ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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会合5、最終戦へ向けて

場面は少し遡り、俺たちが中層階の通路で坂柳有栖、神室真澄の二人と接触した辺り。

 

緋村零

今、後方の救護部隊を要請した。もう安心しろ

 

たきな

これより応急処置に入ります。動かないでください

 

黛煙

私も手伝います。固定資材を回しますね

 

たきなと黛煙が素早く腰を落とし、坂柳と神室の容態を検分しながら的確に応急処置を施していく。

 

坂柳

……ふふ、ご丁寧にありがとうございます

 

神室

あぁ、助かるわ。ありがとう

 

坂柳の左肩には弾丸が肉を抉った生々しい銃創があり、神室の方は爆風による切り傷などの軽症のようだ。二人が治療を受ける中、千束がしゃがみ込んで顔を覗かせた。

 

千束

ねぇねぇ、二人はあのホワイトルームに居たの?

 

坂柳

ええ。私達と綾小路君は、言わば同期のようなものでした

 

神室

綾小路はあのクソ施設の創設者の息子なだけあって、まぁ、かなり優秀だったわね

 

私達、という言葉に俺は引っかかりを覚えた。

 

緋村零

私達ってことは、他にも生き残りが居たのか? 椎名ひよりって子は、以前に綾小路と一緒に居たところを俺たちが保護したんだが……

 

坂柳

そうですか。椎名さんも無事でしたか。それは重畳です

 

神室

ふん、まああいつ、見た目は物静かで大人しそうに見えて、案外肝が座ってるからね

 

安堵したような口ぶりの二人だったが、すぐに互いに顔を寄せ合い、こちらの鋭い聴覚を無視してボソボソと呟き始めた。

 

坂柳

椎名さん、抜け駆けしやがりましたね……。私を差し置いて、先に彼に匿われるなどと

 

神室

あの女……後で絶対に問い詰めてやる

 

小声で話しているつもりだろうが、俺には全部丸聞こえである。綾小路君、君は今後の女性関係で相当な苦労をしそうだね。前の世界(原作)でも色々と大変そうだったが、と俺は心の中でそっと遠い目をした。

そんなやり取りをしていると、インカムからノイズ混じりの緊急放送が響き渡った。

 

陣頭指揮所

『こちら陣頭指揮所。突入中の各隊へ緊急報告。エルモ、陸自、SAT、NPS隊がそれぞれ別ルートにて少女たちの保護を完了。詳細はすでに政府に通達済みである。――尚、防衛省情報本部より新たな情報報告。現在、延空木の上層階に残っているのは、テロの首謀者たるヴァサゴ、ガブリエル、真島の3名のみ。よって、これ以上の戦力分散を避けるため、エルモ以外の各通常部隊は消防、救急隊、および保護した少女たちを護衛し、ただちに地上へ撤退せよ』

 

それは、指揮所からの非情かつ明確な作戦変更命令だった。

 

緋村零

……なるほどね。上層部はそういう判断を下したか

 

黛煙

そう言うことですか……。話が早くて助かりますが

 

俺と黛煙は瞬時にその命令の真意を悟った。しかし、無線機からは同行していた他隊の指揮官たちの反発する声が次々と飛び込んでくる。

 

中丸

『こちらSAT中丸! いくら残っている敵が3名だけだとしても、相手はプロの傭兵だ! エルモの4人だけで対応させるなど不可能だ!』

 

船越

『こちら陸自の船越だ。SATの意見に同意する! 少なくとも、遊撃戦に対応できる我々陸自レンジャーはこのまま同行するべきだ!』

 

香椎

『こちらNPS隊の香椎です。我々も同じ意見です。子供たちの未来を奪った首謀者を野放しにはできません』

 

各隊の熱い言葉が飛び交う。だが、指揮所のオペレーターはそれを冷徹に遮った。

 

陣頭指揮所

『全隊、よく聞け。防衛省からの極秘プロファイルにより、最上階に残っている3名は、個人の聴覚が化け物じみて研ぎ澄まされていたり、元特殊部隊の暗殺専門職だったりと、常人の枠を遥かに逸脱した怪物であることが判明した。通常部隊がこれ以上踏み込めば、無駄に被害を徒に出すだけだ。相手が化け物じみているというのであれば、こちらも化け物じみた部隊を当たらせるしかない。……緋村隊長、頼むぞ』

 

俺は無線機のスイッチを押し、確固たる意志を込めて告げた。

 

緋村零

こちらエルモ、緋村零。皆さんのお気持ちは本当にありがたいです。ですが、ここから先は俺たちの領域だ。どうかここは我々に任せて、子供たちの護衛を最優先にしてください

 

中丸

『……クッ。こちらSAT、了解した。エルモ隊、幸運を祈る!』

 

船越

『こちら陸自、了解した。全員、無事で戻れよ。武運を祈る』

 

香椎

『こちらNPS隊、了解しました。後は頼みます、零さん』

 

各隊が悔しさを滲ませながらも撤退の了解メッセージを終えた時、入れ替わるように指揮官からのダイレクト通信が入った。

 

指揮官

『零、聞こえるか?』

 

緋村零

聞こえてるよ、指揮官。どうした?

 

指揮官

『先に保護した少女たちからの聞き取りで、まだ最上階付近で孤立している残存人員の名前が判明した。保護した少女たちの名簿とともに、今そっちの端末にデータを送る。あと、例の不正規部隊リリベルとかいう連中からも、何人か身元を確認できない行方不明者が出ているそうだ。そちらのリストも同期する』

 

緋村零

黛煙、千束、たきな、これを見てくれ。ターゲットの確認だ

 

直後に、俺の腕に取り付けられた戦術端末にデータが転送されてきた。画面に表示された文字を、全員で凝視する。

【救助済み】

坂柳有栖、神室真澄、堀北鈴音、櫛田桔梗、一之瀬帆波、松下千秋、鬼龍院風花、篠崎里香、綾野珪子、星山翠子、本多小春、兎沢深澄、朝田詩乃、竹宮琴音、早乙女紗知、帆坂・カリーナ・朋、小比類巻香蓮、篠原美優、高峰紅葉

【未救助(行方不明)】

結城明日奈、枳殻虹架、桐ヶ谷直葉、紺野木綿季、紺野藍子、桐ヶ谷和人、三上悟

画面に並んだ名前に、俺は思わず目を見張った。

 

緋村零

(……おいおい、前の世界で会ったことのある奴らが何人か混ざってるぞ。これもクロスオーバーの歪みの影響か? っていうか、三上悟って……転スラのあの魔王になる前の男じゃないか……?)

 

黛煙

未救助は、あと7人ですか……

 

たきな

上のフロアが完全に制圧される前に、早く探し出さなきゃ……

 

ガタガタッ!!

 

一同

……!!

 

突如として、上層へと続く暗い通路の奥から、無数の激しい足音が響いてきた。全員が瞬時に銃口をその闇へと向け、完璧な射撃体勢をとる。俺は目配せで合図を送り、千束とたきなを怪我人である坂柳と神室の盾になるように側へ固めさせた。

直後、暗闇の通路を必死の形相で走ってきた人影が、ロビーの明かりの中に飛び込んでくる。

 

緋村零

動くな!! 武器を捨てろ!

 

黛煙

そこまでです、動かないでください!

 

??

……っ、敵か!?

 

??

くそ! こんな狭い一本道で待ち伏せかよ……!

 

??

お兄ちゃん、どうする!? 戦う!?

 

現れたのは、少年が2人に、少女が5人の計7人の集団だった。

 

緋村零

待て、銃を下ろせ! 我々は敵ではない! 救出部隊だ

 

俺と黛煙は20式小銃の銃口を下げて見せた。背後で坂柳たちの側を固めていた千束とたきなも、それに倣って銃を収める。

 

??

……本当に、敵ではないのか?

 

集団の先頭に立っていた、黒髪の少年が警戒を解かずに鋭い目で問いかけてきた。

 

緋村零

敵じゃないよ、桐ヶ谷和人君。君たちを助けに来たんだ

 

桐ヶ谷

!……な、何故、俺の名前を……?

 

??

和人君、あの人のこと、どこかで知ってるの?

 

少年――キリトは完全に困惑している。自分の正体を知られているとは思っていなかったのだろう。

 

緋村零

分かってなさそうだな。……以前、街中で君にスーパーへの行き方を親切に教えた男だよ。覚えているか?

 

俺が苦笑混じりにそう言うと、桐ヶ谷和人はハッと目を見開いた。

 

??

あ、あああッ! あの時の、あの親切な人か!

 

ようやく記憶が繋がったようで、彼の顔から警戒の色が綺麗に消え去った。未救助リストの7人全員が、これで無事に揃ったのだ。そこへ、通路の後方から激しい足音が近づいてくる。

 

喜多見

MER、現着しました!

 

機動隊員

機動隊、現着! 医療班の護衛に入ります!

 

手配していた喜多見チーフ率いる東京MERと、護衛の機動隊が最高のタイミングで現場に到着した。

 

緋村零

桐ヶ谷君、詳しい話はこの事件がすべて片付いてからだ。――喜多見さん、この子たちに怪我がないか検分をお願いします! 連れて降りてください!

 

喜多見

了解しました! 零君、あとは任せましたよ!

 

緋村零

行くぞ、此処からは俺たちの仕事だ!

 

俺たちはその場を喜多見たちに完全に託すと、最上階の怪物を狩るために、一歩も引かずに上の階へと駆け上がっていった。

ちなみに……。

緋村零たちが上層階へと去った直後。

 

喜多見

みんな、もう大丈夫だからね。念のために、君たちの名前を教えてもらえるかな?

 

??

あ、はい……結城明日奈です。助けていただいてありがとうございます

 

??

桐ヶ谷和人です。こっちは妹の直葉

 

??

桐ヶ谷直葉です。よろしくお願いします!

 

??

枳殻虹架です。本当に助かりました……

 

??

紺野木綿季だよ! ありがとー!

 

??

紺野藍子です。妹ともども、お世話になります

 

??

三上悟です……。いやぁ、マジで死ぬかと思ったわ(転スラの魔王リムルの美しい人型の姿)

突如として現れた規格外の大人たちに守られながら、少年少女たちはようやく、本当の安堵の光の中に身を置くのだった。

 

しかしその頃

緋村零は20式小銃を背負い直して階段を駆け上がりながら、内心で激しいツッコミを禁じ得ずにいた。

 

緋村零

(なんでシズさん取り込んだ後の姿してんだよ三上悟! 名前は元のサラリーマンのままだし、名簿の文字と原作知識の見た目の情報量が完全に渋滞を起こしてるだろ! 転生前の記憶があるのかそれとも時空の歪みでグラフィックだけバグってんのかどっちだ!?)

 

あまりのクロスオーバーの暴走っぷりに、さすがの零も頭を抱えそうになる。原作を知っている身としては、あの青髪の美少女(中身は37歳おっさん)の姿で堂々と名乗られた衝撃は、テロリストの奇襲よりも心臓に悪かった。

 

千束

ねぇねぇ零君、さっきの最後に名乗った可愛い子さぁ、なんか凄い綺麗な髪の毛だったよね! 女の子だよね?

 

たきな

いえ、千束。名簿の表記は三上悟……男性の名前でした。それに、どことなく人間離れした、まるでお人形のような気配を感じましたが……

 

黛煙

ええ、あの少年からは、常人とは明らかに異なる膨大なエネルギーの揺らぎを感じました。ただの一般人ではないことは確かですね

 

緋村零

あー……うん、アイツに関しては深く考えるな。この世界が色々と混ざりすぎてて起きた、一種の超常現象みたいなもんだ。今はそれより、最上階のクソ野郎どもに集中するぞ

 

俺は強引に思考を戦術モードへと切り替え、ホロサイトのレティクルを闇の先へと向けた。

未救助の子供たちはこれで全員、無事に地上の大人たちの手へと引き渡された。

残るは延空木の頂上に居座る、戦争の味を占めた3匹の怪物――ヴァサゴ、ミラー、真島だけだ。

 

緋村零

行くぞ、そよ風小隊。ここからは一歩も引かない致死戦闘だ

 

千束、たきな、黛煙

了解!!

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