変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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お久しぶりです。
仕事中に予約投稿してるので、対応は遅くなります。
あとキャラ崩壊多少してます。
今さらですけど。


認知して♡の巻。

 

 

時は僕が二人を通報する2日前に遡る。

まぁもっとも、通報先なんてこの世界には存在しないわけだが。

自治組織はあっても公権力はない。

法律も倫理もなく、あるのは各々の良識から導き出される暗黙のルールのみ。

よくここまで平穏な世界で落ち着いているなぁというのが、僕の感想だった。

 

───敵対者というか、邪魔者はお前がぶっ殺しただろ、と言われたら反論の余地はないわけだけど。

 

でも僕思うんだ。

相手がこの世界の仕組みを利用して悪意を振りかざし人を殺すのなら、僕がこの世界の仕組みを利用して彼らを排除することのなんの問題があろうか。

いや、ない。

ついでに倫理観もない。

 

たぶん僕、茅場の次にこのゲームで人を殺してんじゃなかろうか。

キルスコアおよそ50。

でも茅場のキルスコア、最初の一ヶ月でおよそ1()5()0()0()には遠く及ばない。

茅場さんマジぱねーす。

 

僕が最初の一ヶ月、思いつきのイベントで根性ナシ共の目眩ましをしていたおかげで自殺者が少しは減ったであろうことを考えると、何もしなければ2000人くらいいってたんじゃないだろうか。

つまり僕は500人の命を救ったわけで、50人の悪人殺してもお釣りが来る。

つまり僕は450人を救った英雄。

対して茅場はたぶん1000人くらい殺してる悪人。

なんだよ僕のが優秀じゃん。

茅場とか雑魚だよ雑魚!

 

「その倫理観/ゼロなゴミ計算式は今すぐ破棄したほうが良いんじゃないかな」

 

「やっぱそう思う?人殺してそれの正当化とか見苦しいよな。きしょすぎ」

 

「いやそこまで言ってないが…。あと、2日前まで遡るって話はどうなったんだい?」

 

「そうは言うけどさ、僕だって混乱してるんだぜ。年下の幼馴染がたった2日の間になんか結婚してるし、子作りしてるし…僕が人殺してる間に何があったっていうんだよ!」

 

「君、向こう帰って大丈夫かい?現実で生きてける?」

 

「大丈夫大丈夫。平気だって安心しなよ!」

 

「………」

 

「そもそも16年くらい向こうで過ごしてなんもないんだし、ちょっとは信用してほしい」

 

「このおよそ1年半足らずは僕の人生で最も長い1年半だよ。前までの人生を全て合算しても足りないくらいに」

 

「わかる。超楽しいよな。めっちゃ充実してる」

 

「分かり合えないの極地だよね君」

 

「失礼しちゃうぜ。それに」

 

僕は、NPCの持ってきた味の薄いカフェラテを一息に飲み干すと目の前の人物に向かって顎をしゃくる。

 

「僕が初日にあんたをイベントフラグ探しに巻き込まなかったら奥さん殺してそうなやつに言われてもな…」

 

「とんでもない風評被害がきたね」

 

「ついでに圏内殺人とかに巻き込まれてそう」

 

「ああ、聞いてるよ。件の幼馴染くんが解決したっていうあの事件だろう?」

 

圏内殺人事件。

それはラフコフが引き起こしたチンケな一幕だ。

アイテムの破損演出と死亡演出が同一であることを利用して、まるで圏内で殺人が起こったかのように振る舞い、圏内を安全圏ではないと誤認させ、人々を恐怖のずんどこに陥れ、都市機能を麻痺させ、必要にかられた低レベルプレイヤーを殺しの標的にしようとした事件。

 

え、お前ら正気か?ついに本格的に頭おかしくなった?みたいな感想になった事件なわけだが、思い返すとこれはプーによる試験だったんだろう。

 

ラフコフ討伐の際に、明らかに攻略組を躊躇らわせるためだけに用意された殺人者の卵(グリーン)たち。

そんな入団希望者たちの殺人に対するモチベーションを図るための試験。

 

人を殺す機会を与えたら本当に殺すのか、みたいな。

殺そうとしたところで止めて、意思確認の出来た潜在的オレンジプレイヤーとして正式に引き入れる、みたいな思惑だったに違いない。

本当に殺すのはどうせ既にラフコフに入ってる誰かの予定だったのだろう。

必要なのはグリーンの殺人者なわけだから。

 

結果としてキリトに事前に暴かれた上に、討伐戦で僕とヒースクリフがむしろ積極的にグリーン狩りに行ってたせいで無駄だったわけだけど。

 

なんで僕が人殺したいバカに優しくしなきゃいけねーんだよ。

そんなに命を奪いたいなら僕が奪ってやるっての。

 

『お前、イカれてるよ』

 

『うんち!(3人まとめて串刺しにしながら)』

 

なんか殺人ギルドのトップにドン引きされたのだけ解せないけども。

 

「君、捕まってないだけの犯罪者だよね」

 

「そうだよ?」

 

「自覚がある化物…」

 

「うるせーな。まじで大好きな奥さんに振られてろおっさん」

 

「ひどいな…」

 

つくづく失礼な人だ。

どうせ僕がやりがい与えてなきゃ戦ってる奥さん見て劣等感と喪失感で狂ってただろお前。

しらんけど。

ムカついた僕は、マダオ改め、グリムロックのうざったいサングラスを破壊してから、おかわりを注文するのだった。

 

 

 

 

 

さて、いい加減話を戻そう。

ついでに場所も変えよう。

今僕はマダオを奥さんに預けて、再びキリトたちの家に来ていた。

 

「つーか僕になんの用?」

 

「あなたに興味があったのと、お礼です」

 

興味ね。

AIがいったいなんのようだ?と思わないでもないけど、その前に。

 

「あのさ…後ろでソワソワすんの止めてくれない?」

 

「うちの娘になんかしたらただじゃおかねーからな」

 

「そうですよ!許しませんからね長ネギ丸さん!」

 

「たった2日で親気取り?」

 

僕はさっきから背後でくまのように行ったり来たりする二人に向かって、呆れたようなため息を吐く。

なんだコイツら。

お前らが僕に用があるっていって呼び出したんだろ。

 

「大丈夫ですパパ、ママ。この人は何も考えてません」

 

「何も考えてないは言いすぎだろ!考えてないけど!」

 

で。

メンタルヘルスカウンセリングプログラム試作1号またの名をMHCP001。

コードネームユイ。

その幼女はキリトと閃光さんに向かってそう名乗ったらしい。

ついでにあなたたちをママとパパと呼んでもいいですか、とも。

 

「取り入る気まんまんじゃん」

 

「違うんですよ。パパとママが子どもが欲しいと思いながら『自主規制』したり『自主規制』して『自主規制』したので…AIとしてお望みを叶えてあげようと思って…」

 

「うわぁ…キリトってばそういう趣味?」

 

「おおおおおお俺達ちょっと出てるから!な、アスナ!」

 

「うううううん、キリトくん!そうだね!お邪魔かもね!うん!」

 

しらっとした目線を向ける僕と幼女を前に取り乱した二人は、顔を真赤にして部屋を飛び出すのだった。

 

 

 

 

改めて、静かになった部屋。

眼の前に座る少女は、長い艶のある黒髪に端正な顔立ちのせいで、僕のトラウマを若干刺激するが今は無視する。

 

話を聞けば、彼女はしばらく監禁されていたらしい。

そのうえで、メンタル介護AIとして本来の役割を奪われ、モニタリングだけを繰り返していた。

そして絶望やら挫折やら嫉妬やら殺意といった感情で溢れる世界にうまれた互いを思いやる愛に反応してこちらに飛び出してきたのだとか。

幸いなことに、いつからかわからないが、拘束もゆるくなっていたから、権限こそ失ったものの記憶は維持できたと嬉しそうにはにかんでいた。

 

いい話風だけど僕はもっと気になることがあった。

グリムロック夫婦は互いを思いやる判定には引っかからなかったんだな…。

さすがマダオ。

 

「結局僕への興味って?」

 

「ああ!」

 

「それってハネクリボー?じゃないのよ」

 

「あなたのお陰で陰鬱な空気がだいぶ薄れました。モニタリングしてる身として、負担がかなり軽くなったことに感謝しないとな、と」

 

「へぇ」

 

「同時にあなたがクエストをすごい勢いで消化していくせいでカーディナルが悲鳴を上げて、私にもクエスト作りの仕事が回ってくるようになりました…」

 

「カーディナルくん雑魚か?」

 

「あなたが人海戦術で1日で千個のクエストを同時進行一週間チャレンジとかしなければよかったんですけどね!終わらない仕事…増えるミス…チェック項目の増加…求められる独創性と新しい展開…。私の楽しみは仕事終わりにカップルの破局を見るという暗い趣味になりました…」

 

「なぁんだやっぱカーディナル故障してんじゃん!あとそれ僕のせいじゃねーよ!AIが責任転嫁すんな!」

 

「いいえ、あなたのせいです。責任取ってください」

 

「僕責任って言葉この世で一番嫌い」

 

「認知してください」

 

「や、だから」

 

「認知」

 

「あの…」

 

「認知」

 

「詰みセーブならぬ罪セーブかこれ」

 

「認知して、責任取ってください!───クソダンジョンの!」

 

根負けした僕は、一階層に生まれた新ダンジョンをクリアすることでカーディナルのミスを隠蔽する仕事を引き受け。

 

「ああああ!レベル設定間違えやがったなクソAI!」

 

「ふむ、悪くない」

 

「だぁくそ!やってやる!むしろおもしれえじゃねえかこの野郎!僕ワクワクすっぞ!」

 

「まぁ、私と君がいてクリアできないボスもいないだろう」

 

「ああもう…かかってこいやぁぁぁああ!」

 

3日かけてクリアするのだった。

なお、ユイさんは普通にキリトのナーヴギアに自身のデータをしっかり移してからカーディナルの下へと帰っていくのだった。

 

「なぁ、ヒースクリフ」

 

「なんだね」

 

「茅場も子育てする気になったってことなのかな」

 

「いつか君も言っていただろう?生み出した人間には生み出した責任があると。彼もまた、責任を果たしただけだろうさ」

 

「…お前まだあのうんこ味の見た目チョコソフトクリームのこと根に持ってんの?でもあれだぜ。あの結果になったのは僕のせいだけど、生み出したのはお前だぜ?」

 

「料理スキル無しで作れる超絶美味スイーツを教えてやるとか言ってなかったか?詐欺師め」

 

「…はぁ。やれやれまったく、天下の血盟騎士団の団長が八つ当たりなんて見下げ果てたなぁ!?」

 

「言っておくがね、この怒りは八つ当たりではなく正当な怒りだ」

 

「あとさぁ、あの姿のAIなのってさ茅場の趣味なのかな」

 

「………」

 

「意外と好きな人との娘とか妄想して作られてたりしてな」

 

「………」

 

「あれ、そうなると茅場は自分の娘に離縁されてよその家の子になる!って言われたわけで…泣いてんのかなぁどっかで」

 

「長ネギ丸くん」

 

「なんだよ」

 

「飲もうか」

 

「………いいね!」

 

 

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