変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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ウホ♂いい男?な話。


今夜は焼肉の巻。

 

 

「しゃおらぁ!黄金羊の肉ゲットぉ!前回の記録から10秒の短縮も達成!」

 

アインクラッドには、わりかし何にでもランクがある。

麻痺毒一つとってもそうだし、食材もまたその例に漏れることはない。

 

そして、僕が今しがたそれなりの労力と時間を引き換えに手に入れた黄金羊の肉のランクはA級。

幻と呼ばれる最高ランクのS級食材には及ばないらしいが、まぁそんな手に入らない前提みたいな食材よりも、取得難易度高くても確実に取れるA級のほうが僕は好き。

 

僕は実力派エリートより餅派なのだ。

 

ちなみに、この黄金羊の肉の入手方法は、制限時間内に一人で百匹の羊《スリープナイツ》の毛を刈ることで出現するとにかく逃げ足の早い金色の毛をした羊を捕獲、毛刈りをすることでようやく手に入る。

毛刈りなのになんで肉が…?と思うかもしれないが、クエスト終了後に捕獲した金色の毛の羊を見せると、NPCが『うちの牧場のじゃないから』と無慈悲に屠殺することでドロップする。

 

…うん。

自分で討伐したらドロップしないと知らずに黄金羊を殺して、2時間を無駄にしたバカなプレイヤーは僕です。

 

まぁストーリーはさておきA級の食材は普通にうまい。

カンストこそしてないとはいえそれなりに高い料理スキルの僕が調理すると雑なメニューでも結構な満足感になる。

 

僕はこのクエストを定期的に受け、この肉を使ったメニューを振る舞う男子会を開催することで、他プレイヤーとの交流と情報収集を行っていた。

 

 

 

 

 

 

「あ、アスナ様!こんなスラムに足をお運びになるだけに留まらず、素性の知れぬ奴をご自宅に伴うなどと、と、とんでもない事です!」

 

「邪魔」

 

「───なに!?」

 

恒例のドキッ!男だらけのBBQのお誘いと、動く鎧系モンスターからドロップしたいくつかの防具を売り飛ばしに馴染みの店…つまりはエギルの店に訪れたところ、なんか変なおっさんがいた。

入り口を塞いでいて邪魔だったので、そのケツを蹴り上げたところ、つんのめるように前へ。

 

不意打ちだったからなのか、そのおっさんはそのままカウンターに激突し。

 

「うわぁ…」

 

そのままエギルと熱烈な口づけを交わしていた。

百八十センチはある体軀は筋肉と脂肪にがっちりと包まれ、悪役レスラーさながらの凶悪な顔をした男と、三白眼ぎみの落ち窪んだ目で長髪を後ろで束ねた瘦せた男の濃厚な接吻は、互いの情報処理能力の限界を超えたのか、膠着状態に陥っていた。

なんか背景にバラが咲いて見えてやだな…。

 

その光景に気分を害されたのは、僕だけでなく見物人も同じようで、汚物の向こうに見える知り合いもまた唖然とした様子で固まっていた。

 

「よぉ、お二人さん。キリトはともかく閃光さんはこんな店でなにしてんの?ホモビの撮影?」

 

「お前…今日ばっかりは最高だわ」

 

「?」

 

「な、なぁ…また…!またあなたですか!いつもいつも行く先々に現れて!トラブル起こして!」

 

「そりゃ僕も攻略組だし、キリトとつるんでるし。しゃーなくない?」

 

「よりによって、こんな…!こんな物見せるなんて!」

 

「こんなもの呼ばわりは可哀そうじゃない?」

 

「まぁお前のせいだけどな」

 

そして、ラグから復帰したのか、男二人の合体が解除される。

 

「「なにしやがる!?」」

 

「お、再起動した」

 

「……くっ、アスナ様!今日のところは気分がわるいので帰りますが!くれぐれも軽率な…うっ…おぇ…!」

 

「長ネギ丸てめぇなんてことしやがる!?俺にはカミさんだって居るんだぞ!うっ、吐き気が…!」

 

クラディールというらしい。

その閃光さんの護衛の男は、部下を伴ってふらふらと這いつくばるように、店を飛び出した。

 

「初めてだったのに…!」

 

最後に、きらめく涙とそんな言葉を残して。

 

「エギル…」

 

「いや俺は悪くないだろ!?」

 

 

 

 

 

所変わってリズベット武具店。

エギルは僕との防具の取引を終えると店に引きこもってしまった。

からかいすぎたらしい。

 

そして、男女二人ずつの焼き肉会はまぁそれなりに…というか普通にめちゃくちゃ楽しかったはいいが、なんかちょっと夜風にあたってくるとか言って、抜け出したキリトと閃光さんがデートの約束をしていたせいで、僕は一瞬で真顔になった。

 

「なら、しばらくわたしとコンビ組みなさい。ボス攻略パーティーの編成責任者として、君がウワサほど強いヒトなのか確かめたいと思ってたとこだし。わたしの実力もちゃんと教えて差し上げたいし。あと今週のラッキーカラー黒だし」

 

「な、なんだそりゃ!」

 

いやほんとだよ。

隣を見ろよ。

出会いない系スミスのリズベットが、自分の家の前でラブコメされてるせいでとんでもない顔になってるじゃん。

出会いない系なのに、顔のよさと性格のよさと強さでキリトなんかに仄かな恋心抱くからこうなる。

 

というかそもそも、攻略スピードが落ちて全員がこの世界に馴染んできてるって話から、キリトがギルドに入らないかって話になるのはまだギリわかるにして、そこからどうしてデートにつながる?

さっきまで誰が一番カンストさせたスキルを持ってるか選手権とか、僕の無駄スキルカンスト自慢大会したり、僕が再現した《エバラ焼肉のタレ》レシピとマヨネーズのレシピ交換したり、トントン相撲とかして普通にバカなノリのバーベキューしてたじゃん。

 

なんでしっとりした空気になってるんですかね…。

 

「んな……こと言ったってお前、ギルドはどうするんだよ」

 

「うちは別にレベル上げノルマとかないし」

 

「じゃ、じゃああの護衛二人は」

 

「置いてくるし」

 

わー攻略の鬼とか言われてた人がメスの顔してら。

必死か?

 

「くっ…じれったいわね。私が邪魔してやろうかしら…!」

 

「やめときな?余計惨めになるぜ?」

 

じれったいんじゃなくて普通に嫉妬だろうに。

 

「でも…!だって!私悔しい!あんたは悔しくないわけ!?普段はあんなに嫉妬してるくせに!」

 

「なんかあれだよね。隣で自分より取り乱してるやつが居ると逆に冷静になるみたいな?」

 

ギリギリ歯ぎしりするリズベットの横で、なんだか全てがどうでも良くなった僕は、ひたすら無心で鍋蓋のような夜空を見上げていた。

 

後日『なんで私も誘ってくれなかったんですかバケツさんのバカぁ!』とビーストテイマーちゃんに泣かれたという話は、たぶん完全な余談だろう。

ギスギスハーレムオンラインは別売りです。

僕の手元にはありません。

 

 

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