変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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とあるシーンが思いついたので書いてみました。
ALО編です。


不思議の国の妖精さんの巻。

 

『続いてのニュースです。先日逮捕された須郷伸之氏が未成年の女性に対して結婚を迫っていた事実が判明し…』

『解散したレクトプログレスに関しての続報です───』

 

電車に揺られながら、イヤホンから流れてくるニュースに僕は辟易としていた。

僕がやらかしたことで割と当事者とはいえ、同じニュースばっかり聞きたいわけじゃない。

 

やれ300人を監禁した極悪人、とか。

やれ監禁した人間で人体実験をしていた、とか。

やれ高校生にナイフを向けて普通に返り討ちにあった、とか。

 

知らんがな、そんな話。

なんかないの他に。

総理大臣がジェットパック背負って宇宙まで飛びましたくらいのインパクトくれよ。

それか犠牲者2500人出したゲームが発売されましたとかでもいい。

 

「はーぁ、現実に帰ってきたってのに思ったより退屈でシラケるなぁ」

 

帰ってきて、リハビリして。

高校の時の後輩に誘われてゲームをしたらこれである。

 

なんもしてないのに、ゲームが壊れた。

もっと言うとゲームを運営していた会社が壊れた。

 

「なんでやろうなぁ」

 

世間は今、アルヴヘイム・オンラインというゲームの末路に関して賑わっている。

ついでに言うなら、VRゲームというジャンルの趨勢についても。

 

理由は僕のせい…なのかなぁ。

微妙なところだ。

 

…電車がトンネルに入り、ぼけっとした自分の顔が窓に映る。

金髪ロングに青い瞳。

SAОでは愛用装備のふんどしに見せ筋がつく効果があったおかげで盛れていたが、元が華奢な身体が雑に着たTシャツの襟から見えていた。

ともすればキリトより女の子に間違えられる顔に書かれた文字は退屈の二文字。

 

…コナン映画みたくどっか爆発でもしないかな。

 

「君大丈夫かい?何か悩みあるなら聞くけど…?」

 

「ナンパ?宗教勧誘なら逆に許すよ」

 

「許すんだ…じゃなくて、顔に『退屈』って物理的に書いてあるのはそれ自分の意思?それならあんまり何も言わないけど…」

 

「あーこれ?流行りのデジタルタトゥーってやつだよ似合ってる?お任せで入れてみたんだよね」

 

「顔に直で書いてあるのはデジタルじゃないし似合ってもないかな…あとタトゥーはお任せで絶対やっちゃだめだと思うなおじさん」

 

「そっかぁ…」

 

僕はタオルを鞄から出して顔に押し付け、何度か力を込めて擦り付けて、それをぽいっと話しかけてきた見知らぬおじさんの手元に投げ捨てた。

 

「これでよし」

 

「何もよくないよ?一昔前のガングロギャルみたいになってるからね?」

 

にしても閃光さんっておじさん受けいいんだなぁ。

クラディールとか、須郷とか。

どいつもこいつも現代版カリオストロ伯爵かよ。

それとも世の中ロリコンばっかなんだろうか。

 

「はっ、まさかおじさんも…?」

 

「よく分からないけど風評被害はやめようね」

 

 

 

 

アルヴヘイム・オンライン。

それは、僕らがSAОを楽しく遊んでる間に発売されたファンタジーゲームのことだ。

 

ナーヴギアをより安全にしたらしいアムスフィアで遊べるそのゲームは、どスキル性でPVP推奨。

プレイヤースキルがあってなんぼというハードさでありながら、空を飛べるという一点だけで広く愛されているらしい。

SAО解決前なのによく売れたなと思う反面、やっぱみんな好きなんすねぇという喜びもある。

 

世界観と言うかぶっちゃけ敵の挙動とかAIのクセみたいなところではSAОとあまり変わらないが、あの世界にはなかった魔法という要素はなかなかに面白かった。

 

まぁそれもこれも、僕が飛行高度を稼ぐ実験として8人のプレイヤー雇って飛翔型ムカデ人間号を発進させたせいで全部ぐちゃぐちゃになるんですけどね、初見さん。

 

ALОに割とよくいる飛行モブの首に縄を縛り付けて高度を稼ぎ、そこから多段ロケット方式で飛ぶという方法で普通に枝のすぐそばまでたどり着いた僕が見たのは鳥籠に囚われた閃光さん。

あとそれにセクハラする王様みたいな見た目のキャラ。

 

僕は善良な市民として、めちゃめちゃ人殺しをしてるのに社会へと解き放ってくれた政府関係者と警察に通報。

 

同時にリハビリ中のキリトをALОへ招集したのだった。

 

で。

 

「俺だよ……ユイ。解るか……?」

 

「また、会えましたね、パパ」

 

ナビゲーションピクシーとやらになったいつぞやのAI幼女とキリトの感動的な再会が僕の目の前で行われていた。

 

「「………………………」」

 

…ふむ、困った。

めんどくさいし飛ぶべ、と転移してまず目に入ったのがこのお涙頂戴シーンだったせいで、ぶっちゃけ気まずい。

 

どうする?

お前がいけよ…。

そんな目配せをもう一人の協力者としているうちに説明が終わったのか、AI幼女が変身する。

 

身長は十センチほどだろうか。

ライトマゼンタの、花びらをかたどったミニのワンピースから細い手足が伸びている。

背中には半透明の翅が二枚。

まさに妖精と言うべき姿だ。

顔はそのまんま。

 

「おお……」

 

「くすぐったいですー」

 

「十二時十一分。現行犯逮捕。ロリコン罪で死刑だおらぁ!」

 

そんな女児をニヤけ面で弄ぶ黒い羽虫に向かって、僕は初期装備の槍を振り下ろした。

 

これは別に所構わず女とイチャイチャするキリトへの嫉妬ではない。

それだけははっきりしていた。

あと僕からキリトへの殺意もはっきりくっきりしていた。

 

「長ネギ丸!なんでここに!?」

 

「あぁん!?なんだてめぇー!むしろなんで初期リスポーン地点にいねーんだてめえは!おかげで無駄にテレポートする羽目になっただろうがああん!?」

 

「それは俺も知らないんだって!ちょ、あぶな!今死んだら俺のリスポーンってどこになんの!?」

 

「うるせー!知らねー!とりあえずいっぺん殺させろや!あといつまでリハビリダラダラしてんだ!海に行く約束はどうなった?もうすぐ秋になるぞコラ!僕は1日で終わったってのに!」

 

「むしろリハビリのコツは呼吸から歩行、心臓の動きまで全部マニュアル操作に切り替えることだぜ、とか言っちゃう化け物みたいなゲーム脳野郎がおかしいだけだろ!……つーかテレポート!?普通にチートじゃねえか!」

 

それはそう。

当たり前のように不意打ちを躱したものの、怒涛の連撃で追い詰められたキリトの頭を踏みつけながら、僕はそのからくりを説明するべく懐に手を入れる。

 

「なんだよ、羨ましいなら僕のナビゲーションピクシーと交換する?」

 

「…お前もナビゲーションピクシーがいるのか…いや、待て!嫌な予感が…!」

 

「待たない」

 

僕はそのまま、懐にしまい込んでいた『ソレ』を外の世界へと解き放った。

 

「ナビゲーションピクシー…ヒースクリフだ。よろしく頼む」

 

「……………………(絶句)」

 

身長は十センチほどだろうか。

ライトマゼンタの、花びらをかたどったミニのワンピースから細い手足が伸びている。

背中には半透明の翅が二枚。

まさに妖精と言うべき姿だ。

顔はそのまんま。

 

 

そのまんまヒースクリフだ。

 

 

グレーの髪に、眉間にシワの寄った老け顔の男性の顔が、女児の身体の上に乗っている絵面ははっきり言って地獄絵図。

 

「だははは!だははははは!!!ひーっ↑ヒースクリフお前最高かよ!」

 

「ふっ、どうやらキリトくんは私の姿に見惚れてしまったらしい。さすが私だな」

 

うわっ…僕のナビゲーションピクシー…グロすぎ…?

妖精姿がよく似合っているAI幼女とのコントラストが凄まじい。

悪い意味で。

 

「ちょ、ぶはっ!おいヒースクリフ、そこのAI幼女とそのドヤ顔のまま並んでくれない!?」

 

「こうか?」

 

「パパ…なんだか私頭がおかしくなってしまったみたいです…」

 

「ダーハッハッハッハッハ!!死ぬ!笑い死ぬ!妖精サイズなのに顔だけ老けてるのやっぱずるいって!!!あとなにそのピチピチワンピース!対魔忍か!?雑コラじゃんもう!電マ切嗣みたいな見た目してるよお前!最高!今年のM−1で優勝できるってこのコンビ!!」

 

「ヴォエ!」

 

 

さて。

なんでヒースクリフがこんなキリトが絶句した挙句吐くような格好をしてるか。

 

それは、SAОから全員ログアウトさせることを約束したのに解放直前で一部のプレイヤーが監禁されたかららしい。

死んでも死にきれなかったというか、化けて出たというか。

 

化け物になったっていうか…(目そらし)。

 

もう人間としての茅場晶彦は死んでいるらしいので、その真面目さには本当に頭が下がる。

なんか人としての尊厳も死んでる気がするけど。

 

ヒースクリフは、僕が帰還後にリハビリをこなしていた頃から少しずつ証拠を集めていたらしい。

そして、そんなALОに僕が当たり前のようにログインしてきて、なんの説明もしてないのに世界樹の秘密にたどり着いたことから僕の前に現れる決意をしたんだとか。

 

『久しぶりだな、長ネギ丸くん…いや、初めましてというべきかな?今更のこのこと出てきたところで君の友人だと言うつもりはないが…もし、赦されるなら───』

 

『お、ヒースクリフじゃん久しぶりぶりうんちぶり!』

 

『軽くない?』

 

『ちんちんぶりのほうがよかった?』

 

『そうだな…(諦め)』

 

『あとでデュエルしようぜデュエル!魔法縛りな!』

 

『ふっ、君は変わらないな…』

 

感動の再会とかは別になかった。

 

とはいえいくら義憤に駆られようが、GMとして責任感があろうが、プレイヤーとして振る舞うのはさすがに憚られたのだろう。

結果として、プレイヤーよりはサポートに回るべきと判断したヒースクリフは、ナビゲーションピクシーになったというわけだ。

 

なんだろう。

まさに頭のいいバカの結論って感じで最高だった。

とはいえ誰だって新生活になると浮かれるもの。

一人暮らし初日にチーズケーキ作ってみたり、高校デビューしたり。

 

そういうのが茅場にとってはこの『ナビゲーションピクシーヒースクリフ』だったのだろう。

 

知らんけど。

 

とりあえずというかなんというか。

こうしてSAО最強の剣士コンビとGM権限持ちのチート妖精、元カーディナルのAIの妖精、野生のゴリラを加えて僕たちは世界樹に向かって飛び始めた。

 

悪魔の行進が始まった、と言ってもいい。

 

 

「誰がゴリラよ誰が!」

 

「いた、いたたた!お尻が割れる!やめろぉ!仮にも幼馴染の尻を割ろうとするんじゃない!襲われてたところ助けてあげたのに!」

 

 

現実からは政府と警察、あとそっからさらに連絡が来た閃光さんのご両親。

ゲーム内からは僕たち妖精おじさん部隊。

 

 

つまり、ハサミ討ちの形になるな…。

 

 

ぶっちゃけ僕はほぼ無関係だし会ったこともないからよく知らないけど、須郷ってやつにはご愁傷さまって言っておくぜ。

 

会えたら殺すけど(純粋な目)。

 

 

 




今回も最後まで読んでくださってありがとうございました!
感想とかたくさんください!!(乞食)
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