人形と同じになるってだけ。その分費用がバカ高いけどね

 

千束、たきな

確かに……

 

緋村零

行こうか。戦争を煽り、テロの火に油を注いで大金を得ようとする、薄汚い亡者どもの息の根を止めに

千束、たきな、黛煙

了解!!

3人の決意に満ちた声が作戦天幕を震わせ、俺たちは死線が待つ延空木の内部へと、再びその足を進めた。

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