ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

64 / 134
事件収束、保護された者たち

陣頭指揮本部の天幕内には、無線から響いた緋村零の「死亡確認」の一報を受け、凄まじい歓声と安堵の息吹が爆発した。

 

香椎

各隊へ緊急伝達! 最上階の主犯格ガブリエル・ミラーの制圧、および死亡を確認! これを以て、延空木内に立てこもっていたテロリスト首謀者3名、すべて排除完了!

 

香椎隊長がマイクを握りしめ、天幕全体に響き渡る声で宣言した。その瞬間、緊迫しきっていたオペレーターたちが一斉に立ち上がり、互いに肩を叩き合って歓喜の声を上げる。

 

西郷

よし……! レンジャー部隊、ただちに緋村隊長の救出に向かえ! 瓦礫の撤去を最優先し、医療班のルートを最速で切り開くんだ!

 

陸自の西郷連隊長が、すぐさま精鋭たちへ無線で鋭い指示を飛ばす。

 

中丸

SATも追従する。最上階までの安全確保と、エルモの負傷者の搬送をサポートしろ。一人も遅れるな!

 

中丸隊長もヘルメットを叩き、待機していた隊員たちを次々と延空木の中へと突入させていく。その横では、東京MERの喜多見チーフがすでに医療資材を両手に抱え、天幕を飛び出す準備を整えていた。

 

喜多見

音羽先生、比奈先生、私たちは最上階へ直行します! 零君は限界を迎えてる、一刻を争いますよ!

 

音羽

分かっています。救急隊、スーパーアンビュランスの蘇生室を完全臨戦態勢で待機させておけ!

 

千住

医療班の盾は我々消防と機動隊が務める! 喜多見、俺たちの背中に隠れて最短距離を突っ走っれ!

 

千住隊長率いるハイパーレスキュー隊が、巨大なカッターや油圧ジャッキを担いで先陣を切る。

 

天幕の外では、赤色灯の海の真ん中で、救出された大勢のリコリスたちや、桐ヶ谷和人、三上悟といった少年少女たちが、最上階を見上げてその瞬間を静かに待っていた。

首謀者たちの完全排除と、エルモの勝利。

 

千束

やった……! やっぱり零君たちなら、絶対にやってくれると信じてたよ!

 

たきな

ええ。これで本当に、すべてが終わったんですね……

 

千束とたきなは互いに顔を見合わせ、これまで背負っていたすべての呪いから解放されたような、心からの笑顔を咲かせた。

 

大門

お前ら、聞いたか! 零の野郎、あの怪物を本当に地獄へ送り届けやがったぞ! これより負傷者の収容と周囲の警戒をさらに厳重に行う! 最後の最後まで、日本の警察の意地を見せてやれ!

 

谷、源田、松田

おう!!!

 

大門団長の野太い怒号が広場に響き渡り、大門軍団の面々も白バイやパトカーの無線を切り替え、さらに誇らしげに周囲の警戒へと散っていく。

上空を旋回する自衛隊や警察のヘリコプターのローター音が、まるで勝利を祝福する凱歌のように夜空に轟いていた。国を挙げた未曾有の総力戦は、現場の大人たちの圧倒的な信念の前に、一人の犠牲者も出すことなく、完璧な「正義」の勝利を以て幕を閉じたのだった。

 

エルモ指揮所Side

指揮官

そうか、無事に終わったか。全員よくやってくれた

 

グローザ

『ええ。零がガブリエルを、黛煙がヴァサゴを完全に仕留めたわ。……ただ、真島に関しては少し問題があってね。塔の最上階から飛び降りたらしいの。戦った千束とたきなからの情報をもとに、大門軍団と一緒に落下地点を徹底的に調べたけれど、遺体は確認できなかったわ。あの執念深さよ、生きていると見るべきね』

 

緋村零から作戦終了の暗号通信を受け、指揮官は前線で指揮を執っていたグローザと無線を繋ぎ、現状の最終確認を行っていた。

 

指揮官

そうか……。まあ、あの3人の怪物のうち、主犯の2人を確実に仕留められた。それだけでも初戦としては十分すぎる戦果だな

 

グローザ

『ええ。それに、予定外だったけれど『そよ風小隊』の残りのメンバーたちと合流できたのも、私たちにとっては大きな収穫だったわ』

 

指揮官

あぁ、そのことなんだが、そよ風以外の小隊のメンバーたちも各小隊長の下へ合流し始めている。といっても、時空の歪みの影響か、まだまだ本来の人数には程遠いがな。グローザ、とりあえず現地の後処理が済み次第、保護したリコリスとリリベルを連れて、エルモのセーフハウスへ帰還してくれ

 

グローザ

『了解。撤収準備に入るわ』

 

ツーツーと静かに無線が切れる。受話器を置いた指揮官は、深く息を吐いた。

 

指揮官

ふぅ……。ひとまずは、すべて上手くいきましたね

 

ザ・ボス

そうね。でも、これが終わりではないわ。むしろ、これから始まるのよ

 

指揮官

ええ。DAの解体、そしてこの国の真の夜明けへの……『始まり』ですね

 

隣に立つザ・ボスは、厳かに窓の外の夜空を見つめ、次なる戦いへと視線を巡らせていた。

 

国会議事堂、地下セーフルームSide

大高

そうですか。無事、作戦は成功に終わりました。

 

ザ・ボス

『ええ。ガブリエル、ヴァサゴは完全に排除したわ。しかし、真島の遺体だけが確認できていない。恐らく、悪運強く生き延びている可能性が極めて大ね』

 

グローザたちからの最終報告を受け、ザ・ボスは地下に潜む大高議員と秘匿回線で連絡を取り合っていた。

 

大高

そうですか。……それより、前線に突入した零君たちの被害は?

 

ザ・ボス

『問題ないわ。零が肉弾戦で多少の打撲を負ったくらいで、エルモの全員、怪我もなく無事よ。リコリスたちも全員息があるわ』

 

大高

……よかった。しかし、本来ならば大人である我々政治家がどうにかすべき事態だった。平和ボケしたボンクラ議員どもの不甲斐なさのせいで、現場にこれほどの負担を強いるとは、まったく情けない限りだ

 

ザ・ボス

『大高さん、落胆する必要はないわ。その腐りきった現状を根底から変えるための、私たちの『クーデター』でしょう?』

 

大高

……そうですな。しかし、彼らには今後、さらに国家の命運を分ける困難な任務を請け負ってもらうことになる。ボス、彼らの最高司令官として、引き続き頼みますぞ

 

ザ・ボス

『勿論よ。子供たちの未来は、私たちが守るわ。では』

 

大高

はい。失礼する

 

ツーツーと通信が切れ、大高は深く椅子の背もたれに身体を預けた。

 

大高

(これでDA本部の楠木たちがどう動くかですが……。フッ、少なくとも今は、作戦が完璧に成功したことを素直に喜びましょうかね)

 

延空木Side

 

香椎

緋村君、大丈夫か? 無茶をしおって

 

緋村零

大丈夫です。香椎隊長、最高のタイミングでの救援、本当にありがとうございました

 

俺は最上階の冷たい床で、応援の到着を静かに待っていた。その後、NPS隊と救急隊の精鋭たちがフロアに突入。迅速な応急処置を受けた後、俺たちはガブリエルの遺体を収容し、地上1階のエントランスへと降りてきた。

 

緋村零

神御蔵さん、すいませんね。戦闘終了早々、こんな厳つい死体の運搬までお願いしちゃって

 

神御蔵

な〜に言ってんすか! これくらい俺たちNPSにしてみりゃ楽勝すっよ! 緋村君こそ、あの怪物相手に本当によく踏ん張ってくれた!

 

緋村零

助かります。恩に着ますよ

 

そんな軽口を叩きながら、重厚な扉を押し開けて外の広場へと出た。まばゆい赤色灯の海をかき分けるようにして、見慣れた二人の美女が真っ直ぐこちらへと走ってくる。

 

黛煙

零!

 

グローザ

大丈夫? 無茶はしなかったでしょうね?

 

緋村零

黛煙、グローザ。心配かけたな。見ての通り、ピンピンしてて大丈夫だよ

 

駆け寄ってきた黛煙とグローザが、俺の身体を隅々まで検分して出迎えてくれた。どうやら地上の二人にも怪我はないらしい。

 

黛煙

良かった……。さあ、みんなが待っている救護テントへ案内するわ

 

黛煙とグローザにエスコートされ、広場の一角に設けられた大型の作戦テントの中へと入る。

 

千束

零君!

 

たきな

無事ですか、隊長!

 

緋村零

千束、たきな。二人とも、真島との因縁に完璧に決着をつけて無事で良かったよ。素晴らしい戦いぶりだった

 

絳雨

零お兄ちゃん、本当にお疲れ様! 最高の勝利だね!

 

朝暉

お疲れ。無事で何よりだよ

 

テント内には千束やたきな、グローザ小隊、そして再会したそよ風小隊のメンバーに加え、SATや陸自部隊が内部から救い出してきた大勢のリコリス、リリベルたちが肩を寄せ合って座っていた。その中から、何人かの少女たちが俺の顔を見て、ハッと息を呑む。

 

朝田

あなた……あの時、郵便局で私を助けてくれた……

 

兎沢

クリスマスの時に、不良から助けてくれた……

 

まあ、以前に俺がこの世界で単独行動をしていた時に直接接触したメンバーは、すぐに気づくよな。

 

緋村零

お久しぶりです。朝田さん、兎沢さん。それに……桐ヶ谷君も

 

俺が少し決まり悪そうに挨拶を返すと、3人もやはりといった得心のいった顔を浮かべた。

 

朝田

そう、やはりあの時の人だったのね。改めて名乗るわ、朝田詩乃よ。あの時は絶望の淵から助けてくれて、本当にありがとう

 

兎沢

兎沢深澄よ。クリスマスの時は、不良達から救ってくれてありがとう。また会えて嬉しいわ。

 

桐ヶ谷

桐ヶ谷和人だ。あの時はスーパーへの行き方を親切に教えてくれてありがとうな。まさかこんな凄い部隊の隊長だったなんて驚いたよ

 

緋村零

いや、別に昔のことだし、礼なんていいよ。当然のことをしただけだ

 

まあ、俺の顔と正体を知っている面々はこれくらいだ。残りの、まだ不安そうにこちらを伺っている大多数の子供たちに、まずは挨拶をして警戒を解かないとな。

 

緋村零

始めまして、俺は緋村零。よろしく

 

一同

どうも……。よろしく、お願いします……

 

まあ……突然現れた重武装の大人集団だ、当然すぐには馴染めず警戒するよな。

 

緋村零

別にとって食おうとか、DAみたいに都合よく使い潰そうなんて汚いことは考えていませんから、安心してください。君たちの今後の身の安全と生活は、この俺が命に代えて完全保証します。

 

結城

……それを、私たちが信じられるだけの明確な証拠はあるんですか? 私たちは今まで、大人の都合で裏切られ続けてきたんです

 

一歩前に出た結城明日奈が、リコリスとしての強い警戒心を宿した目で俺を真っ直ぐ見据えて問い詰めてくる。

 

緋村零

そこに関しては、心配いらない

 

千束

そうそう! 私たちの信じるミカ先生が、この零君たちの組織を全面的に保証してくれてるんだよ〜!

 

桐ヶ谷直葉

先生って、あのリリベルを統括していたミカさんがですか……?

 

たきな

はい。あの先生が動いている組織です。だから大丈夫ですよ、私たちを信じてください

 

俺が拙い言葉で説明するよりも、元々は彼女たちと同じ境遇にいた千束とたきなの言葉のほうが、何百倍も説得力がある。少女たちの表情が、目に見えて柔らかくなっていくのが分かった。

 

零、ちょっとこっちへ来てくれ

 

不意に、そよ風小隊の緋に袖を引かれ、俺はテントの隅の静かなスペースへと移動した。

 

緋村零

どうした、緋?

 

陸自やNPSが内部で直接保護した以外にも、私たちが周辺の混乱から保護したリコリスとリリベルの最終名簿だ。クロスオーバーの影響か、名簿の文字を見て驚くなよ

 

緋から手渡された電子端末の画面をスクロールする。そこに並ぶ文字列に、俺の思考は一瞬でフリーズしかけた。

【リリベル】

桐ヶ谷和人、三上悟、比企谷八幡、戸塚彩加、後沢鋭二

【リコリス】

SAOヒロイン達

結城明日奈、朝田詩乃、兎沢深澄、枳殻虹架、桐ヶ谷直葉

紺野木綿季、紺野藍子、篠崎里香、綾野珪子、星山翠子

本多小春、竹宮琴音、早乙女紗知、帆坂・カリーナ・朋

小比類巻香蓮、篠原美優、高峰紅葉、柏坂ひより、櫛稲田優里奈、重村悠那

俺ガイルヒロイン

川崎沙希、三浦優美子、鶴見留美

よう実ヒロイン

坂柳有栖、神室真澄、堀北鈴音、櫛田桔梗、一之瀬帆波

松下千秋、鬼龍院風花、山村美紀、森下藍、白石飛鳥

朝比奈なずな、橘茜、姫野ユキ、白波千尋、網倉麻子

伊吹澪、西野武子、軽井沢恵、佐藤麻耶、長谷部波瑠加

王美雨、小橋夢、七瀬翼、天沢一夏

…………これに、先に俺たちのセーフハウスで保護している綾小路清隆たちも含めると……。

男性:8人

桐ヶ谷和人、三上悟、比企谷八幡、戸塚彩加、後沢鋭二、綾小路清隆、司波達也、潮田渚

女性:50人

結城明日奈、朝田詩乃、兎沢深澄、枳殻虹架、桐ヶ谷直葉

紺野木綿季、紺野藍子、篠崎里香、綾野珪子、星山翠子

本多小春、竹宮琴音、早乙女紗知、帆坂・カリーナ・朋

小比類巻香蓮、篠原美優、高峰紅葉、柏坂ひより、櫛稲田優里奈、重村悠那

川崎沙希、三浦優美子、鶴見留美

司波深雪、神崎有希子、坂柳有栖、神室真澄、堀北鈴音

櫛田桔梗、一之瀬帆波、松下千秋、鬼龍院風花、山村美紀

森下藍、白石飛鳥、朝比奈なずな、橘茜、姫野ユキ

白波千尋、網倉麻子、伊吹澪、西野武子、軽井沢恵

佐藤麻耶、長谷部波瑠加、王美雨、小橋夢、七瀬翼

天沢一夏、椎名ひより

総勢、男性8人に女性50人……。

 

おいおい、比企谷に戸塚に、SAO組に、よう実の主要メンバーがほぼフルコンプされてるじゃないか。うん、なんと言うべきか……この世界、本当にクロスオーバーのバーゲンセールだな、と俺が名簿を見つめて思考を完全に明後日の方向へ飛ばしていると、背後から声をかけられた。

 

香椎

緋村君、少しいいかね?

 

NPSの香椎隊長が、複数の資料を手にこちらへ歩み寄ってきた。

緋村零

なんですか、香椎隊長。改まって

 

香椎

作戦終了後のデブリーフィング、つまり事後報告のようなものだ。本部の合同指揮所に顔を出してくれ

 

緋村零

了解しました。……黛煙、グローザ、ここの子供たちの護衛と管理、ひとまず頼むぞ

 

黛煙

ええ、任せてください、零。

 

グローザ

行ってらっしゃい。しっかり大人の仕事を片付けてきなさい

 

臨時合同指揮所Side

 

西郷

まずは現場の皆さん。想像を絶する過酷な作戦、本当にご苦労様でした

 

広場の大型天幕内に設けられた臨時指揮所には、陸上自衛隊、SAT、NPSなどの戦闘部隊、そして東京MERをはじめとする救急医療部隊の最高責任者たちが一堂に揃っていた。

 

西郷

ではまず、今回の作戦における全負傷者、および収容数の集計報告を頼む

 

喜多見

わかりました、医療班から報告します。まず、今回この延空木で無事に保護した子供たちの総数は140名。内訳はリリベルの男子が40名、リコリスの女子が100名です。医療班の迅速な処置により、子供たちの死者は『ゼロ』です! 殆どが激しい戦闘による銃創や爆発の打撲ですが、全員命に別状はありません。また、テロリスト側の被害は総数200名、内死亡が100名、生存した負傷者が100名。負傷したテロリストは応急処置の上、すべて身柄を警察へと引き渡しています

 

香椎

こちら警察側の被害だが、現場での激しい戦闘の割には、まぁ……そこの緋村君が肉弾戦で負傷したくらいだな

 

緋村零

いや、負傷と言っても、ガブリエルに絞め落とされそうになって首が少し痛むのと、小規模な打撲くらいですからね。かすり傷ですよ。それより、巻き込まれた一般の民間人への被害はどうなっていますか?

 

??

ふむ……それについては、我々から正確な報告をいたしましょう

 

天幕の隅から、聞き覚えのある非常に冷静で理知的な声が響き、一人の年配の刑事がスッと手を挙げた。その隣には、カーキ色のフライトジャケットを着た、やけにガタイのいい男が立っている。

 

緋村零

え〜と……失礼ですが、どちらの所属の方でしょう?

 

杉下

これは失礼いたしました。警視庁特命係の、杉下右京警部です

 

亀山

同じく特命係の、亀山薫巡査部長です! よろしく!

 

緋村零

(マ、マジか……。ここで特命係の『相棒』ペアまで臨場してくるのかよ……。本当にこの世界、警察組織の層が厚すぎるだろ……!)

 

杉下

では、私から最終報告を。今回の大規模銃撃事案において、周辺の民間人の死者は『ゼロ』です。負傷者についても、緋村君たちエルモの小隊が現場に到着した後、極めて迅速な避難誘導と的確な応急処置を行ったため、事後合併症による死者もすべてゼロに抑え込まれました。完璧な人命救助です

 

西郷

素晴らしい。防衛省、警察、医療のすべてが機能した結果だな。……さて、次に無事に保護した子供たちの今後の扱いについてだが

 

中丸

それについてなんだが、保護した人数があまりにも多すぎるため、政府の上層部からの極秘指令により、身柄を2つに分けることになった。1つのグループは我々警察の厳重な秘匿管轄、そしてもう1つの、先ほどテントに収容した特定名簿のグループは、緋村君たち『エルモ』が全責任を持って引き受けるように、と防衛省から直々に通達があった。後、排除したガブリエルとヴァサゴの遺体、および戦闘データの回収も、すべてエルモが一括して引き受けるようにとのことだ

 

緋村零

……テントにいた、和人君たちのグループですね。了解しました。大高さんたちが裏で書類を回してくれたわけか。すべて引き受けます

 

香椎

あとの現場の生々しい後始末や隠蔽工作のパージは、すべて我々警察が責任を持ってやることになっている。したがって、陸自の皆さんや東京MERの医療班は、これより速やかに現地から撤収するようにとのことだ

 

緋村零

了解しました。……西郷連隊長、中丸隊長、香椎隊長、そして喜多見チーフ。今回は組織の壁を越えて、俺たちのわがままな救援要請に答えていただき、本当にありがとうございました。心から感謝します

 

西郷

気にする必要はないさ、緋村君。それが、我々大人の、そしてこの国を守る防衛力としての本来の仕事だからな。何かあれば、いつでも練馬を頼ってくれ

 

緋村零

はい。では、お先に失礼します

 

俺は深く一礼し、熱い男たちが集う臨時指揮所の天幕を後にして、再び子供たちが待つ救護テントへと戻った。

 

再びテントSide

 

緋村零

ただいま。みんな、待たせて悪かったな。黛煙、グローザ、これより我々のセーフハウスへの撤収準備にかかるぞ

 

黛煙

おかえりなさい、零。……それで、このテントにいる子供たちはどうするのですか?

 

緋村零

全員、エルモの管轄で正式に預かることになったよ。おそらく、大高さんたちが防衛省のルートを使って、籍のない彼女たちを俺たちの籍へと裏で紐付けてくれたんだろう

 

桐ヶ谷

……ってことは、俺たちはこれから、緋村さんたちのいる場所に移動するってことですか?

 

緋村零

あぁ、そういうことだ。お前たちの身の安全は俺が完全に保証する。他の通常のリコリスやリリベルは警察の用意した安全な宿泊施設で預かるそうだから、ここにいる和人君たちは俺たちと一緒に移動する準備をしてくれ。自力で歩けない負傷者は、グローザやそよ風のメンバーが肩を貸す。……和人君、済まないが、このメンバーの臨時のリーダー役を君が買って出てくれるか?

 

桐ヶ谷

……分かりました。頼まれた以上、全力でやります。――みんな、聞いた通りだ! これから安全な場所へ移動する。緋村さんたちの言う通りに、パニックにならずに静かに動くぞ!

 

和人の力強い宣言に、不安げだった結城明日奈や朝田詩乃たち、そしてよう実組の少女たちも、コクコクと深く頷いて迅速に荷物をまとめ始めた。さすがはキリト、この年齢でもう立派な主人公としての統率力がある。

テントの外には、夜闇に紛れるようにして、漆黒に塗装された大型の装甲SUVが何台も静かに滑り込んできた。運転席を見ると、ネメシスや朝暉が的確にハンドルを握って待機している。

 

緋村零

よし、準備ができた者から順番に、それぞれのSUVに分乗してくれ。詰め込んでいくぞ

 

そんなこんなで迅速に撤収準備を終え、大勢の子供たちが一台残らずSUVのシートへと収まった。ちなみに、最後尾の車両の運転席には、俺自身がハンドルを握って乗り込む。

 

緋村零

朝暉、先頭のルート誘導を任せる。エルモのセーフハウスまで、最短ルートを最速で駆け抜けてくれ

 

朝暉

『こちら朝暉、了解したよ。バックミラーからは目を離さないでね。……出発するよ』

 

先頭を進む朝暉のSUVが静かにタイヤを転がし始め、それに追従するように他の重厚な車両たちが列をなして動き出す。

赤色灯のきらめく延空木の広場を背に、俺たちは新しい仲間たちの未来をその背中に乗せて、戦いの終わった現場を静かに後にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。