ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜 作:霧のイージス艦
エイジの力強い誓いに熱気が高まる中、その熱を少しだけ冷ますような、けれど芯のある深いため息が食堂の隅から聞こえた。
八幡
はぁ……。国家を相手にクーデターねぇ。相変わらず、お前らは底抜けに厄介な事ばかり引き寄せるな……
ボサボサの頭を掻きむしりながら、気怠げな足取りで前に出てきたのは比企谷八幡だった。しかし、その腐った魚のような目は、いつになく鋭利な光を放っている。
八幡
……だがまぁ、上っ面だけの綺麗事を並べて、自分たちの利権しか頭にない腐った連中がふんぞり返ってる現状は、どうにも胸糞が悪い。俺たちの手の届く範囲の『本物』の日常を守るためなら、悪役(ヒール)になるくらい喜んで引き受けてやるよ
彼らしい、どこまでもひねくれていながらも自己犠牲を厭わない不器用な決意。その隣に、戸塚彩加がスッと並び立った。
彩加
八幡がやるなら、僕も一緒に戦うよ! 相手がどれだけ大きくても……僕たちの大切な日常を、誰かの勝手で奪われたりなんかしない!
八幡
と、戸塚……お前ってやつは、本当に天使か……(小声)
凛々しくも可憐な彩加の言葉に、八幡が内心で悶絶しつつも表情を引き締めていると、その後ろから腕を組んだ川崎沙希と三浦優美子が歩み出てきた。
沙希
ふんっ。税金ばっか上げて、ロクな政策も出せない国なんて冗談じゃないわよ。大志や京華……あの子たちの未来が、そんな連中のせいで潰されるなんて絶対に御免だわ。アタシもやる
優美子
あーし、政治とかそういう小難しいことはよく分かんないけどさ。でも、あーしらの大事な居場所を壊そうとするなら、相手が誰だろうと容赦しないから。マジで後悔させてやる
家族想いの姉としての顔を覗かせる沙希と、仲間を何よりも大切にする優美子。普段は交わることの少ない彼女たちも、この理不尽な現実を前にして、決して引かないという強い意志を共有していた。
そして、八幡の服の袖を、小さな手がきゅっと掴んだ。
留美
……私も行く。また八幡が、一人で全部背負い込んで汚れ役になろうとするかもしれないから。……私だって、もう子供じゃない
鶴見留美は、感情の読めない冷めた瞳の奥に、確かな熱情と八幡への信頼を滲ませていた。かつて彼に救われた少女は、今度は共に戦う道を選んだのだ。
八幡
お前なぁ……あまり無茶はするなよ。……ま、そういうわけだ、零。俺たちも一枚噛ませろ。汚れ仕事だろうが何だろうが、やってやる
零
八幡、彩加、沙希、優美子、留美……
決して戦いに向いているとは言えないはずの彼ら・彼女ら。それでも、自分たちにとっての「本物」と、譲れないものを守るために立ち上がったその姿に、零は深く目を細めた。
零
お前たちのその意志、無駄にはしない。……八幡、汚れ役はお前一人には背負わせないさ。俺たち全員で、この腐った国を叩き直すぞ
最強の戦士たちだけでなく、それぞれの日常と未来を守ろうとする者たちの決意が集い、クーデターへの意志はもはや誰にも止められない巨大なうねりとなっていた。