ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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延空木の現場を離れた俺たちは、息つく間もなくエルモの秘匿基地へと向かっていた。

 

緋村零

気分の方は大丈夫?

 

枳殻虹架

はい、大丈夫です

 

ちなみに、俺がハンドルを握って運転している大型SUVの座席配置は以下の通りだ。

 

助手席:黛煙

後部座席:枳殻虹架、紺野木綿季、紺野藍子、坂柳有栖、神室真澄の計6名。

 

黛煙

基地に到着するまではまだ少し時間がありますから、皆さん、ゆっくり身体を休めてくださいね

 

助手席の黛煙が、バックミラー越しに優しく微笑みかけて少女たちを落ち着かせる。……のだが……。

 

緋村零

(……さっきから、やけに枳殻さんが俺のことをじっと見てくるな……)

 

後部座席に座る枳殻虹架の視線が、絶え間なく運転席の俺へと注がれていた。それも……。

 

緋村零

(殺気とか警戒じゃなくて、何かこう……ホッとしたような、懐かしいものを見るような雰囲気なんだよな。気のせいか? 俺、彼女とは今日が初対面のはずなんだけど……)

 

……いや、まさかな……。

俺は頭を振ってその考えを捨て、目の前の大通りへと集中する。安全運転、絶対。

 

ピー! ピー! ピー!

ダッシュボードに備え付けられた無線機から、独特の発信音が鳴り響いた。黛煙が手際よくスイッチを入れる。

 

黛煙

こちら黛煙。

 

??

『久しぶり〜、黛煙。元気そうね』

 

この、どこか人を食ったような、お茶目で小悪魔的な響きを持つ声は……あいつしかいない。

 

緋村零

その声……リヴァか。久しぶりだな

 

戦術人形リヴァ。旧名UMP45。かつてグリフィンで名を馳せた「404小隊」の元隊長であり、数々の修羅場を潜り抜けてきた人形だ。

 

リヴァ

『零も久しぶり〜。元気そうで何よりね』

 

緋村零

あぁ、お陰様でな。それより、お前が通信を入れてきたってことは、クルカイたちもこっちに来てるのか?

 

リヴァ

『ええ。404の2番隊は、元グリフィンの仲間の捜索や合流でこちらに来るのはまだ先になりそうだけれども。スプリングフィールドたちも一緒に基地に来ているわよ』

 

あのスプリングフィールドが来ているのか。

 

緋村零

それはありがたいな。これからは美味しいコーヒーや軽食の心配をしなくて済みそうだ

 

リヴァ

『ふふ、そうね。まぁ、無事に帰ってきなさいよ。詳しい話はそれからね』

 

緋村零

了解した

 

ツーツーツー、と無線が切れる。

 

黛煙

404小隊やズッケロ小隊の皆さんが来てくれたのなら、私たちの戦力も大幅に増強されますね

 

緋村零

あぁ。少なくとも、これからの戦術の幅は格段に広がるはずだ

そんな会話を前席で交わしていると、後部座席から坂柳有栖が、静かだが鋭い鈴の音のような声で話しかけてきた。

 

坂柳有栖

緋村さん、今向かっている基地に、綾小路君がいるというのは本当なのですか?

 

緋村零

あぁ、いるよ。清隆だけじゃない。潮田渚や司波達也もそこで暮らしている

 

坂柳有栖

……椎名さんも、ご一緒なのでしょう?

 

その声に、僅かながらのトゲを感じる。う〜ん、一応原作の人間関係を考えると、ここでハッキリ聞いておくべきか。

 

緋村零

ねぇ、坂柳さんと神室さんって……清隆のことが好きなの?

 

坂柳有栖

……好きです……(みるみる顔を真っ赤にする)

 

神室真澄

私は違うわよ。絶対に違うから

 

緋村零

え、神室さんは違うの?

 

神室真澄

あぁ、それ? 零さん、毎日毎日、一人の男を巡っての不毛な勝負に巻き込まれる他人の気持ち、そしてそのライバルがその男と一緒に居なくなって、その後のホワイトルームの気まずい雰囲気のことを少しは考えてみてよ

 

緋村零

………………基地に戻ったら、なんか奢ろうか?

 

神室真澄

……ココアで……

 

緋村零

了解。スプリングフィールドに特製のやつを頼んでおくよ

 

神室真澄が坂柳有栖に振り回され、愚痴をこぼす構図。これは前の世界(原作)のままだな、と俺は苦笑した。

 

緋村零

さて、くだけた話はここまでだ。そろそろ秘匿基地に着くぞ

 

エルモ秘匿基地Side

俺は滑り込ませた大型SUVを広大な車両庫のスペースに停め、静かにエンジンを切った。

 

緋村零

ようこそ。ここがエルモの秘匿基地だ

 

黛煙

歓迎しますよ、皆さん

 

坂柳有栖

おや……これほど近代的な基地が、地下に隠されていたのですね

 

神室真澄

すごいわね、これ……

 

紺野木綿季

はぁーー! すごいおっきい場所だね、お姉ちゃん!

 

紺野藍子

うん、本当に凄いね、木綿季

 

枳殻虹架

うわぁ~……

 

他のSUVから降りてきた少年少女たちも、基地の圧倒的なスケールに驚嘆の声を漏らしている。そこへ、通路の奥から複数の足音が近づいてきた。

 

綾小路清隆

零!

 

潮田渚

みんな、無事だった!?

 

司波達也

お疲れ様だな、緋村

 

椎名ひより

おかえりなさい、零さん!

 

神崎有希子

お疲れ様です!

 

司波深雪

お疲れ様でございます、零様

 

留守番を引き受けてくれていた清隆たちが、一斉に出迎えてくれた。

 

緋村零

出迎えありがとさん。みんな、怪我をしている負傷者が多いんだ。手を貸して中へ運ぶのを手伝ってくれ

 

綾小路清隆

了解した。こちらへ

 

清隆たちが迅速に動き、傷ついた少女たちの肩を支えながら基地の内部へと移動を開始する。

 

緋村零

千束たちは使用した武器を武器庫に収納。清隆たちは彼女たちを食堂に連れて行ってやってくれ。必要ならすぐに治療室へ。黛煙たちはガブリエルとヴァサゴの遺体の処理とデータの回収を頼む。俺は指揮官やボスに報告してくる

 

一同

了解!

 

エルモ司令室Side

 

緋村零

緋村以下作戦部隊、ただいま帰還しました

 

ザ・ボス

ご苦労さま、零。見事な手際だったわ

 

指揮官

お疲れさん、零。怪我はなさそうだな

 

司令室の重厚な扉を開けると、そこには指揮官とザ・ボス、そして――。

 

リヴァ

久しぶり〜、零。待ってたわよ

 

クルカイ

元気そうね、隊長

 

404小隊のリヴァ、そして戦術人形クルカイ(旧名HK416)が、不敵な笑みを浮かべて待っていた。

 

緋村零

久しぶりだな、リヴァ、クルカイ

 

クルカイ

まったくね。貴方が急に居なくなってから、色々大変だったのよ? 貴方の残した貯蓄金も、生活費でかなり切り崩しちゃったんだから

 

緋村零

それは俺のせいじゃなくて、お前のところの元隊長(リヴァ)がしっかり貯金して管理しなかったからだろ

 

リヴァ

え……それって私のせいかしら?

 

クルカイ

他に誰がいるっていうのよ!?

 

緋村零

つーかグリフィン時代、リヴァ、お前の策略に巻き込まれまくって酷い目に遭わされたの、俺はまだ忘れてねーからな

 

リヴァ

あら、そうだったかしら? 記憶にないわね〜

 

クルカイ

アンタねぇ……少しは反省しなさいよ

 

緋村零

はぁ……相変わらずだな、お前らは

 

小競り合いを始める二人を見て、俺は呆れつつも、脳裏に懐かしい日々が蘇るのを感じていた。

 

緋村零

そう言えば、スプリングフィールドたちは?

 

指揮官

彼女なら、さっそく食堂で子供たちのために特製の軽食と飲み物を用意してくれているぞ

 

緋村零

そうか。なら安心だな

 

ザ・ボス

さて、零。過去の再会を懐かしむ気持ちは分かるけれど、ここからは真面目な話よ

 

緋村零

ええ、分かっています

 

ザ・ボスは表情をいつもの厳しい教官のものへと戻し、ホログラムの画面を展開した。

 

ザ・ボス

先ほど、大高さんから直接連絡が入ったわ。今回の延空木の件も含め、こちらの戦力の手筈がすべて整い次第――いよいよ『クーデター』を決行すると

 

緋村零

……ついに、国をひっくり返す時が来ましたか。作戦名はもう決まっているんですか?

 

指揮官

……あぁ。作戦名は『天岩戸(あまのいわと)』だ

 

緋村零

天岩戸、ですか……

 

ザ・ボス

いかにも大高さんらしい、古風で重みのある作戦名ね。クーデターが開始され次第、大高さんたちの世界の軍、そして別世界の自衛隊や海上保安庁の戦力も、この世界へ一斉に転移・合流させる手筈になっているわ

 

ついに動き出す国家規模の激震。俺は20式小銃の感触を確かめながら、これから始まる真の戦いに向けて、静かに闘志を燃え上がらせた。

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