ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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事情聴取〜星山翠子、高峰紅葉、小比類巻香蓮、篠原美優〜

リズベットとシリカが退出した後、俺は手元の端末を操作し、次に会議室へと呼び出す4人のプロフィールを表示した。

星山翠子、高峰紅葉、小比類巻香蓮、篠原美優。……GGO、そして『フェイタルバレット』の面々だ。

端末の画面を見つめながら、さっきレインが愛おしそうに俺に抱きついてきた瞬間の温もりを思い出す。

前世で初めてプレイしたゲームで、俺が迷わず一番のパートナーとして隣に置き、一番の推しとして愛し続けていたのは、他の誰でもないレインだ。その事実は、この歪んだ世界に転生してなお、俺たちの特別な絆として魂に刻まれている。

深く息を吐き、気持ちを切り替えてドアに向かって声をかけた。

 

どうぞ、入って。

 

ツェリスカ

失礼するわね。

 

クレハ

失礼するよーっ!

 

レン

し、失礼します……っ。

 

フカ次郎

お邪魔しまんすー!

 

ドアが開き、四者四様の雰囲気を持った少女たちが入室してきた。大人の色気を漂わせるツェリスカ、快活でどこか自信に満ちたクレハ、やたらと小柄でガチガチに緊張しているレン、そしてやけにフランクなフカ次郎。

 

そこに並んで座ってくれ。それじゃあ、聴取を始めるよ。

 

全員が席についたのを見届け、俺は資料の読み上げを開始する。

 

まずは星山翠子さん。生年月日は9月18日、現在は15歳。所属はDAで『リコリス』。

 

ツェリスカ

ええ、間違いありませんわ。

 

リコリスになった経緯は、やはり私立聖エテルナ女子学院の修学旅行における偽装事故だね。

 

ツェリスカ

ええ、その通りよ。あの忌々しい組織に拉致されてからは、本当に気の休まる暇もなかったけれど……。

 

これからは安心するといい。……次は、高峰紅葉さん。生年月日は4月26日、現在は14歳。所属はDAで『リコリス』。

 

クレハ

うん、バッチリ合ってるよ! でもさ、あたしたちをわざわざ呼び出したってことは、ただの確認だけってわけじゃないんでしょ?

 

まあ、順を追って説明するよ。君の所属理由も同じく修学旅行の偽装事故だ。……続いて小比類巻香蓮さん。生年月日は4月20日、現在は13歳。所属はDAで『リコリス』。

 

レン

は、はいっ! 間違いありません! あの、私、背がすっごく高くて学校でも浮いてて……修学旅行のドサクサで気づいたら連れて行かれちゃって……。

 

大変だったね。でも、ここならその身長を気にする必要は一切ないからね。……最後は篠原美優さん。生年月日は12月13日、現在は13歳。所属はDAで『リコリス』。

 

フカ次郎

はいはーい、間違いおまへん! いやー、DAの訓練はキツすぎて、ウチのピチピチなお肌がガサガサになるところやったわ。助け出してくれてサンキューな、お兄さん!

 

一通り4人の基本情報を確認し終えたところで、俺は端末を机の上に置いた。彼女たちの顔をじっと見つめ、本題に入る。

 

さて……形式的な確認はここまでだ。ここからは、俺たちにしか通じない話をしよう。単刀直入に言うよ。君たち4人も、前世の記憶を持った『転生者』だね?

 

その言葉が落ちた瞬間、会議室の空気が一変した。レンは小さく悲鳴を上げて口を塞ぎ、ツェリスカは目を細めて俺を凝視する。フカ次郎は「お?」と目を丸くし、クレハはガタッと身を乗り出して俺を指差した。

 

クレハ

なっ、何それ……!? あんた、なんであたしたちが転生者だって知ってるわけ!? もしかして、あんたもそうなのっ!?

 

ああ、俺も君たちと同じ転生者さ。ただ、君たちがいた世界と俺の世界はちょっと違う。……俺の世界では、君たちが前世でプレイしていた『ガンゲイル・オンライン』や、あの『フェイタルバレット』の物語が、ひとつの作品として存在していたんだ。

 

ツェリスカ

……まあ。私たちがいたあの仮想世界での出来事が、別の世界では物語として紡がれていたの。

 

レン

じゃ、じゃあ……私が銃をピンクに染めて『レン』として戦っていたことも……!?

 

フカ次郎

ひえ〜、ウチのグレネードランチャーぶっ放し祭りの大活躍も、全部お見通しってわけかいな。恥ずかしいなぁ、もう!

 

クレハ

ちょっと待ってよ! あんたがその作品を知ってるってことは……あのゲームの世界で、あたしたちと関わっていた『主人公』のことも知ってるってことじゃん!

 

クレハが切実な、どこか焦るような視線を俺に向けてくる。前世のフェイタルバレットにおいて、彼女は主人公の幼馴染として、一番のパートナーの座を激しく求めていたキャラクターだ。

 

だが、この世界における真実は異なる。俺は彼女の目を真っ直ぐに見つめ、静かに告げた。

 

ああ、知っているよ。……そして、この世界において、俺が前世で一番のパートナーとして選び、誰よりも推していたのは――ついさっき個別の聴取を終えた、レイン(枳殻虹架)だ。

 

クレハ

……っ! れ、レインが、一番のパートナー……!?

 

クレハは一瞬だけショックを受けたように目を見開いたが、すぐにふくれっ面になってぷいっと横を向いた。

 

クレハ

な、何よそれー! あたしじゃなくてレインを選んでたわけ!? 幼馴染のあたしを差し置いてさぁ……! まぁ、レインなら可愛いし、歌も上手いし、あの子が特別だったのは認めざるを得ないけどさ。でも、あたしだって負けてないんだからね!

 

ツェリスカ

ふふ、クレハったら、そんなに分かりやすく嫉妬しなくてもいいじゃない。……でも、あなた。あのレインが最初のパートナーであったなら、彼女が誰よりもあなたを慕ってここにいるのも頷けますわね。

 

フカ次郎

せやせや! レインの執念……やなくて、純愛は凄まじいからな! ウチらも入る隙ないんちゃう?

 

レン

あはは……でも、レインさんが無事に零さんと再会できて、本当に良かったです。

 

4人の賑やかな反応を見て、俺の口元から自然と笑みがこぼれる。やはり彼女たちの口調や掛け合いは、前世で画面の向こうから見ていたあのままだ。

 

はは、ありがとう。みんなのことはレインからもよく聞いていたし、俺も作品のファンとして君たちのことをよく知っている。だから、これからはこの基地を新しい家だと思って、安心して過ごしてほしい。

 

ツェリスカ

ええ。今後私たちがどのように動くべきかは、あなたの指示に従うわ、零。

 

クレハ

ま、今回は助けてもらったわけだし、あたしもあんたの戦力として大活躍してあげるじゃん! その代わり、あたしのこともこれからしっかり見ててよね!

 

レン

はい! よろしくお願いします、零さん。……あ、あの、もしよかったら、私のことも本名じゃなくて『レン』って呼んでもらえませんか?

 

フカ次郎

ウチもウチも! 『フカ次郎』か『フカ』って呼んでや! 美優って名前、DAの時くらいしか使わんかったし、なんかムズムズするわ!

 

ツェリスカ

ふふ、それなら私もこれからは『ツェリスカ』と呼んでちょうだい。

 

クレハ

当然あたしも『クレハ』ね! あんたに呼び捨てにされるの、なんか幼馴染っぽくて悪くないし!

 

分かった。それじゃあこれからはそう呼ばせてもらうよ。改めて、これからよろしくな、ツェリスカ、クレハ、レン、フカ次郎。

 

こうして、GGOとフェイタルバレットの面々との聴取は、かつての仮想世界での絆を呼び覚ますような、賑やかで温かい空気の中で終了した。

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