変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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ちょお待ってんかPONPON。
本日4話目。


初めてのボス攻略の巻。

 

 

あの茅場晶彦の現実からのグッバイ宣言があった日から1ヶ月。

SAOでは1500人近くのプレイヤーの死亡が確認されていた。

 

そんな状況であってもバカは一定数いるのが世の常だ。

自分が救世主になれると勘違いしたバカや、あるいはただの命知らずなバカたちが今、攻略会議としてトールバーナの街に集まっていた。

 

「おっはーキリト。久しぶり!」

 

「…ああ一ヶ月ぶりだな」

 

なぜか疲れた様子のキリトを不思議に思いつつも、僕はその横に腰を掛ける。

 

「どう?SAO楽しんでる?」

 

「はぁ…お前、よく平気だよなこんなゲームで。噂になってるぞ、頭のおかしいやつがいるって」

 

「何かしたっけ」

 

僕はここ1ヶ月のことを改めて振り替える。

すべてが始まったあの日、キリトは先へ行き、クラインは仲間を探しにいったが、僕はキリトともクラインとも別れた。

始まりの町でやり残したことがあったからだ。

 

「ああそうだな。そんで、その後どうした?」

 

「とりあえず始まりの街のクエストを全部受けて、存在するあらゆるアイテムを全NPCに与えてイベントが発生しないかチェックして回って…」

 

そう。

僕はこれでも働いていたのだ。

戦わなくてもいい効率のいいコルの稼ぎかたとか、安くアイテムを手にいれる方法とか。

それを逐一、話しかけてきたネズミ風の自称お姉さんに売り渡してたから、それなりの稼ぎになった。

小金を稼いでいたとはいえお礼を言われることはあっても、誰かに文句を言われるようなことはないはずだ。

 

「その後だよその後」

 

「その後?」

 

その後は確か、街に引きこもっている大人をしばき回して地面を素手で掘り返す作業に従事させたり、野球チームを作ってソードスキルでボールを撃って投げる変則野球を遊んだり、始まりの街のすぐ外にいるモンスターを使って競馬をして一儲けしたりと、色々やっていた。

 

「頭おかしいだろ!」

 

「そうかなぁ?」

 

しっかりレベルも上がったし、自殺者を減少させるのに役に立ってたりするんだけど。

たぶん。

 

「さっきから聞いていたら、あなたふざけてるの?SAOが楽しい?あり得ないわ」

 

と、そんな会話をしていたらフードを被った女性が話しかけてきた。

誰だこいつ、という態度を隠そうともしない僕に、思わず話しかけてきた側の女性の顔が引きつる。

 

「いやいや、真面目でしょ。僕はこのゲームでできることを一つ一つ試していってるだけだし。戦うだけの脳筋と一緒にされたくないね」

 

「本音は?」

 

「こんな神ゲー楽しまないなんて損でしょ!って、あ、キリトめよくも!」

 

キリトの合いの手で思わず漏れた本音に、僕のことを見下げ果てたクソカスかのように見てくる女の人をなだめすかしているうちに会議は始まった。

 

「だいたいね…!」

 

「ちょお待ってんか!」

 

「ちっ、うっせーな。反省してまぁーす!」

 

「煽んな!」

 

「この中に詫び入れなあかんやつが───」

 

「ちょっとあなたどきなさい!なぐ、殴れないでしょ!」

 

「どうどうどう落ち着けって!」

 

「ウケる。上げるべきは知能ステでは?おっと、残念。SAОにはないか!はは!」

 

「きいーっ!」

 

「おいお前らええ度胸やな!ベータテスターとか関係なしに詫び入れろや!」

 

ちなみに説得の決め手は、僕が発見した誰でも使える経験値効率のいい狩り場を情報屋を通じて公表したという話だった。

この女、強くなれるならなんでもいいらしい。

絶対脳筋だろこいつ、と僕は思った。

思っただけで口には出さなかったけど。

 

───ちなみにもちろん僕だって人死にが出る部分に肯定的なわけではない。

ただ、デスゲームであることを差し引いてもSAOは神ゲーだと思っているだけで。

 

むしろ残念で仕方がないと思ってすらいた。

これほどの神ゲーだというのに、オワタ式な上に、PVPを実質的に禁止などというくそみたいな縛りプレイを強要されるのが。

 

このゲームをフルで遊ぶのに、死んだら駄目はキツすぎる。

もったいない。

ああ本当にもったいない。

 

僕は、変な髪型のやつとか、痛々しい青いやつの話を聞き流しながら茅場晶彦へのDMを作り上げるのだった。

 

 

『ファッキュー今頃連日報道されている世界で今一番ホットな犯罪者様へ。

 

せっかくの神ゲーなのに縛りプレイを強制されるのがくそだと思います。

デストラップにわざと引っ掛かったり、PVPしたりしたいです。

間抜けを背中から崖に蹴落として思いっきりバカにしたりもしたいです。

あと僕の輝かしい大学生活を返せ。

くたばれ。ばーか。』

 

 

 

 

 

そんなこんなで迎えたボス攻略。

ボス攻略会議がぐだぐだしていたせいで不安だが、まぁどうにかなるだろうと僕は楽観していた。

戦いは数だよ兄貴!という言葉にあるとおり、囲んでボコせばボスも倒せるだろう。

その間に何人死ぬかは知らないが、そこは自己責任。

僕も死んだら死んだだ。

 

そんなことよりもあの会議の後、宿にボッチプレイヤーの女性をキリトが連れ込むのを見送って、僕は一人で自分の寝床に帰ったことの方が問題だ。

 

「……で……するから…よう…」

 

「わか……それで…」

 

「ああ…だから…って…」

 

何であいつはあんなにモテるんだ。

やはり顔か?

顔なのか?

 

いいなぁー!僕もかわいい彼女とかほしいなぁー!

ただし重かったり、元カレがちらつく相手はNGでお願いします。

 

そこまで考えて、僕はふと不安に襲われる。

…僕の身体、清いままだよね。

動けないのはいいことに、あのイカレ女に好き勝手されてないだろうな…。

いやいや。

僕の身体はきっと然るべき医療機関に保護されて、万全な体制で守られているはずだ。

頼むぜ母さん…。

僕は脳内から黒髪のギター女を追い出すと、新たな出会いをゲットするべく決意を新たにしたところで。

 

「…おい…おいってば!聞いてたか?今のはなし」

 

キリトに肩を揺さぶられたことで現実に戻ってきた。

 

「ああうん、聞いてた聞いてた。あのマキバオーってやつがムカつくから闇討ちしにいく話でしょ?」

 

「しねぇよ!あとキバオーな?馬じゃねえんだわ」

 

「私達は取り巻きの処理を任された。だからスイッチしながら安全にいこうって話をしてたのよ…少しは真剣に攻略したら?」

 

「へいへい…」

 

「返事ははい、でしょ」

 

「母親か?」

 

「母ちゃん…僕よりレベルが低いなら黙ってろよ」

 

「斬れたナイフみたいな反抗期!いやアスナもくっ、一理あるわねみたいな顔しなくていいから!ぐぬぬッてる必要はないから!」

 

そんな緩い空気でも途中までは順調だった。

取り巻きを僕らが処理して、本体をメインパーティたちが殴る。

ボスのHPバーが減る。

 

そんなありふれたゲームの風景は、ボスのHPがいい感じに減った次の瞬間に終わりを告げた。

 

 

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