ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
櫛稲田優里奈、重村悠那、柏坂ひよりの3名が、緊張を孕んだ面持ちで会議室へと足を踏み入れてきた。劇場版やスピンオフ、外伝という、それぞれ異なる物語の地平からこの歪んだ世界へと集められた少女たちだ。
零
そこに並んで座ってくれ。それじゃあ、聴取を始めるよ。
3人が席に着いたのを確認し、俺は手元の端末を操作して資料を開いた。同じような形式の確認もこれで何度目になるだろうか。
零
まずは櫛稲田優里奈さん。生年月日は8月10日、現在は14歳。所属はDAで『リコリス』。
ナユタ
……はい、間違いありません。
零
君がリコリスになった経緯は、やはり私立聖エテルナ女子学院の修学旅行における偽装事故だ。
ナユタ
……ええ、そうです。あの悪夢のような事故のせいで、私たちの日常はすべて奪われました。
零
これからはその悪夢から解放されるから安心していい。……次は、重村悠那さん。生年月日は7月29日、現在は14歳。所属はDAで『リコリス』。
ユナ
はい、間違いありません! でも……なんだか不思議な感じがしますね。
零
それについても追々説明するよ。君の所属理由も同じく修学旅行の偽装事故だ。……最後は柏坂ひよりさん。生年月日は12月21日、現在は13歳。所属はDAで『リコリス』。
ルクス
は、はいっ! 間違いありません。私、ずっと自分の殻に閉じこもってばかりだったのに、気づいたらこんな戦う場所に連れてこられてしまって……。
一通り3人の基本情報を確認し終えたところで、俺は端末を机の上に置いた。彼女たちの顔を真っ直ぐに見つめ、一歩踏み込んだ話を切り出す。
零
さて、形式的な確認はここまでだ。ここからは、俺たちにしか通じない話をしよう。……君たち3人も、前世の記憶を持った『転生者』だね?
その言葉が落ちた瞬間、3人は一斉に目を見開いた。ひよりは怯えたように肩を震わせ、悠那は小さく息を呑み、優里奈は鋭い視線で俺を凝視する。
ナユタ
……あなた、どうしてそのことを? 私たちの前世の秘密を知っている人間なんて、この世界にはいないはずです。
零
俺も君たちと同じ転生者さ。ただ、君たちがいた世界と俺の世界はちょっと違う。……俺の世界では、君たちが前世で生きて、苦悩して、戦っていたあの『ソードアート・オンライン』の物語が、ひとつの作品として存在していたんだ。
ユナ
私たちの世界が、お話として存在していた……?
ルクス
じゃあ、私が『ルクス』として、あの世界でみんなに助けられたことも……知られているんですか?
零
ああ、知っているよ。ルクスが過去のトラウマに苦しみながらも、リーファたちと出会って救われたことも……ユナがオーディナル・スケールの事件の裏で、デジタルデータとして歌い続けていたことも……ナユタがキリトたちと対峙したことも、すべて俺の記憶には残っている。
ユナ
そうだったんだ……。あっちの世界の私は、最後には消えちゃったはずなのに。こうしてまた新しい命をもらえて、私たちのことを知ってくれている人と会えるなんて、なんだか奇跡みたい。
ナユタ
……なるほどね。そこまで私たちのことを見通しているなら、もう隠し立てする意味なんてないか。
3人は驚きつつも、どこか張り詰めていた緊張が解けたような、穏やかな表情を見せた。
零
みんなのことは前世の作品を通して本当によく知っている。ただ、この世界は色んな世界線がごちゃ混ぜになっていてね。キリトやアスナたちは原作の世界線から来ているから、今は君たちのことを知らないんだ。でも、これからはこの基地が君たちの新しい家だし、不当な戦闘を強いるDAからは俺が全力で守るから、安心して過ごしてほしい。
ユナ
ありがとうございます! キリトさんたちに会えるだけでも、私にとっては凄く嬉しいことです。
ルクス
はい……! よろしくお願いします、零さん。あの、もしよかったら、私のことも本名じゃなくて、前世でみんなに呼んでもらっていた『ルクス』って呼んでくれませんか?
ユナ
あ、それなら私も『ユナ』って呼んでください! 悠那って名前、なんだかちょっと照れくさくて。
ナユタ
……ふふ、じゃあ私も『ナユタ』で通させてもらうわ。優里奈って名前は、DAにいた時の窮屈な記憶が染み付いてるから。
零
分かった。それじゃあこれからは親しみを込めてそう呼ばせてもらうよ。改めて、これからよろしくな、ナユタ、ユナ、ルクス。
こうして、それぞれの物語を背負った3人との聴取は、過去の運命の枠を超え、新しい絆を結ぶ確かな温もりの中で終了した。