獣人さんの頭を撫でたいってそりゃ......ねぇ?

もう助からないゾ♡

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犬の獣人さんの頭をなでなでして尻尾ブンブンさせたい

数年前にこの世界と魔界を繋ぐゲートが誕生してから、日常は大きく変化した。魔界からは淫魔や奉仕族、その他大勢の種族たちが登場し、瞬く間に日常へと浸透していった。そんな世界で、僕はやりたいことがあったんだ。

 

「犬の獣人さんの頭をなでなでして尻尾ブンブンさせたい」

 

確かに、淫魔さんも奉仕族さんも魅力的な人ばかりだ。だけど僕はどうしても、頭を撫でて尻尾をフリフリさせる獣人さんを見てみたかった。だから僕は探した、撫でる方法を。だが、そう簡単にいく話ではない。そもそも、そんな獣人さんが見つからない。

 

だけど、遂に出会えたんだ。雪のように真っ白な髪をして、その眼光は見る者を凍り付かせると錯覚するほど鋭く、何も聞き漏らさない三角に立った耳、決して媚びないと言わんばかりの顔をした犬人族のアクトゥスさんに。

 

 

 


 

 

 

彼女との出会いは、数か月前に遡る。あれは、僕が魔族学校に始めて登校した日のことだった。勝手が分からない校舎で、彼女たちに合わせた作りになっているため兎に角広い、そんな場所で慌てふためいていた僕を助けてくれたのが彼女だった。といっても、彼女は助けたと自覚していないかもしれない。僕は視界の端を歩いていた彼女の背を追いかけていただけなのだ。

 

だけど、勘違いしないでほしい。別に見た目ドストライクの彼女が歩いていたかといってストーカーしたとかそういう話ではない。ただ直感が彼女について行けと囁いたんだ。だから、そう、決してストーカーではない、確かに腰まで届く白い髪と対極的な黒い制服に身を包まれた彼女の歩く姿は正に幻想的であって、魅力あふれるその肢体と、実りに実った健康と豊かさの象徴が揺れ動くさまはこの世の美を象ったなんてちんけな言葉では言い表せないほど美しかったけど、決してストーカーした訳ではない。信じて欲しい。

 

それはともかく

 

僕は彼女の後ろをついていくことで自分の教室に着くことが出来た。教室に着くまでの道中、彼女は別に何もしてこず、何も話しかけられなかったので、多分バレていない。教室に入ると、一部の魔族さんたちの視線が集まったが、すぐに逸らされた。ちょっとだけ傷ついたのは秘密だ。

 

教室で座っていると教師と思われる魔族さんが入ってきた。彼女が言うには、今年入った人間は三人だけらしく、驚愕に打ちひしがれたことをよく覚えている。だって、その年に入学した人数は1003人だっていうのに、人間が三人しかいないのは、比率3対1000、頭を抱えたくなるのも仕方がない。でも僕は気を取り直した。なぜなら教室に彼女がいたからだ。

 

その日から、僕の努力は始まった。初日に話しかけたら「近づかないでもらえますか」なんて言われたけど、見た目通りの性格で、何もかもが僕のあれと合致していたから諦める事などなかった。二日目は「離れてください」、三日目は「いい加減にしてください」だったりで散々な結果に終わったけど、根気強く話しかけていたら諦めたのか「物好きな人ですね」と言われて友達になることが出来た。

 

友達になって、色んな場所でご飯を食べたり、魔界に連れて行って貰えたりした。楽しかった。普段の僕ではいかない場所やいけない場所にもつれて行って貰った。何故か彼女は時折、僕の匂いを嗅いでいたけど、臭かったのかな。そう思うと胸が苦しくなってくる。今度謝った方がいいよね。

 

まぁ、友達として色々なことをしてきた。けれど、彼女は頭を撫でさせてくれることは無かった。なんでも、頭を撫でさせるのは自分が認めた者じゃないといけないらしい。どうしたら認めてくれる?と聞いたこともあったけど、彼女は答えてくれなかった。今思えば、何故彼女はそっぽを向いていたのだろう、それに拳も握りこんでいたし。

 

そんな楽しい日々を送っていたけど、ある日些細なことがきっかけで喧嘩をしてしまった。本当に些細なことだったけれど、僕は彼女と少しの間距離を取ることにしたんだ。一度頭を冷やした方が、どちらに対しても良いことだと思ったから。だけど、良いことなのは僕らだけではなかったらしい。

 

 

 


 

 

 

彼女と喧嘩して何日か経った時、クラスメイトの淫魔さんから呼び出された。なんだろうと考えながら教室に入ると、ムワッとした匂いが鼻孔の奥を刺激した。何事かと思って教室を見渡すと、そこには三人の淫魔さんがこちらに対して、餌にかかった魚に向けるような目をしていたんだ。

 

どことなく不味い雰囲気を感じた僕は、すぐに教室を出ようと思って振り向いたけど、そこにはもう一人の淫魔さんが隠れていて、後ろ手に鍵を閉められた。つまり僕は、四人の淫魔さんたちに閉じ込められてしまったのだ。

 

唖然としていると、いつの間にか淫魔さんたちに囲まれていた。前も後ろも、右も左も、その豊満な雌の身体からは雄を刺激する濃厚なフェロモンが漂い、脳を揺らす。逃げようと手を前に出すも、淫魔さんによって手を取られ、胸に押し付けられてしまう。思わぬ柔らかい感触に、僕は声を上げてしまった。

 

「人間きゅんはかわいいねぇ♡」

「もっと触ってもいいんだよぉ♡」

「男の子なのに女の子みたいな声あげちゃうんだぁ♡」

「かっこいいとこみたいなぁ♡」

 

一人ひとりが、四方向から雄を刺激する。前の淫魔は僕の両腕を掴み、胸をこねくり回せる。左右の淫魔は耳に近づき囁く。慣れない感覚に足が竦んで倒れこみそうになるが、後ろの淫魔がそれを許さない。柔らかな塊を押し付けて。

 

「喧嘩したんだっけぇ?可哀そうにねぇ♡」

「私たちが慰めてあげるよぉ♡」

「大丈夫♡内緒にしておいてあげるから♡」

「気持ちよくなっちゃおうよ♡」

 

なんで知っているの、という疑問よりも早く淫魔の囁きが僕を刺激し、初めての感覚に体が震える。そうなれば、自ずと下腹部にも血が集まって行く。それを彼女たちが見逃すはずもなく、捕食者が如き顔を浮かべた。このまま行けば、僕の貞操はここで果てることになるだろう。

 

そんな時に頭に浮かんだのはアクトゥスの姿だった。もしここで流されてしまえば、彼女を失望させてしまうかもしれない。そう考えると、口から拒絶の言葉が発せられていた。しかし、彼女たちからしてみれば、もはやそれは場を盛り上げるスパイスでしかなかった。

 

左右の淫魔が僕を動けないように腕を胸に挟み、その間に前後の淫魔が協力してズボンを脱がせようとする。僕は助けてと叫んだが、ここは封鎖された密室であり、声は外には届かない。

 

 

 

はずだった


 

 

 

突如として窓ガラスが破られ、勢いよく教室に飛び込んできたのはアクトゥス本人だった。普段は白い髪をたなびかせ、常に変わることの無い表情は、今は激情にかられ、牙をむき出しにし、聞いたこともない低い声で唸る。そこにいたのは「僕」に見せる優しきアクトゥスではなく、主人を守るために飛び出した猟犬(ハウンド)であった。

 

 

主を襲われし猟犬は龍すら屠る、努々忘るることなかれ

 

淫魔に相対するは主を襲われし犬人族、己が全てを擲ってでも主を守ろうとする種族である。

 

 

そのあまりの形相に淫魔たちは一瞬たじろいでしまうが、眼前に立ち塞がるはたかが獣人一匹、対してこちらは魔法を使える淫魔四人、数でも魔法でもどちらが有利かは一目瞭然。すぐそこにある極上の人間をみすみす逃してたまるものかと奮起し、淫魔は邪魔な獣を排除しようと行動した。

 

しかし、彼女たちは失念していたのだ。そこにいたのがただの獣ではない、主を襲われし猟犬だったと。

 

目にも止まらぬ速さでアクトゥスは淫魔の意識を刈り取っていく。一人、また一人と。最後に残された淫魔はせめてチューだけでもと思ったが時すでに遅し。そばにいた人間は消えており、見渡すと猟犬が抱えていた。そして、彼女によって意識を刈り取られる直前、淫魔が思ったことは「あんなに近くで羨まs」

 

踵落としが直撃(クリーンヒット)した。

 

 


 

 

僕はアクトゥスさんに抱きかかえられるような形で、俗にいうお姫様抱っこをされていた。アクトゥスさんは助けるのが遅くなったと言って謝ってきたけど、僕は気にしないでと伝えた。助けに来てくれて嬉しいと、それでも悲しそうな顔をするアクトゥスさんに思わず、僕は手を伸ばしていた。そうして手を置いた場所は、彼女の頭の上だった。意図せずして、僕は彼女をなでなでしてしまったのだ。

 

彼女は茫然とした顔で僕を見つめる。僕はハッとした顔ですぐに手を引っ込め、すぐに謝るが、彼女は何の反応も示してはくれなかった。怒られると思い、ぎゅっと目を瞑るが何も起こらない。恐る恐る目を開けると、彼女の目の色が変わっていた。まるであの場にいた淫魔たちのように。

 

「怒りました。もう完全に怒りました。覚悟しておいてくださいね。絶対に絶対に今日は寝かせません。家にも帰しません。私だってずっと我慢していたんですよ。あんなにあんなに挑発されて、けれども手を出さないように必死に必死に我慢して、だというのにあのクソどもが貴方を襲おうとしていると知って、貴方を探したら呼び出されてるとかなんとか、必死に校舎を駆け巡って探していたら、貴方の声が聞こえて、入ったら襲われていて、クソどもをぶっ飛ばした後あなたを見たら、淫魔の影響で蕩けていて、でもここで襲ったら嫌われてしまうかもと思って我慢して、だというのに貴方はそんな顔をして頭を撫でて、知っていますか?いいえ、知らないでしょうね。獣人の、ましてや犬人族の頭を撫でるという行為は、自分が上だと示すのと同時に、求婚でもあるんですよ。本当はもう少し時間をかけてからするはずでしたけど、もう我慢できません。許しません。責任取ってくださいね。絶対に貴方の子供を産んでやります。10人以上は作りますから。私をこんな女にしたのは一体だれか、その身に叩き込んであげます。」

 

 

『え?え?あの、ちょっと待って、知らなかったんです。そんな意味があっただなんて、確かに僕は頭撫でたいとか尻尾フリフリさせたいとか思ってましたけど、そんな意味で言ってはないっていうか、あ!いいや別に貴方と付き合いたくないってわけではなくて、ただその、突然すぎるというかなんていうか......』

 

 

「あーもう許しません。初めは三日だけのつもりでしたけど、もう許しません。一週間に延長します。覚悟してくださいね絶対に。あと尻尾をフリフリさせたいとか言ってましたけど、それって基本的に番の前でしかやらない行為ですから、犬人族においては。」

 

『え?たまにフリフリしてましたけど?』

 

「......」

 

『あの、なんか言って貰えますk』

 

「うるさいです。静かにしてください。」

 

雪のような白い髪とは対照的に、彼女の顔は真っ赤に染まっていた。




アクトゥスさんイライラメーター(10を超えたら絶対逃がさないだよ!)

後をつける・・・0.5
話しかける・・・5
拒絶しても話しかける・・・120
友達になる・・・200
頭撫でたいとか言う・・・5000
淫魔に襲われてる中で自分に助けを求める・・・12000
頭撫でる・・・87371

よく我慢できたねアクトゥスさん!偉い!

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