変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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俺の名前はエギルだ。見せられないよ!という話。


花を手に入れるの巻。

 

「にしてもあのお爺さんは世話になったなぁ…」

 

「バケツさんも剣道習ってたんですか?」

 

「いや?」

 

「こいつは家にちょっかいかけるクソガキだったんだよ」

 

「キリトがパソコンにハマるきっかけを与えてやったのにひどい言われようじゃんね」

 

「あれは…!小学生の癖にアダルトサイトに引っ掛かったあげくびびって物理的に破壊したお前が泣きついてきたからだろ…!」

 

「きっかけはきっかけじゃん」

 

「ちょっかいって?」

 

「ああ、ちょっかい…ちょっかいね。僕ってば小学二年生まで親が忙しくてアメリカの祖父に預けられてたんだよ。その爺さんってのがまぁ頑固で。僕はぎゃふんと言わせるためにいろいろしたもんだぜ」

 

…途中から近所の金持ちの女の子の屋敷に入り浸るようになったのは、完全に余談だから割愛しよう。

果たして元気なのだろうか。

将来歌手になったらエルザと名乗るとか言っていたあの女の子は。

 

…まぁ、元気だろうな。

だって日本に来て、僕を数年かけて見つけ出して、ストーカーしてたくらいだし。

お前彼氏いるじゃんやめろよ。

や、彼氏じゃないらしいけど、あんだけ真剣に思って尽くしてんだからほぼ彼氏だろ。

その男もストーカーらしいしお似合いじゃん。

 

「結局決着がつかないまま日本に帰ってきた僕は、隣に住んでるその頑固な爺さんにそのアメリカの祖父を重ねてね…」

 

「遊びに行くようになったんですね!」

 

「いや、手始めに花火を数発打ち込んだ」

 

「何でそんなことを!?」

 

当時、キリトやその妹は道場に通わせる前に基礎を叩き込んでやると息巻いたその祖父に、剣道の指導をされていた。

剣道やら道場というものを知らなかった僕は、虐待とかそういう類いのものだと思ったのだ、という言い訳は胸にしまっておく。

いいやつとか思われたら恥ずかしいし。

 

「もちろん引火しないように着弾地点に水風船投げ込んで随時消化してたんだけど、それはもう大惨事でさ。親からもその爺さんからもしこたま怒られた」

 

「でしょうね…」

 

「一応いっとくと、剣道を知らなかったこいつは、俺と妹が虐待されてると思っての行動だったんだ。動機だけはご立派なもんだよな」

 

「いやぁ僕ってばなんて優しい心の持ち主なんだろう(手のひら返し)」

 

「優しさが過激すぎませんかね」

 

「大人に喧嘩を売るつもりだったからなぁ」

 

それ以来キリトの家に潜り込んでは、せん餅をパクったり、寝てる爺さんの顔に肉って書いたり、八歳になって道場に通わされるようになったキリトをサボりに誘ったり、その爺さんの座布団の下にブーブークッション置いたり、いろいろした。

その度にぶちギレた爺さんに追いかけられ、時にキリトを巻き込んでいたあの日々は、僕からすれば楽しい毎日だった。

 

 

 

 

 

うむうむ、などとわざとらしく、なにか…おそらく、ろくでもない思い出を思い返すようにひとしきり頷く長ネギ丸を、キリトは視界から外した。

 

なんだか、変な気分だった。

いつだって、長ネギ丸はこのゲームを楽しんでいた。

デスゲームになったあの日から、代わらずにゲームとして楽しんでいるプレイヤーなんて、こいつくらいなもんだろう。

ネタ装備を着て、ネタスキルを見つけては習得しては「だはは!なんだこれ!考えたやつ絶対バカじゃん!使えねぇ!」と言いつつ、スキル値をあげてみたり、誰もやらない馬に乗る練習をスキルなしで完璧にして見せたかと思えば、数人の知り合いと一緒にアインクラッドの外周にある柱を上るための梯子をたてようと奮闘し、暫く見ないと思ったら、NPCにセクハラして黒鉄宮に一週間ぶちこまれていたりもした。

 

他にもあげればキリがない。

ゲームの攻略には関係ないグルメ紀行を攻略情報をまとめた新聞にいくつも投稿していたり、町中で何処からか見つけてきた女の子をアイドルとして売り出してゲリラライブをしたり、男性NPCのご立派様ランキングを町中に張り出してみたり。

 

だから。

だからてっきり、ひょっとしてこいつは現実に帰りたくないなんじゃないか、という勝手な想像をしていたのだけど、どうやらそういうわけではなかったらしい。

 

「なんだよそんなに僕の顔を見て」

 

「いや、ちょっと安心しただけ」

 

「えー…なら今から不安に陥れるか…実はさっきの妹に似てる発言は、送り先を見ずにフレンドの誰かに送った」

 

「お前その天邪鬼精神やめろよ!いい話で終わらせられねぇのか!」

 

「それは無理。だって天邪鬼だもん」

 

「自覚ある悪って最悪だよな」

 

「わかる。出会って初日に女の子部屋に連れ込むやつとか最低だよね」

 

「その話はもういいだろ!」

 

さて。

途中シリカのパンモロやら触手プレイがあったがカットするとして。

目的の花がエギルの顔になっているかも、なんていう長ネギ丸の不吉な予言に反してアイテムは無事ゲットできたし、あとは宿屋に帰るだけ、となったその帰り道。

 

「なんなのよ、なんなのよあんたはぁ!わざと攻撃受けるってなに!?あんたの防御力だと死んでたかも知れないのよ!」

 

「ただのデスゲームエンジョイ勢ですよろしくぅ!ほんとに死ぬかわからない?違うなぁ!ほんとに死ぬから面白いんだよ!生きるか、死ぬか!今僕は石に小指ぶつけるだけで死ぬぜ!なんせHP1だからなぁ!」

 

「き、キリトさんなにが起こってるんですか!?」

 

「うん、ハラスメントコード出ないギリギリで目隠しと耳栓してごめんなシリカ。でもこれは見せられないわ…」

 

「ひゃー!SAОさいこー!」

 

「なんかこいつのことで悩んでたのが馬鹿らしくなってきたな…」

 

「おら!殺してごめんなさいってしろ!殺すぞ!」

 

「誰か助けてぇ!」

 

「瀕死になって喜ぶ変態とかどうしようもないもんな。むしろ現実に帰ってこないでほしいわ」

 

「あははは!トランザムモード楽しい〜!」

 

オレンジギルドに囲まれた瞬間長ネギ丸が正装という名の変態装備に変身し、わざと攻撃を受けて『HPが少なければ少ないほど攻撃力と敏捷値が上がるスキル』により覚醒、とあるオレンジギルドが壊滅する憂き目にあったりしたわけだが、キリトは長ネギ丸の頭のおかしさを再認識して、深い深いため息をつくのだった。

 

 




シリカ編完!
投稿済みの話の加筆含めて1日ひたすら書いてました。
掛け合いとか楽しんでもらえてたら幸いです。
あと今日一日頑張ったので、気が向いたら評価と感想頂けるととても嬉しいです。 
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