シャーレの清掃員やってます。 作:Raitoning storm
朝、少しボロいようにみえる家で、二人の男女が寝床を共にしていた。
「…んぅ。」
彼女は七稜アヤメ。百鬼夜行連合学院に所属している、百花繚乱紛争調停委員長…要するにすごそうな役割についている、忙しい人なのだ。
そんな彼女は、隣で眠る一人の男子生徒の背中に手を回し、顔と顔がくっつきそうになりながら昨日の夜から朝まで睡眠を謳歌していたのだ。
「…ちゃんとまだ寝てるね。ふふっ」
…一応断っておくが、服は着ている。二人とも。
「…ふぇ。」
…朝、そ、その、暖かいものに包まれていることに気づきながら目を覚まします。誰かというのは十中八九予想はついてるんですが…。
「おはよ。よく眠れた?」
…横を向いて、僕の背中に手を回しているアヤメさんは、なにごともないように僕に聞いてきます。…ぼ、僕はまだ慣れてないんですけど…
「は、はい…おかげさまで…ぐっすり」
僕が恥ずかしがって目や顔を逸らそうとすると、少しムッとした様子で顔を近づけてきます。…少し、圧を感じますね。
「…ん。良かった。悪い夢でも見てうなされることもなかったんだね。」
アヤメさんは安心したのか、背中に回した腕により力を入れて、僕を近くに引き寄せようとしてきます。
「…き、今日の予定は…」
「今日はこの前の火事の後処理だけだよ。午後からでも終わるからまだゆっくりしよ?」
僕の返事も待たずに、拒否権を一切奪い去るように、僕との隙間をゼロにしようとするようにアヤメさんは力を強めてきます。…抵抗できない僕が少し恥ずかしいですね…。
「…そ、そうですね…。とりあえず…朝ごはん作ってきます…」
「…もうちょっと一緒に寝ちゃダメ?まだ時間はあるでしょ?」
朝ごはんを理由にしてこの場を脱しようとしますが、力でも実力でもアヤメさんに劣る僕は彼女の拘束から抜け出せそうにありません。…こういうときは、心を鬼にしなきゃいけないって、何度も言われてきたんですけどね…。
「…で、でも。お昼ごはん遅くなっちゃいますよ…?仕事のとき眠くなっちゃうかも…」
「…うん。わかった。私は着替えてるね。」
何とかアヤメさんを説得できた僕は、そそくさとその場を離れて、遅くなってしまった朝ごはんの用意を済ませようとします…。ですが…
「…仕事が終わったら、早く帰るから。まだ足りてないからね、私。」
「…な、なるべく早く作ってきます。…」
…彼女の我慢が限界になったら、僕はどうなってしまうんでしょうね…。
「…よし、着替え終わった。」
「…あ、こっちも、もうすぐで終わります…」
着替えを済ませ、いつもの調停委員の制服に身を包んだアヤメさんは、台所に立つ僕の後ろに来て、声をかけてきます。
「…うん。いつもありがとね。…さっきはああ言ったけど、ゆっくりでいいからさ…。台所に立ってる君も好きだし…」
そう言ったアヤメさんは、みそ汁を混ぜている僕の背中から手を回して、後ろから抱きつくようにしてきます。
「…あ、あぶないですよ?火の近くなのに…」
「…だめ?ちょっとだけでいいからさ…ね。ちょっとだけ」
…その、甘えるような仕草に、突き放すことも出来ずにさせるがままになってしまいます。
「…は、はい…わかりました…」
「…うん。ありがとう。」
…背中に感じた、濡れるような感じは、多分気のせいだと思います…。
「「いただきます」」
出来た料理を囲んで、朝食の時間になります。今日はアヤメさんの好物…だと思われる焼き鮭を出しました。…その、朝から不調気味な気がするので。
「…うん。今日も美味しい。」
「…お、お口に合ったのなら、何よりです。」
自分の作った料理に、アヤメさんが表情を緩ませてくれるのは、作る側として嬉しい気持ちにさせてくれます。
「…私はね。こういう時間さえあれば、なんでもいいから。どんなにつらかったとしても、どんなに退屈だったとしても、君との時間があればなんでもいいから。」
「…ごめんね。めんどくさいよね。私よりも先に寝ないでとか、先に起きたらダメとか。毎日、私の辛い感情を君に押し付けてるんだよね。」
「…でもね。私はもう君がいないと耐えられないの。この瞬間がおとぎ話だとしても、縋っていたいの。君に依存していないと…君だけのアヤメでいられないと…ね。馬鹿みたい。」
「傘みたいなものだよ。あの日の雨に、不用心に傘を持って私に差し出してきたのが君。心まで冷え切ってた私をあっためてくれたのが君だから。」
「…今日も頑張って、君のところに、君と一緒に帰ってくるから。待っててね。ちょっと痛いかもしれない、辛いかもしれないけど…これは君の報いだから。」
「…誰かのものになんて、ならないでね。」
白亜の予告状(清掃員君入り)見たい?
-
見たい
-
それより今の感じを続けてほしい