変態バケツエンジョイ勢。   作:ひつまぶし太郎

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サンタクロースの正体はお父さんという話。
このまま中身ないまま駆け抜けます。
よろしくお願いします。


怪奇!血染めのサンタクロース!の巻。

 

 

闇を貫く《ヴォーパルストライク》の血色の閃光が、大型の昆虫モンスター二匹のHPを同時にゼロにした。

ポリゴンが散り、その会心の一撃にニヒルに笑うキリトの眼前を今度は僕の槍が通過し、宙を閃いて数メートルほど先にいた大きなアリを破壊する。

 

「おい」

 

「ああ待って。わかる。次キリトが言いたいこと、めっちゃわかる。当ててみせようか?…ナイスパーティープレイ、だな(声真似)」

 

「ペラペラな連帯感やめろ。危ねえしちげえよ!」

 

「つまりパンティープレイってことか」

 

「適当かつ意味わかんねえことほざきやがってこいつほんと!」

 

「お~いお前ら、じゃれるのはいいけどそろそろ時間だぞ!」

 

僕らは現在、46階層の人気経験値稼ぎスポットに来ていた。

狩りの相手は攻撃力は高いが体力も防御力も低いタイプのモンスターで、最前線に近いこともあってとても効率がいい。

効率が良すぎて時間制限が設けられるほど、と言えばどれほど人気か伝わるだろうか。

視界の左端に表示されたタイマーが59分を回っている。

 

よく知る声に反応して、慌てて入口の方を振り向けば、あくしろよ、と言わんばかりに苛立ちを隠そうともしない次のギルドが顔をのぞかせていた。

 

「やべ」

 

「キリトのせいだから!僕のせいじゃないから!」

 

「いいから!今誰が悪いとかいいからはよ戻るぞ!」

 

「…?んん?おお!すげえ!見て見て、なんか乗れた!うひょー!皆殺しだ!アリの助、お前はアインクラッドの柱なんやで!」

 

「なにやってんの!?」

 

「いい加減にしろやぁ!」

 

「あ、アリの丸ー!…あ、間違えたアリの助〜!ちくしょおおおお!」

 

結局、アリの首を無理矢理振り回すことで何匹かモンスターを狩って遊んでいたら、痺れを切らした次のパーティの人たちがアリの助を殺してしまった。

あのあと再現できるか何度かやってみたけど無理だったので、泡沫の奇跡だったのだろう。

アリ太郎…惜しいやつをなくしたぜ…。

 

 

 

 

次のギルドこと、風林火山。

その頭であるクラインに、僕ら二人は説教されていた。

 

「ったくよぉ、仲いいのはいいけど、危なっかしいんだよお前ら」

 

「「大丈夫大丈夫」」

 

「軽すぎる…」

 

「まぁもうすぐクリスマスだし多少の無茶はしないとなぁ…」

 

「お前らが無茶すると一緒に組むオレ等も焦るんだがなァ」

 

現在クリスマスまであと5日。

アインクラッドでは今、とある大物フラグモブの話題で持ちきりだった。

 

フラグモブ。

クエストの攻略キーとなっているモンスターのことで、極稀に一度しか倒す機会のない準ボスモンスターのようなものも存在する。

そして、そういうモンスターは強敵だが報酬は大変美味しく、それが年1という頻度ともなれば、どれほどの報酬があるのやら。

目の色を変えて各ギルドが戦力の増強と情報収集に勤しんでいた。

 

ヒイラギの月──つまり十二月の二十四日夜二十四時ちょうど、どこかの森にある樅の巨木の下に、《背教者ニコラス》なる伝説の怪物が出現する。もし倒すことができれば、怪物が背中に担いだ大袋の中にたっぷりと詰まった財宝が手に入るだろう──。

そして、《ニコラスの大袋の中には、命尽きた者の魂を呼び戻す神器さえもが隠されている》。

 

なんとも魅力的な謳い文句だ。

そして、そんな謳い文句につられて、あるいは折角のイベントなんだしと参加を決めた僕とキリトは、クラインに誘われてこのイベントに殴り込みをかけると決めていた。

15名によるレイドなら、勝算も十分ある。

 

「ようはクリスマスだよ!ボッチで暇なやつ全員集合!みたいな話だよね」

 

「お前、ゲーマーになんか恨みでもあんの?親でも殺された?」

 

「ないけど。ていうか僕も恋人いないしなぁ。どこぞのモテる誰かさんと違ってフラグもないし!僕の恋愛フラグモブどこだよ!どいつ殺せば可愛くて性格良くて身長高い彼女貰えんだろうねぇ!ほんと!」

 

「そんな物騒な経緯で彼女欲しいか?」

 

「おいおいおいおい!…おい!聞いたかクライン!そして見ろよこの余裕の面を!」

 

「流石だぜ…」

 

「お前レベルになると向こうからフラグはやってくるもんな!こんなんチートやチーターや!略してビーターや!」

 

「罵倒が強引!」

 

そして、クリスマス当日。

キリトの予想と実地調査によって導き出された樅の木の手前。

そこでリーダーのクラインがいつぞやのディアベルみたいな感じで声を張り上げた。

 

「よォしお前ら!いつも通りコルは分配!蘇生アイテムとかそういうのは、ドロップさせた奴の物で恨みっこ無し!いいな!」

 

「あたぼーよ!」

 

「やるぞやるぞやるぞやるぞ!」

 

「ふぅー!今夜はチキンパーティっしょぉー!いえーい!」

 

ちなみに、僕たちのあとをつけてくるような誰かはいない。

なんせ前日に迷いの森に入って、全員で冬キャンしてたし。

町中待機してる奴らに遅れを取るような僕らではないのだ。

 

「…なぁ。なんかお前だけなんかモチベーションおかしくない?」

 

「いいんだよ別に。僕は楽しけりゃなんでも。ていうかサンタかぁ。ゲロカスなギミックボスだったりしないかなぁ」

 

「やめろよ変なこと言うの!」

 

「メインの攻撃が落下死だったりして!苗床的な!」

 

「あってたまるかそんなクソゲー」

 

「それかサンタクロースだけに三択形式のアインクラッド横断ウルトラクイズ」

 

「楽しいか?それ」

 

「運動不足のキリトが必死こいて走ってるの見て僕が楽しむ」

 

「よーし、ボス前の肩慣らしでデュエルしようぜ!ボコボコにしてやるよ!」

 

「えー…今ちょっと手持ちにカードとかないんで…この拾った1枚しかなくて…」

 

「そっちじゃねーよっていうか、なんでそんなん落ちてんの?」

 

「ちょ、人造人間サイコ・ショッカーじゃねえか完成度たけえなおい!」

 

「…なんだろう。クラインにそんなつもりはないんだろうけど極めて雑で低品質なパロディを見た気持ち」

 

「?」

 

「…しょうがない。順序が逆になるけどここは僕のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲 を出すしかないか…」

 

「その爪楊枝しまえよ」

 

《背教者ニコラス》。

一応人間型だが身長が僕らの3倍近く高く、腕も異常に長い。

前屈みの姿勢なせいで腕がほとんど地面に擦りそうだ。

せり出した額の下の暗闇で、小さな赤い眼が輝き、顔の下半分からは捻じれた灰色のひげが長く伸びて下腹部まで届いている。

赤と白の上着に同色の三角帽子をかぶり、右手に返り血のついた斧、左手に血が滲み出ている大きな頭陀袋をぶら下げているグロテスクなそのボスは、僕が登場シーンに爆音で東京音頭を流したせいで、威厳もへったくりもなかったし、すぐ死ぬし。

期待外れだったな…。

 

とはいえ、報酬はたしかに潤沢で、僕らのテンションはちょっとしたお祭り騒ぎになった。

まぁ、蘇生アイテムは死亡後十秒以内に使わないと意味がない、といううん、なんだろう。

やったねキリトくん!今後一人だけ命のストックができたよ!お前のじゃないけどな!

みたいな便利なんだか、役に立たないんだかよくわからないアイテムだった。

 

基本ソロで動き回る俺には無用なんだけど誰か交換してくれない?と、頭を抱えるキリトを尻目に、新しい刀やら防具、今のキリトのそれよりも強い片手剣を手にしてはしゃぐ僕らは特に耳を貸すことはなく。

 

「それじゃあ心を込めて歌います」

 

「やめろ長ネギ丸、離せ!耳元で男の歌を聞かされるとかどんな罰ゲームだ!」

 

「赤鼻のトナカイ(ねっとり囁きボイス)」

 

「キモいキモいキモいキモい!」

 

打ち上げを兼ねたクリスマスパーティでやったすごろくでボロカスに負けた(下から2番目)キリト(最下位)に、苦い思い出を残してクリスマスの夜は過ぎていった。

 

 

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