ソードアート・オンライン〜旭日の防人達〜   作:霧のイージス艦

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兎沢深澄との出会い

桐ヶ谷和人との接触を果たし、原作開始前に課した最初の目的をすべて達成した俺は今、久しぶりに賑わう街へと繰り出していた。

 

緋村零

よし。必要な買い物も終わったし、そろそろ帰るか……

 

両手に買い物袋を提げ、自宅への帰路に就く。

今日は12月24日、クリスマスイブ。街は光り輝くイルミネーションと人々の熱気で、どこを向いてもお祭り騒ぎだった。中央広場にそびえ立つ巨大なクリスマスツリーの周囲には、身を寄せ合うたくさんのカップルや家族連れで溢れかえっている。

 

緋村零

まあ、今の俺には全く関係のない話だな……

 

転生者として、これからSAOで起こるはずの理不尽な悲劇を一つでも多く叩き潰す。そのために日々を捧げている今の俺には、恋人を作って甘い時間を過ごすなんて悠長な真似は許されないのだ。だが――

 

緋村零

クリスマスバザーもやってるのか……。ちょっとだけ覗いていくか

 

ツリーの足元に建ち並ぶ色とりどりのテントに惹かれ、俺は少しだけ広場の方へと足を向けた。

 

緋村零

意外と店の数が多いな……

 

ずらりと並んだ屋台の間を、人の波を縫うようにして歩く。聖夜の特別な熱気のせいか、出店の規模は夏の盛大なお祭りにも引けを取らない。そんな賑わいの中を歩いていると、ふと、一つの小さな出店が目に留まった。

 

緋村零

あの出店、ちょっと寄ってみるか……

 

引き寄せられるように、俺はその店へと歩みを進めた。

 

店員

いらっしゃいませ! 掘り出し物もたくさんありますよ!

そこは、様々な誕生石や宝石をあしらったネックレスや指輪を専門に扱っている露店だった。きらびやかな商品が並ぶガラスケースの隅に、俺の視線は完全に釘付けになった。

 

緋村零

これは……

 

そこにあったのは、前世で俺が肌身離さず身に付けていた、アクアマリンの勾玉のネックレスと驚くほど瓜二つの代物だった。これも何かの縁、あるいは運命なのだろうか。

 

緋村零

すまない……このネックレスを貰えるか?

 

俺はガラスケースを指差し、店員に声をかけた。

 

店員

はい、ありがとうございます! そちらの勾玉のネックレスは8800円になります!

 

露店の品にしてはそれなりの値段だが、本物の宝石を使ったアクセサリーなら妥当なところだろう。何より、この深い海を切り取ったようなアクアマリンの勾玉は、恐ろしいほどの透明度を誇っていた。

 

緋村零

分かった。はい、8800円

 

財布からきっちり紙幣を取り出して手渡す。

店員

はい、ちょうど頂きます! ありがとうございました、良いクリスマスを!

 

購入した小さな箱をポケットにしまい込み、出店の並ぶ通りを抜けて静かな歩道へと出た。

 

緋村零

まあ……自分へのクリスマスプレゼントってことにでもしておくか

 

仮面の裏で小さく自嘲気味に呟き、俺は再び自宅への歩みを進めた。だが、その平穏な空気は、路地裏から聞こえてきた不躾な男たちの声によって破られることになる。

 

不良

なぁ〜、せっかくのクリスマスイブなんだし、ちょっと付き合えって。いいだろ?

 

不良

そうそう、お姉さん一人じゃ寂しいって。悪いようにはしないからさぁ

 

数人の不良集団が、一人の少女を取り囲んでしつこく絡んでいた。街灯の薄明かりに照らされたその少女の顔を見た瞬間、俺の脳内データベースが瞬時に弾き出した。

 

緋村零

(あれ……兎沢深澄(トザワミスミ)だよな? 不良に絡まれてるみたいだし、タチの悪いナンパか……)

 

後にSAOの世界で『ミト』という名を名乗り、アスナの運命に深く関わることになる少女、兎沢深澄。まさかこんな場所で彼女と遭遇するとは。

 

緋村零

(……助けるか)

 

放っておく理由もない。俺は持っていた買い物袋を近くの街路樹の根元にそっと置き、足音を消して不良たちの背後へと肉薄した。

 

緋村零

おい……不良ども。聖夜に何みっともねえ真似してんだ?

 

不良

あぁ? なんだてめぇ、ガキがしゃしゃり出て――がはっ!?

 

不良

て、てめぇ! 何しやが――ぐはっ!?

 

全集中、そしてサーヴァント級の体術。

常人には残像すら見えない神速の連撃が、不良たちの急所を的確に捉える。言葉を交わす隙すら与えず、俺は僅か数秒のうちに不良集団のすべてを地面に這わせ、気絶させた。

 

緋村零

クリスマスにくだらねぇ事してんじゃねえよ……

 

泥のように眠る男たちを一瞥し、冷たく言い捨てる。そして、驚愕のあまり目を見開いている深澄の方を振り返った。

 

緋村零

大丈夫か?

 

深澄

え、ええ……ありがとう、助かったわ。これで友達との約束の時間に遅れずに済みそう

 

驚きつつも、しっかりとした口調で感謝を述べる彼女に、俺は短く頷いた。

 

緋村零

そうか。ならいい……じゃあ、俺はこれで

 

長居は無用と、荷物を拾ってその場を立ち去ろうとする。

 

深澄

あ、待って! 私は兎沢深澄。……あなたの名前は?

 

去り行く背中に向けて、彼女が引き止めるように問いかけてくる。俺は足を止めず、横顔だけを少しだけ見せて、いつもの偽名を告げた。

 

緋村零

緋村時雨……

 

夜の闇と街の喧騒に紛れるように、俺は今度こそ彼女の前から姿を消した。

また一つ、SAOの未来を紡ぐ重要人物との因縁が刻まれた。来たるべきゲームの開始に向けて、俺の打つべき布石は確実にその形を成しつつあった。

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