前回はたくさん感想とここすきを恵んでくださりありがとうございました。
熱は微熱なうちに休むのが一番いいんだなと拗らせてから反省してます。
どういう理屈か人をゲーム内から殺せるデスガンの持つ拳銃がトラウマを刺激し、シノンは怯え、震えている。
長ネギ丸と親しげなキリトに、長ネギ丸のようになるにはどうしたらいいか。
そんな風に聞いても、キリトはただ首を横に振るだけ。
「俺もシノンも…あいつにはなれないよ」
「じゃあ、私はどうしたらいいって言うの!?誰がこんな、血塗られた手を…!」
「───いいいいいいいいいいいいいいいやっほおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
そんなシノンの迫真の慟哭の続きは、しかしそれを上回る声量のうきうきな声にかき消された。
「デスガンくぅんつーかーまーえーたぁ!レッツパーティタァイム!?あ、イッちゃってる(芸人ネタ)。ポケモンの捕まえ方は知ってるかーい?瀕死になるまで追い込んでぇ!麻痺に毒に睡眠することさ!どれがお好みかなぁ!かなぁ!?」
「ぐぉ、く、くるし…」
「きゃぁ!?」
恐る恐る外を覗けば、キリトとシノンが身を隠す洞窟に気付かなかった長ネギ丸がロボットホースの上で楽しそうに笑っているのが見えた。
「な、何よあれ…」
「うわぁ、あいつ絶対最近マッドマックス見ただろ…」
「クソったれ!」
「いいえええええええええい!!!FOOOOOOOOOO!!」
火炎放射器が夜空を焼き、バカが爆音のエレキギターをかき鳴らしている。
馬が足踏みする度に太鼓のような音が鳴り、最高にテンションがおかしい光景が出来上がっていた。
そして、その馬から伸びる紐に先ほどまで2人の恐怖の象徴だったはずのデスガンが括られてるのを見て目が点になった。
括られてるというか、鼻フックで引きずり回されていた。
「おおっとデスガン選手、まずは市中引き回しの刑スタイルでの登場だぁぁああ!鼻フックされて馬に振り回される姿はあまりにも無様だ!この光景は見覚えがありますねぇ解説の長ネギ丸さん!」
「くそ!」
「ええ!あれはゼクシード氏も以前されていたことは記憶に新しいですね!しかしながらゼクシード氏は鼻フックされるまでに長ネギ丸さんのHPを2割削れてますし…不意打ちを躱されて一方的にボコられて今の姿にされているデスガン選手はゼクシード氏よりも無様と言えるでしょうね!なんてことだ!もう助からないぞ!デスガン!なんでそんなに弱い!?くそ、今日もデスガンが弱すぎるぜ!なんだよそんなお尻振っちゃって。誘ってんの?気持ちわりいな。死ねよ」
「ぐ、くそ…!」
「さぁぁあ!どうだ!?ここで長ネギ丸選手が取り出したのはなんだあああ!服だけ溶かす液体だ!なんてことだぁぁああ!エッチな展開か!?やはりエッチな展開なのか!?」
なんで自分で自分の行動を実況してるんだろう。
そう思うシノンだったが、もはや状況は長ネギ丸が完全に支配していたと言ってもいい。
支配していたというか。
全員がもはや理解を諦めていたと言うか。
テンションが激ヤバで見なかったことにしたいというか、シームレスにキャラが入れ替わる長ネギ丸に全員が恐怖を覚えていたというか。
ドン引きする周りを置き去りにしながら、ちゃぷちゃぷと試験管のようなものを手のなかで弄ぶ長ネギ丸は、地面に転がされたデスガンの鼻先でニヤリと笑う。
「くっ…もう殺せ!」
「おっと、デスガンが急に姫騎士みたいなこと言うから手が滑ってしまったああ!」
「いやあああああ!」
そして、薬液をぶっかけられ、絹を裂くような声を上げながらマスク以外全裸になるデスガン。
文字通り全裸だ。
ゲームによくある装備を全てなくしてもインナーだけは着てる、みたいな展開ではない。
普通にちんちんが丸出しだった。
顔だけいかついマスクなのが逆に情けない。
もはや真面目な空気はどこにもなかった。
あー私が悩んでたのってなんだったんだろ、みたいなやるせない気持ちになるシノンをよそに、いるのはただ、恐怖の象徴ではなくなった、このあと垢バン確定の犯罪者とそれを前にして火炎放射器を空に向けてぶっ放すイカれ野郎だけ。
「あーもうめちゃくちゃだよ!誰だこいつのテンションとブレーキをぶち壊した奴は!」
「ださあああい!説明不要!世界よ!これがデスガンの姿だ!もう二度と恐怖の象徴になれないねぇ!?生き恥スギィ!もう散体しろ!観客のみんなみってるうううう!?これからデスガンくんの処刑はじめちゃいまーす☆」
キリトが頭を抱え、その声にようやく隠れ場所に気付いたのか長ネギ丸がシノン達の方に顔を向けた。
「お、なんだよキリトじゃん大会楽しんでる?僕はさっき闇風ってやつと最高に熱いバトルを繰り広げてテンション爆上がってるぜ。そうだ!お前もザザちん…いや、ザザちんちんで遊んでく?」
「なんで言い直した?つーか名前はそれで確定なのかよ…」
「あ、こいつの名前?そりゃもう、ヒスクリに普通にデータ漁らせたからぱーぺきよ」
「なんかそれミステリー物なら普通にずるじゃない?」
「お前現実の殺人事件のことミステリーとか言っちゃうのやべーよ…反省しな?」
「ちが、そりゃ言葉の綾で!なんか釈然としなかったからとっさに出ただけっていうか!」
「あや?誰よその女」
「お前それでよく大学受かったよな!?」
「どんだけバカでゲームに没頭してても普通にやってりゃ試験で躓く方が難しいだろ*1。やだねー現実逃避にゲームやって現実疎かにするやつ。逃げた先で努力すらできないならもう何もできないだろフニャチン*2」
…うん。
罪に苛まれる良心が自分にあって良かったな、とシノンは思った。
あと何処かでクラスメートが血を吐いたような気がした。
「人の弱さに寄り添えないカス野郎が…!」
「人殺しを神聖化してる厨二病患者に言われたくねーな。ゲームと現実ごっちゃにすんなよ。現実で自認剣士のやつとか頭おかしいだけだからな?病気っていうんだぜそういうの」
「俺の方見ていうんじゃねえよ!!」
あえてデスガンがより傷つくような言葉を選んでいるのだろう。
その言葉の節々から、いかに彼がラフコフという存在が嫌いなのかが伝わってくる。
その巻き添えでキリトが崩れ落ちるが、基本的に誰よりも悪い意味で人の弱さに寄り添えるタイプの男は、凄惨な笑みを浮かべてデスガンを見下ろした。
「ま、いいや。えー、今からぁ!ザザちんのちんちん耐久ゲームをします!」
「ちんちん耐久ゲーム…?」
「僕は今からお前のちんちんを蹴る。それはもうめっちゃ蹴る」
「───は?」
本気で意味がわからない、という声で困惑するデスガンを差し置いて、長ネギ丸は話を続ける。
「良かったねSAОじゃなくて。死ななくて良かったねぇ?自分だけは安全圏にいる人殺しは楽しかった?アインクラッドじゃ大したことできなかったもんなお前。プーの金魚の糞がよ。お前は人殺しが好きなんじゃない。単に自分より弱いやつをいたぶるしかできないただの弱虫くんなんだよ。まったく、人を殺すなら自分も殺されるつもりで来いよ!バッカだなぁ!」
命かけてなくない?Wow Wow!と
小刻みなステップで煽り散らす長ネギ丸にため息をついてから、キリトはシノンの方へと向き直った。
「な?こいつはこういうやつだから…強さとかじゃなくて。あんま参考にしちゃだめなやつだから」
「参考?あー?あれか、シノンさんが人殺しだからどうのって話またしてんの?いやーすみません。僕ってばただの殺人鬼なの」
「ただの殺人鬼なんて、あのゲームにいた全員が思ってないけどな」
実際そうなのだろう。
彼がしたことは間違いなく殺人だ。
死ぬとわかってその剣を振り下ろしたのだろう。
だが、それによって果たして何人の人が救われたのか。
さらにいうのなら、あの茅場晶彦を殺してゲームから全てを解放したという彼は、何千人の命を救ったことになるのだろう。
殺人者の功罪。
その観点で言うなら、彼は間違いなく英雄だった。
まぁ今のデスガンのむき出しのちんちんを何度も執拗に蹴り上げてる長ネギ丸の姿は普通にDQNとかヤクザとか、反社会勢力って感じだったけど。
「がっ!ぎゃっ!ぐわぁ!死ぬぅ!」
「ま、そんなに心も手も冷たくなるほど怖いなら思い出すがいいさ。あんたよりも最低な殺人者なのにゲームを楽しんでる化け物がいたことを」
「せぁああ!ふぅん!あひぃ!ふいっっち(落下ボイス)!く、くそ…!」
「なんか今リンクいなかった?」
「……………………」
どうしよう。
格ゲーのダメージボイスみたいな声がずっと聞こえてくるせいで全然話が入ってこない。
「あとは、そうさな───助けた人の顔でも思い出したら?1人殺しても1人助けたなら、少なくとも許されていいと思うよ僕は」
「…待て、その理論ならお前も許されるだろ」
「何言ってんだよ大量殺人が許されていいわけないだろ。頭ファンタジーか?幼稚園児からやり直して道徳の教科書丸暗記してこいよてめー。ぶっ殺すぞ」
「秒で台無しにする天才じゃんお前…さっきまでのくだりってなんだったの?」
「ただの雑談だけど…あ、ザザちんちん死んだ。根性ねーなぁ…これだからラフコフはダメなんだよ。だから滅びた」
「だから滅びた構文最近ハマってんの?」
「ああ。だから滅びた」
「うるせぇなぁ…」
デスガン事件が嵐のような勢いで一先ずの終結となり、シノンがほっと胸を撫で下ろしたその直後。
「死ねオラァ!!!!」
「やると思ってたよバーカ!!」
───後に、『いや違うゲームでやれよ』というツッコミで溢れることになるその最終ラウンドの殺し合いは、何の合図もなく始まった。
今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
なんか熱が見せる夢みたいな文章になってる気がします。
あまりにも酷かったらいつか手直しするかもしれません。
でもとりあえずいっぱい感想とここすきください。
そしておやすみなさい。