大晦日と正月しか休みないくらい仕事が忙しく、正月の夜に書き終えました。
予約投稿です。
「お勤めごくろーさん」
「ああ、今日は副団長の代打でしたっけ。お疲れ様です!」
「どう?血盟騎士団の制服似合ってる?割といい感じな自信あるんだけど」
「ふふっ…よくお似合いですよ!」
「お前今笑ったか?僕が今用事なかったら普通にぶっ飛ばしてたからね?」
「今度飲みに行きましょうね是非!」
「やだよ」
僕は現在、キリトの泣きの懇願で入団の遅延と副団長様の休暇の対価として血盟騎士団に出勤していた。
ヒースクリフに頼まれた仕事の内容は迷宮区探索。
まぁ、キリトの頼みがちょうどよかったのもあるし、慣れた仕事なので、別に断る理由もない。
ちなみに今日の格好は純白のマントに赤い十字架のあしらわれた、僕からすれば割と見慣れた制服…の女性版。
腰には細剣をさして、カツラも被って、これでバッチリ副団長だ。
にしても女性服でもばっちり男も着れるとかさすが茅場。
理解ってる。
男の娘の可能性を潰さないのはナイスです。
長ネギ丸がいいねしました。
そんな事を考えながら本部の中を歩くこと少し。
集合場所の部屋、まぁ割と僕がヒースクリフと遊んでる部屋にたどり着き、いつも通りノックもなしに入室する。
部屋の中央にいたのはゴドフリーと、クラディール。
何やら荷物の確認をするためにステータス画面を見ていたらしいゴドフリーが、僕の入室に気がついたのか目線を上に上げ、ギョッとしたように固まった。
「おっ、きました…な…?その格好はどういうことで?」
「よっ、ゴドっち。副団長のコスプレしてみた!」
「似合い過ぎでは?」
「えぇー?さっきそこの門番に笑われたんだけど」
「ああ彼、男色家ですからな」
「なるほどなぁ」
「そこでなるほどなぁで流せるの流石ですな」
「っぱ器の大きさよ」
「モテ具合はいかほどで?」
「それを言ったら戦争だろうが!」
ゴドフリー。
斧戦士で僕の飲み友。
そんな相手との気安い会話に、クラディールが気まずそうに入ってくる。
「あ、あの…先日はご迷惑をおかけしました…」
「あーまぁ気にせず行こうぜ。どうせあんたは僕のこと好きになれないし、もやもやも消えないだろ?なら、我慢してまで謝る必要ねーよ」
「いえ、今日で好きになれそうです…フフ」
「?」
男の娘好きか?
いやまぁ絶対違うだろうけど。
飲み友のゴドフリーと、こないだぶっ飛ばしたクラディールという、クラディールだけが気まずいパーティで迷宮区の探索が始まった。
●
で。
特に苦戦することもなく、一度食事休憩を取ろうという話になったその時に、それは起こった。
HPバーが緑色に点滅し、体から力が抜ける。
麻痺毒だ。
下手人は言わずもがな。
クラディールがニヤニヤ笑いながら立ち上がった。
「クッ…クックック」
「クックパッド?」
「黙れ!お前はいつもそうだ!済まし顔でこのゲームを楽しいなどとほざく!その余裕綽々な態度がァ!ムカつくんだよぉ!」
「楽しいもんは仕方ないじゃんね」
さて、仕掛けた通りというか、なんというか。
ここまで見事につられると、なんだか申し訳なくなるが、レッドプレイヤーは一匹残らず駆逐すると決めている。
ゲームから帰還したあとに殺されてもたまらんし。
「あ…?あぁ?」
「ドッキリ大成功〜、みたいな?来るとわかってて備えないのは三流プレイヤー。僕は超一流なんで」
「あああああああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!?俺の!足が!」
「おっきくなっちゃった?」
「ふざ、ふざけるな!どうして、な、おま…!」
「───なんでキリトと閃光さんが急に休みになったと思う?」
いまだ状況を飲み込めないのか、喚き散らすクラディールの目を真っ直ぐ見て僕は言葉を連ねる。
「なんで僕の実力をよく知るゴドっちとヒースクリフからこんな迷宮探索ごっこみたいな任務の指示出したと思う?」
「あ、え…」
「全部、プーと接触したお前とラフコフ連中の残党をあぶり出すためなんだよなぁ」
ラフコフ討伐戦。
奇襲を仕掛けるつもりだったのか、ひとかたまりで武装していたのが仇となった。
ノールックで適当に槍を投げても誰かに当たるボーナスゲームの有り様だったのだから。
『目標を確認!突撃いいいいいいいい!』
『な、なんだこいつ!』
『ひぇ、一人で突っ込んできやがった!』
『バカが!俺が殺してやるぜぐわぁぁぁぁあ!』
『ひゃはは!殺してやるぜお前ら!生きて帰れると思うな!はいそこぉ!僕の後ろ取ったと思った?残念でしたぁ〜!』
『なんでそっちが悪役みたいなセリフなんだよ!』
『オラ死ね!ぶち殺すぞ!僕の前に命おいてけコラァ!』
『おいやべーぞこいつ!なんで正義側みたいな面してんだ!』
一応言っておくと、別に僕は殺しを楽しんでいたわけではなく、単に相手を恐怖させるのとアドレナリンを出すために演じてただけだから。
そこは勘違いしないでほしい。
とりあえず、攻略組は世界からの脱出に絶対必要で、高校生たちに殺しを経験させるなんてのは不必要な展開だ。
故に自分の命と引き換えに全滅させるつもりだったわけだけど、どうやらそれにいち早く気がついたキリトのせいで…いやまぁ、キリトのおかげか。
攻略組もラフコフ討伐に後から加わり、僕は生き残り、ラフコフはその殆どが殺され、ごく一部が逃げ延び、数人が監獄へと送られた。
奴らの中には
殺す気がないやつも脅されてるやつもいない、全員根っからの悪党で助かる。
おかげで罪悪感がなくていい。
『ふぅーHP残り1じゃん。今回も生き残ったぁ…もうけもうけ』
『長ネギお前正座!』
『なんだよ落語でもすれば良いのか?』
『いいから、お前もうホント…!今度ばかりは死んだと思っただろ!』
『男が泣くなよみっともねえな』
あと、僕はしこたま怒られた。
やれ命を大切にしろだの、もうちょっと頼ってくれだの、君だけに背負わせはしないだの。
やーね。
みんなして。
まるで僕がみんなのためを思って行動するヒーローみたいに言うじゃん。
さて。
そんな苦労をしてまで討伐したラフコフの残党にクラディールが接触したと聞いたときにはこれほど都合の良い展開はないと思ったものだ。
「それじゃ、さよならだ。僕はキリトみたいに優しくないから、余裕で勝てる状況でも殺すよ」
すでに一撃もらったおかげで、やつのカーソルはオレンジ。
反撃しても問題ない。
「安心しろよ、お仲間もすぐに送ってやっから」
僕は、茂みから飛び出してきた十数人のレッドプレイヤーたちを見据えながら、震えるクラディールの首を跳ね飛ばした。
「私も参加しますからな」
「えー?」
「あなたはいつだって無茶をしすぎる───!」
僕は真剣な顔をするゴドっちに肩をすくめながら、手元の槍をひとまずぶん投げた。
●
「そうだよ…私がママだよ…!」
「もしもしポリスメン?幼児誘拐して親だと吹き込む悪徳カップルが…」
「ちょ、待てよ!」
やることやって事が片付いた僕が目撃したのは、子が産めないなら子を奪えばいいじゃないみたいな発想をした山賊夫婦の姿だった。
なお、自分が何やったか言うとまたキリトが泣くと思ってる主人公はクラディールのことは伝えなかった模様。