変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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オリ主と原作キャラの恋愛フラグは未来でへし折っておいたよ、という話。


鍛冶屋VSビーターVSエンジョイ勢の巻。

 

巨大な水車がゆるやかに回転する心地よい音が、工房の中を満たしている。

 

そんな場所に店を構える鍛冶屋が、なんか圏内殺人とかあったらしいよ、なんて切り出してきたので詳しく聞けば、その鍛冶屋の知り合いが遭遇した話らしく、もっと詳しく聞くと、それは閃光さんだった。

 

「閃光さんが男連れねぇ」

 

たぶんあの黒いのだろうなぁ。

 

「アスナね。名前で読んであげなよ」

 

「なんか本名っぽいプレイヤーネーム呼ぶの恥ずかしくない?」

 

「あんた…もしかして女の子の名前下で呼ぶの恥ずかしがるタイプでしょ」

 

「そうだけど?」

 

「…モテたいとか言う割に変に開き直ってんのやめたほうがいいわよ。そこは照れて顔赤らめて可愛げアピールするところだから」

 

「べ、別に…そ、そんなことねぇよ…!ただ虫酸が走るってだけだよ!」

 

「なにが?下の名前に?」

 

「さぁ?リテラシーのなさとかに?」

 

「これはモテないわー」

 

あちゃー、と対して深刻な問題として捉えてなさそうに額に手を当てるのは、リズベット。

僕の槍を磨くのが得意な女の子だ。

 

「なんか最低な紹介をされてる気がする…」

 

「急になに?頭大丈夫?」

 

「あんたにバカにされると他の人の数倍ムカつくのよね…」

 

「僕スポンサーだぜ?そんな態度でいいのかねリズベットくん」

 

「はいはい、この店買えたのはあんたの出資のおかげなのはちゃんと感謝してるわよ。実力だけは信用してるしね」

 

「性格は?」

 

「いつ身体要求されてもおかしくないかなって」

 

「そんな評価ある?やばくね僕」

 

「それにその分整備代とオーダーメイド20本無料でやってんだから対等でしょ?あんたまだそのオーダーメイドの権利3回しか使ってないけど」

 

「それはそう」

 

とりあえずはい、頼まれてたぶん。

そう言って渡されたのは1ダースのショートスピア。

どれもオーダーメイド品ではないが品質は高いし、投擲ボーナスもついている。

 

「うーん、相変わらず惚れ惚れするくらいいい仕事」

 

「そりゃあどうも。正直もうちょっと武器は大事に使ってほしいけど、いいや。それに、あんたのその素直に人を褒めるとこは嫌いじゃないしね」

 

「いつも素直でしょ僕は」

 

「会話をループさせる気?キングオブ天邪鬼でしょあんたは」

 

「いやいや、案外僕よりやばい客とか来るかもよ。売り物の剣ぽきぽき折るやつとか」

 

「あはは!いるわけ無いでしょそんな客!」

 

ですよねー、なんて笑った3日後。

 

「うぎゃああああ!!」

 

ある意味彼女のお陰で新スキルが芽生えた僕は、お礼も兼ねて報告にリズベットの店を訪れ、自分の目を疑った。

 

「なにすんのよこのーっ!!折れちゃったじゃないのよーっ!!」

 

「ご、ごめん!まさか当てたほうが折れるとは思わなくて……」

 

「まさか売り物折るやべー客がほんとにいるとは…しかも知り合い」

 

「あ、長ネギ丸!こいつあんたの友達!?」

 

「げ、お前どうしてここに…!」

 

猛るリズベット。

気まずそうなキリト。

折れた剣先がポリゴンになって消えていく三日前最高傑作とか言って自慢された片手剣…だったもの。

 

それらを視界に収めた僕は、1秒だけよく考えてから、ゆっくりと扉を閉めた。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

「「待て待て待て!事態を収めてから帰ってくれる!?」」

 

「やだよめんどくさい」

 

 

 

 

 

 

数分後。

やだよ、と言いながらも私と厄介な客ことキリトの間を取り持ってくれた長ネギ丸の顔を、私はそれとなく盗み見る。

 

こいつとの付き合いも、それなりになる。

最初はエギルの店で不良在庫という名のなにに使うのかわからないようなちょっとしたアイテムを卸しにくる変な客、くらいだったというのに、今では私の一番のお得意様なのだから世の中どうにかなるかわからない。

 

最初こそ大人しかったので、まともなプレイヤーだと心を許していたら、エギルに長ネギ丸が噂の変態バケツ男と聞かされ衝撃を受けたものだが、逆に遠慮がなくなって居心地の良い関係に落ち着いている。

 

数日前、友人のアスナに男ができたとからかったら、長ネギ丸とのことを混ぜっ返されたけど、残念ながら私たちはそういう関係ではない…たぶん。

自覚してる部分だけなら。

なんとなく、他の男性よりは気を許してる気はするけれど、どうだろう。

 

SAОにログインした当時が中学卒業間際の私と高校卒業間近だったという長ネギ丸では、ちょっと年の差がある気がする。

たった3学年分とはいえ、まだ子どもの私にすれば、それはなんだか大きな差に感じてしまう。

それに、デリカシーもないし。

 

『うわ…ベビーピンクのふわふわしたショートヘアて…』

 

『な、なによ…似合ってないっていいたいんでしょ!わかってるわよもー!』

 

『や、むしろ似合ってるのが怖い…鍛冶屋を履き違えたみたいなエプロン姿にぴったしだようん』

 

『あんたちょっとはまともに褒めれないわけ!?』

 

そんな男が、新しいスキルが生えたと言って訪ねてきた。

それも、厄介な客が来たときに。

なんだろう。

どうしようもない嫌な予感が、私の胸の中に広がっていた。

 

 

 

 

「とりあえずまずごめん。弁償する」

 

「……私も取り乱してごめん。で、でも!言っておきますけどね! 材料さえあればあんたの剣なんかぽきぽき折れちゃうくらいのを幾らでも鍛えられるんですからね!」

 

「ほほう」

 

「帰っていい?」

 

「そりゃあ是非ともお願いしたいね。これがポキポキ折れるやつをね」

 

「ねぇねぇ、おーい?」

 

「そこまで言うなら付き合ってもらうからね!金属取りに行くところから!」

 

「あれ、もしかして僕死んでる?」

 

「そりゃ構わないけどね。俺と長ネギ丸でいったほうがよくないか?足手まといはゴメンだぜ」

 

「ゴメンだぜは僕のセリフなんだけど。新スキルの試運転する予定なんだけど」

 

「むきゃー!」

 

「……………よーし帰るか!あばよ!」

 

「「ごめん待ってこの状態で二人っきりは気まずいからついてきてお願い!」」

 

「もう一回言ってやろうか?やだよ、めんどくさい!」

 

なんで僕を無視して喧嘩する二人の面倒を見なきゃいけないんだよ普通に嫌だよ!

 

 

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