ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
シノン、ミト、ユウキ、ランの4人が笑顔で会議室を出て行った後、俺は再び手元の端末に視線を落とした。残る聴取対象者のデータを表示する。
零
次は、篠崎里香と綾野珪子か。
この2人に関しては、これまでのメンバーとは違って前世での面識やこの世界での個人的な接点は一切ない。完全に「初対面」としての対応になる。
しばらくして、部屋のドアがノックされた。
リズベット
失礼します。
シリカ
失礼します。
篠崎里香と綾野珪子の2人が入室してきた。これまでのメンバー同様、やはりどこか緊張した面持ちだ。
零
どうぞ、そこに座って。
リズベット
はい、失礼します。
シリカ
あ、はい……失礼します!
2人が並んで席につく。俺は資料に目を通しながら、いつものように淡々と確認を始めた。
零
それじゃあ、聴取を始めるね。
零
まずは篠崎里香。生年月日は5月18日、現在は15歳。両親は日本人で、所属はDAの『リコリス』。
リズベット
はい、間違いありません。
零
君がリコリスに所属するに至った理由は、これまでのメンバーと同じく、私立聖エテルナ女子学院の修学旅行事故に見せかけたDAの拉致事件だね?
リズベット
……ええ、そうです。本当に、あんな強引なやり方で連れてこられるなんて、今でも信じられないくらいで。
零
そうだな、DAのやり口の汚さは今に始まったことじゃない。……よし、次は綾野珪子さん。生年月日は10月4日、現在は12歳。所属は同じくDAの『リコリス』。
シリカ
はいっ、間違いありません!
零
君の所属理由も、やはりエテルナ女子学院の修学旅行での偽装事故だね?
シリカ
はい。気がついたら知らない施設にいて、そのまま訓練を受けさせられて……本当に怖かったです。でも、アスナさんたちが一緒だったから、なんとか頑張れました。
零
なるほど。過酷な環境だったろうに、よく耐えたね。
2人の経歴や境遇についての確認はこれで問題なさそうだ。俺が資料を閉じようとしたその時、里香が少し探るような視線をこちらに向けて口を開いた。
リズベット
あの、ちょっとお聞きしてもいいですか?
零
うん、何かな?
リズベット
さっき、キリトやアスナたちから少し聞いたんですけど……ここの司令官代理(零)の人も、私達と同じ『転生者』だって。それって本当なんですか?
シリカ
あ、あの、私も気になってました……!
やはりキリトたちから話を聞いていたか。隠す必要もないので、俺は素直に頷いた。
零
ああ、本当だよ。君たちと同じように、俺も前世の記憶を持ってこの世界に生まれてきた。ただ、君たちがいた世界と俺の世界はちょっと違っていてね。
リズベット
違っている、というと?
零
俺の世界では、君たちの物語……キリトやアスナ、そしてリズベットやシリカとしての生き様が、一つの『作品』として多くの人に知られていたんだ。
シリカ
ええっ!? わたし達が作品に……!?
リズベット
ちょっと待って、それじゃあ私達が前世でどんな風に生きてたか、全部知ってるってこと!?
零
まあ、大体のことはね。だからこそ、君たちがDAに拉致されてどんなに辛い思いをしてきたかも理解できるし、これから先、君たちが不当な目に遭わないようにこの基地で保護したいと思っているんだ。
俺の言葉を聞いて、2人は驚きつつも、どこかホッとしたような表情を浮かべた。
リズベット
そっか……。初対面なのに、なんだか私達のことをすごく分かってくれてるみたいで不思議だったけど、そういうことだったのね。
シリカ
何だか、凄く心強いです。ありがとうございます、零さん。
零
気にするなって。これからはこの基地が君たちの居場所だし、仲間もたくさんいるから安心していいよ。
部屋の空気が柔らかくなったのを見計らい、俺は手元の端末を完全にオフにした。
零
よし、これで2人の聴取も終了だ。本当にお疲れ様。
リズベット
ねえ、零。それなら私達のことも、前世で呼び合ってた『プレイヤーネーム』で呼んでよ。里香って呼ばれるより、しっくりくるからさ。
シリカ
あ、私もです! 珪子じゃなくて、『シリカ』って呼んでください!
リズベット
私は『リズベット』ね! 長いから『リズ』でもいいわよ。
零
はは、分かった。それじゃあこれからは、リズ、シリカって呼ばせてもらうよ。改めて、これからよろしくな。
リズベット
ええ、よろしくね、零!
シリカ
よろしくお願いします、零さん!
こうして、2人との初めての対面と聴取は、和やかな雰囲気のまま幕を閉じた。