ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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事情聴取〜朝比奈なずな、鬼龍院風花〜

西野武子たちがそれぞれの思いを胸に退室していった後、俺は一度深く椅子の背もたれに体を預けた。そして、手元の端末の画面をスワイプし、次に呼び出す2人の資料を表示する。

朝比奈なずな、鬼龍院風花。……高度育成高等学校において、旧3年生として異彩を放っていた面々だ。

特に鬼龍院風花といえば、あの学校の枠組みにすら収まらなかった、唯我独尊を地で行く規格外の天才。そんな彼女たちがこの歪んだ世界でDAに拉致され、何を考えて過ごしてきたのか。

 

どうぞ、入って。

 

朝比奈

失礼するね〜。

 

鬼龍院

失礼するぞ。

 

ドアが開き、対照的な雰囲気をまとった2人が入室してきた。

親しみやすい笑みを浮かべ、どこかお姉さん気質を感じさせる朝比奈なずなと、モデル顔負けの抜群のプロポーションを誇り、獰猛かつ不敵な笑みをたたえて悠然と歩いてくる鬼龍院風花。

 

そこに並んで座ってくれ。それじゃあ、聴取を始めるよ。

 

2人が席に着いたのを見届け、俺は端末を操作して資料の確認を開始した。

 

まずは朝朝比奈なずなさん。生年月日は12月4日、現在は15歳。所属はDAで『リコリス』。

 

朝比奈

うん、間違い確認に齟齬はないよ。それにしても、あんな物々しいDAから私たちを引っ張り出しちゃうなんて、緋村くんって意外と大物なんだね。

 

君たちの安全を確保するためだからね。君がリコリスになった経緯は、やはり私立聖エテルナ女子学院の修学旅行における偽装事故だ。

 

朝比奈

あはは、やっぱりあれ、ただの事故じゃなかったんだ。お守り代わりに持ってたアミュレットもDAの奴らに没収されそうになってさ、本当に最悪だったんだから。

 

これからは没収される心配もないから安心していいよ。……次は、鬼龍院風花さん。生年月日は7月26日、現在は15歳。所属はDAで『リコリス』。

 

鬼龍院

フハハ! 間違い確認に齟齬はないぞ。しかし、DAとかいう国家の犬どもが必死に叩き込んできた暗殺技術とやらも、私にとってはひどく退屈な児戯に過ぎんでな。そんな檻から私を連れ出したのだ、お前は私を十分に楽しませてくれるのだろうな、ボスの代理人?

 

はは、相変わらず自信に満ち溢れているな、鬼龍院先輩。君の所属理由も同じく修学旅行の偽装事故だ。

 

一通り2人の基本情報を確認し終えたところで、俺は手元の端末を机の上に置いた。2人の顔をじっと見つめ、核心へと踏み込む。

 

さて、形式的な確認はここまでだ。ここからは、俺たちにしか通じない話をしよう。……君たち2人も、前世の記憶を持った『転生者』だね? 高度育成高等学校の皆さん。

 

その言葉が落ちた瞬間、会議室の空気が一変した。

朝比奈は「え……っ!?」と目を見開いて絶句したが、鬼龍院だけは全く動じることなく、むしろ瞳に獰猛な歓喜の光を宿してフハハと笑い声を上げた。

 

鬼龍院

ククク、ハハハハ! 愉快、実にもう愉快極まるな! まさかこの歪んだ世界で、私たちの『前世』のことまで正確に見抜く者が現れるとは! お前、一体何者だ?

 

俺も君たちと同じ転生者さ。ただ、君たちがいた世界と俺の世界はちょっと違う。……俺の世界では、君たちが前世で生き、それぞれの退屈を壊すために戦っていたあの『ようこそ実力至上主義の教室へ』の物語が、ひとつの作品として存在していたんだよ。

 

朝比奈

私たちの生きてた現実が、ひとつの作品……? うそ、じゃあ私のことも、南雲くんとのことも……?

 

ああ、知っているよ。朝朝比奈さんが南雲くんのやり方に苦言を呈しながらも、彼のことをどこかで気にかけ、アミュレットを大切にしていたことも……鬼龍院先輩が抜群の身体能力と知性を持ちながら、誰の味方もせず、ただ自分の興味の赴くままに試験を引っかき回していたこともね。

 

鬼龍院

なるほど、私のあの退屈しのぎの日々まで本に書かれていたというわけか。他世界においては創作物として消費されていたというのは滑稽だが、お前がその情報を握っている以上、現実として受け入れるほかあるまい。私をそのDAというクソ組織から救い出したお前の知略、大いに気に入ったぞ。

 

朝比奈

……へえ。そこまで私たちのこと知ってて、助けてくれたんだ。あんな冷たい訓練ばっかりの組織にいるより、緋村くんのところにいる方が、ずっと安心できるのは確かだね。ありがとう。

 

どういたしまして。君たちが前世で必死に生き抜いた記憶は本物だ。だからこそ、この世界で君たちがDAなんていう理不尽な組織に拉致されて、暗殺人形として扱われているのが俺は我慢ならなかった。だから保護したんだ。もう、誰かの手駒として無理に戦う必要はない。この基地を新しい家だと思って、安心して過ごしてほしい。

 

朝比奈

うん! 戦わなくていいなら本当に嬉しいな。これからよろしくね、零くん!

 

鬼龍院

フハハ! 良いだろう。あのような退屈な組織に縛られるよりは、全てを見通しているお前の下で新しい世界を眺める方が、よほど私の知的好奇心を満たしてくれそうだ。緋村零、お前のその手腕、これから存分に見せてもらうぞ。

 

ああ、歓迎するよ。これからよろしくな、朝朝比奈、鬼龍院。まぁ南雲は俺なら一発殴るね。ああ言う男は。

 

朝比奈

あはは! 緋村くん、南雲くんのこと相当嫌いだねー。でも確かに、あいつのあのプライドの高さと、学校全体を自分の思い通りに動かそうとするやり方は、見ててイラッとするのも分かるよ。

 

鬼龍院

フハハ! 殴るか、良いではないか。あの男は学内を統治することに執着するあまり、個としての本質を見失っている節があったからな。お前のような男に正面から一発殴られ、その傲慢な鼻をへし折られる姿は、想像するだけで実に滑稽で愉快だぞ。

 

朝比奈

もう、風花ちゃんは面白がって焚き付けないの! ……でもさ、あの学校にいた頃は、南雲くんの力があまりにも強すぎて誰も逆らえなかったから、緋村くんみたいに『一発殴ってやる』なんて言ってくれる人がいるのは、なんだかちょっとスッとするかも。

 

鬼龍院

ククク、まぁあの男の矮小な器では、全てを見通しているお前の足元にも及ぶまい。南雲のような退屈な存在のことは忘れろ。これからはお前が私をどれだけ退屈させずにいてくれるか、そちらの方が重要だ。

 

はは、殴る機会があるかは分からないけどね。まぁ、あいつのことはSR班の情報網で一応マークはしてあるから、もしこの世界で変な動きをしたらその時は本当に考えさせてもらうよ。それじゃあ、朝比奈先輩、鬼龍院先輩、改めてよろしく。

 

朝比奈

うん、よろしくね、零くん!

 

鬼龍院

フハハ、期待しているぞ、零!

 

こうして、かつて同じ上級生として高度育成高等学校に君臨していた2人との聴取は、原作そのままの規格外な知性と余裕が交錯する、静かで濃密な空気の中で終了した。

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