シャーレの清掃員やってます。 作:Raitoning storm
あまあま。
「…ハックチュ」
「まだくしゃみは止まりませんか…もう少し安静にしててくださいね」
「は、はい…」
清掃員です…連日の過労がたたって風邪をひいてしまったようです…。
今はセリナさんに看病をしてもらっている状況です…。
「…ピピピッ」
「熱は…38.0℃ですか…まだ引きませんね。新しい氷嚢を持ってきます」
「は、はい…」
…こんな感じです。ほぼほぼつきっきりで看病してもらってます…申し訳ないです。
先生にはもう連絡は済ませてありまして…今は別の方に掃除をしてもらってるらしいです…その方にも今度お礼をさせてもらわないと…。
「戻りました。氷嚢を取り替えますね」
「よ、よろしくお願いします…」
…セリナさんには、おそらく過労が原因だろうと言われました。僕自身はそんな気はしなかったのですが、自分自身では気づかないものなんでしょうね…。
「どうですか?気持ちいいですか?」
「はい…すみません、ここまでしていただいて…」
「大丈夫ですよ。遠慮なんてなさらないでください」
…彼女はそう微笑みながら言ってくれますが、僕は負担になっていないかだけが心配です…
…なんだか自分がどんどん惨めに思えてきました…働きすぎで風邪をひいて、忙しいセリナさんの手を煩わせて、他の人に仕事を押し付けてしまって…思えば僕が清掃員を始めたのも先生の思いつきによるものですし…
いつ必要ないと思われても仕方ありませんよね…いつ見捨てられても仕方ありませんよね…いつ一人ぼっちになっても仕方ありませんよね…。
…風邪のせいですかね。不安になることばっかり頭に浮かんできます…
「失礼します。あまり食べないのもよくないと思ってお粥を作ってきたのですが…食べられますか?」
「えっと…食欲はないんですけど、食べられるなら食べたいです。」
セリナさんがお粥を作ってくれたそうなのでいただこうと思い、器を受け取ろうとしたのですが…
「じゃあお口を開けてくださいねー」
セリナさんは僕の隣に座って、スプーンにお粥をすくってこちらに差し出してきます。いわゆる「あーん」の状態です。
「えっと…自分で食べられるのでスプーンをわたしてほしいんですけど…」
「…いけませんよ、無理をして体調が悪くなってしまったらどうすんですか?」
「いや、それくらいは自分で出来ますよ…無理の範疇にも入りませんし…」
「大丈夫ですから。今は身体を治すことに専念してください」
…押し切られてしまいました。セリナさんは「ふぅー」と息を吹きかけて、お粥を冷ましてから僕に差し出してきます。
「どうですか?美味しいですか?」
「…味はよくわかりませんけど、ありがとうございます」
「…よかった。」
その後も小一時間ほどお粥を食べる時間が続きました。
「汗がすごいですね…寝巻きを取り替えましょうか」
「は、はい…」
お粥を食べ終わった後、寝巻きを取り替えることになりました。
「身体を拭くタオルを持ってきたので、背中を拭きますね。」
「えっ、あっ、そこまでしていただかなくても…」
「でも一人だと背中、拭けませんよ?」
「あっ、確かに…じゃあ、お願いします…」
そう言ってセリナさんは嫌な顔ひとつせず、背中を拭いてくれました。
恥ずかしさで顔から火が出そうでした。
…んっ。少しウトウトしてしまいました…。
「清掃員さん?眠たいのであれば寝ていただいて大丈夫ですよ?」
「そーですか…?ならおやすみさせていただきます…」
「はい。ゆっくり休んでくださいね」
「は、はい…」
つかれてしまったのですこしやすみます…
「…寝ましたか?」
彼が寝たのを確認すると、わたしは彼の顔にかかっている髪の毛を払いながら、その寝顔を観察します。
「…ほんとうに、無理をしないでください。わたしも、みなさんも心配してしまいます。」
自己表現が苦手で、気持ちを表にすることがあまりない彼は、自分が辛いことも隠してしまう。
それは彼の優しさであり、美点でもあり、欠点でもある。
「人を頼るのが、そんなに怖いですか?」
彼の頭を撫でながら、そう問いかける。
「ふふっ、気持ちよさそうにしちゃって…」
少し穏やかな、それでも不安が拭えていないような顔をしている彼を見つめる。
「…ずっと、心配しているんですよ?あなたがはじめてシャーレに来たときから…」
栄養失調、そんな言葉が優しく思えてくるほどぼろぼろだった彼を知ってから、ことあるごとに彼の前に現れては、体調についてたずねた。
苦笑いをしながらなんでもないように振る舞う彼の姿が、痛々しくて、心配だった。
「もっと、自分のことを労わってください。心配してあげてください。」
こんなときまで、他の誰かの心配だけをしないでほしい。
誰かにかけている迷惑なことだけを考えないでほしい。
「…んぅ…」
「…起こしてしまっては可哀想ですし、この辺りにしておきましょうか」
自分のことをいつまでも棚に上げておくならば、わたしも強硬手段をとるしかありませんから。
後日、熱はしっかり回復して、セリナさんにはお礼をさせていただきました。
どうやらいない間の掃除は当番の生徒さんがやっていただいたようで、お礼がしたい旨を先生に伝えると
“彼女たちも、君の役に立ちたいからって言ってたから、感謝の言葉だけで十分だと思うよ“
と言われてしまい、結局お手紙を送ることしか出来ませんでした…
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それより今の感じを続けてほしい