変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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選ばれたのは綾鷹…じゃなくてこのスキルでした、みたいな話。


飛び出せユニークスキルの巻。

 

 

仲良くお弁当を広げているところ申し訳ないが、会ってしまったものはしょうがない。

とりあえず一緒に攻略どうかという話になり、もはやレイドパーティーレベルの規模で迷宮区を攻略。

 

なんなくボス部屋を発見、情報収集開始!したはいいものの。

 

「タンク隊、防御姿勢!コーバッツは撤退の用意を!《鉄壁(ランパート)》発動は3秒後!1、2…今!」

 

《The Gleameyes》。

SAОでは初めての悪魔型のボスモンスター。

息吹にすら攻撃判定があり、両手剣でありながらもディレイが混ぜられており、実質オリジナルソードスキルなそれは、見切りにくい。

なにより。

 

「だめだ……!く……クリスタルが使えない!!」

 

《結晶無効化空間》。

ボス部屋は、回復も転移も、その他諸々即時効果発動系の結晶アイテムは全てが使えなくなる空間だった。

今までは迷宮区の一部屋にあるトラップ程度だったが、いよいよボス部屋にも仕掛けられるようになったらしい。

その情報を聞いて、僕は手をうった。

 

「なーる。これ、あれかぁ!今後のボス部屋は絶対結晶無効化空間デフォだぜ!おいおいおい!楽しくなってきたな!」

 

「楽しくなってくるな!」

 

「つまりさぁ!これはそのギミックお披露目用のちょっと性能抑えたボスなわけで!だったらさぁ!」

 

通りでクソゲー押し付けてくるタイプのボスじゃないわけだ。

純粋な力押しタイプの正統派ボス。

それこそ普通のゲームでなら、何回かやるだけで簡単にソロでもクリアされるタイプたろう。

でも、だからこそ。

 

「───初見クリアしないとなぁ!?」

 

「長ネギお前…トランザムは使うなよ!?」

 

「わかってるよぉ!はははっ」

 

両手剣が薙ぎ払われるその直前。

モーションが本格化する前。

ダメージ判定がほとんどない攻撃を小盾でわざと受けることで僅かなダメージをもらう。

 

小盾は大盾と違い防御力は低いが、タイミングよく振るうことでパリィという、特殊な防御をすることができる。

タイミングさえ完璧なら相手の物理攻撃を無効化し、攻撃のチャンスを得る、そんな攻めの盾。

そんな小盾を使ったパリィの意図的な失敗。

ゼロではなく、小さなダメージを蓄積させることを繰り返し、都合5度目。

これでドンピシャ赤ゲージだ。

 

スキル《窮地》が発動し、僕の敏捷と攻撃力が跳ね上がるのを感じる。

 

「さぁ、振り切るぜ!!トランザム!!!!」

 

「お前もうほんとバカ!」

 

「相変わらず危なっかしい戦い方しよるなぁあのクソガキ!全員守れぇ!大人の意地見せたれやぁ!」

 

後ろで周りが慌てふためくのを感じながら、前へ。

その直後、僕が居た場所を悪魔の攻撃が薙ぎ払った。

自分の感覚が拡張される。

どうすれば身体が加速するのか、手に取るようにわかる。

薙ぎ払い───当たらない。

振り下ろし───当たるわけもない。

5連撃───全てすり抜ける。

 

「ひゃっはー!当たらなければどうということはない!…よぉーし、僕の新スキルのお披露目と行こうか!なんかこないだ急に生えてきた新スキル!《無限槍》!」

 

固まった悪魔の腕に飛び乗り、宙へ。

 

「む、むげんやり…!習得してたのか長ネギ丸くん…!」

 

「知ってるのかディアベル!」

 

「いやごめん知らない」

 

「なんでや!なんでこの状況でボケが発生すんねん!いつもや…!あのクソガキが暴れるといつもこうや…!」

 

「投槍しても武器が手元から無くならないとか投槍スキル使用時にクールタイムの低下と威力補正がかかるとかあるけど!一番気に入ってるのは、所持アイテムにある槍を消費することで、消費した槍の攻撃力の合計だけ威力の底上げができるってとこだよなぁ!火力万歳!火力こそ正義!攻撃はぁ、最大の防御ぉ!」

 

僕はリズベットにとりあえず期間は設けずに50本の槍の制作を依頼した。

金額は500万コル。

材料はこないだのうんこ鉱石だったり、別の最前線に近いエリアのクエストで手に入る武器製作用アイテムたち。

素材持ち込みなので少しお安くなるとはいえ、まぁ値が張った。

とはいえちゃちな槍では困るのだ。

なぜなら消費する槍の攻撃力次第で威力の強化が決まるのだから。

 

リズベットに逆らいづらいという僕の心理はわかってもらえただろうか。

無茶振りしたツケである。

 

あと、たぶんこの《無限槍》とかいうスキルの出現条件は投槍感謝の一万回とかだ。

僕は1ダース単位で替えの短槍を持ち歩いていたから気軽に使えていたが、普通は武器が手元からなくなるこの《投槍(シューティング・ランス)》はそうそう使うものではない。

 

スキルのクールタイム以上に、武器の装備し直しによる硬直が発生するし、他にもっと普通に効率よく火力出るスキルもあるわけで。

あと《槍》スキルの中にあるソードスキルの一つである投槍使うより、《投剣》スキルでサブ武器投げればいいし。

じゃあなんで使ってたかって?

いやぁ、なんだろ。

愛着?ロマン?

SAОでは唯一性のある飛距離と挙動が面白かったからとかじゃないだろうか。

少なくとも、合理性はない。

 

これが神聖剣みたいなユニークスキルに該当するのか、誰でも習得できるエクストラスキルに当たるのかは知らないが、僕はスキルを隠すよりぶん回したいタイプ。

コソ練と検証はそろそろやめて、お披露目と行こう。

残念ながら新しいソードスキルが増えるタイプのスキルではないが、その威力を今こそご照覧あれぃ!

 

「ステラァァァァァァァァアアアアアア!」

 

「お前それ使って大丈夫なんだよな!?」

 

「ジャベリンありがとうね!……あ、やべ。HP1割ちょっと残った。まじかぁ。ケチったせいか?ちょっとケチって5本だけしか犠牲にしなかったせいか?うーん…クールタイムで動けねぇや。…わりぃ、僕死んだ!」

 

「ま、待て待て待て待て!諦めんなよ!ああくそ、間に合え!おらぁぁぁぁ!」

 

「あー!僕の活躍の場が!露骨に使うの楽しそうな二刀流スキルに持ってかれたぁー!」

 

「活躍より命だろ!!!」

 

「いや、普通に軍のみなさんが守ってくれたから大丈夫だったんだけど…死ぬかもしれないスレスレを攻めるリスクを楽しんでるけど流石に自殺志願者じゃないんで…」

 

「だぁぁあ!こいつホントムカつくな!」

 

「にしても5本でボスHP6分の1くらいかぁ。あれだなぁ。ギミックお披露目ボスでこれなら、上行くなら上限の十本は普通に消費しないとかなぁ」

 

「分析始めんの早くない?」

 

「このガキいつもこんなもんやろ」

 

「おい、俺の見せ場は!?」

 

「クラインさんダメージディーラーおつかれ様でした!」

 

「ディアベル…!労ってくれんのお前だけだ!」

 

こうして、74階層はクリアされ、同時にユニークスキル使いが二人出た、という話もまた瞬く間に広まった。

 

僕のはまぁ威力補正系のスキルだったのであれだが、キリトはそれはもう大人気になった。

ラストアタックボーナスを奪われ、活躍の機会も奪われ、話題も持ってかれる。

 

なんだよ。

無限槍のほうが火力高いんだぞ。

武器消費すれば一撃でキリトのスタバとか霞む威力出せるんだからな!一度に消費できる本数には限りがあるし、その消費分クールタイム伸びるけど!

武器を消費するバカ威力の方じゃないならないで、普通の高威力ソードスキル並みの効率と威力で槍投げできるぶっ壊れだぞ!

 

はーぁ。

ほんと。

…この世界っていつもそうですよね!

僕のことなんだと思ってるんですか!

キリトの踏み台じゃないんだぞコラァ!

 

 

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