気が付いたら森の中に立っていた。
「ここがドワーフ鉱山?」
全くチリがわからない私が3人に聞くと、デュース君がうなずいてくれる。
「一昔前は魔法石の採掘で栄えていたらしい。」
「今では見る影もない、って感じかな。」
あたりに人の気配は全くない。木の葉がすれる音もなく、静寂がその場を支配していた。
「やっぱり閉鎖された鉱山ってことは幽霊が出るのかな?」
西部の金鉱山を頭に浮かべながらそんなことを呟くと、グリムがびくっと体を震わせる。
「ふなっ!?ユウ、そんな怖いこと言うんじゃないゾ!」
やはりグリムはお化けが怖いらしい。昨日の一件で克服できたわけではなかったようだ。
「あ、奥の方に家がある。話聞きに行ってみようぜ。」
あたりを見渡していたエース君が少し離れた場所にある家を見つけた。
私たちはそこへ向かうことにした。
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「おじゃましまーす……。」
確認してみると家は空き家だった。荒れ放題で蜘蛛の巣も張っていた。
「なんか机とか椅子とか全部小さくねぇ?子供用かな?椅子なんて7個あるぞ!多くないか!?」
エース君が机に手を突きながらそうつぶやく。
机が小さい?椅子が7個?それってまさか、
「まさか、7人の小人の家?」
確かに映画『白雪姫』に登場する小人の家は森の中にある。そして、彼らは鉱山で宝石を掘ることを生業としていたはずだ。
「だとしたら、ここは白雪姫の世界になるのか……?それにしては不気味すぎるというか……。映画に出てくる森は動物たちもたくさん暮らす明るい場所だったと思うんだけど。」
「何ぶつぶつ呟いてるんだゾ?」
グリムが私の様子を不審に思いそう聞いてくる。
いや、石像の時にこの世界は何かが違っていると学んだばかりだ。あまりそれにとらわれ過ぎない方がいいかもしれない。
「あ、ああ。ごめん。なんでもないんだ。ここに情報はなさそうだし、鉱山に入ってみる?」
なんでもないと告げ、3人に判断を仰ぐ。
「確かにそうだな。とりあえず、行ってみよーぜ。」
エース君たちの同意を得て、空き家を離れて鉱山に入ることにした。
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鉱山の入口は空き家に負けず劣らず荒れていた。ツタが伸び放題でレールが整備されているような形跡もない。何より、明かりは一つたりとも灯っていなかった。
「この真っ暗な中に入るのか!?」
グリムが心配そうに坑道を覗き込む。
それを見たエース君がニヤッと笑みを浮かべる。
「ビビってんのかよ。だっせー。」
「なぬっ!ビ、ビビってなんかねーんだぞ。オレ様が隊長だぞ!ついてくるんだぞ!」
グリムは、エース君に煽られるとそういい放ちずんずんと中に入っていく。
坑道は長く続いていた。歩いているさなか、エース君が私に質問を投げかけてくる。
「そういえばさ、ユウ。お前なんで学園長のことを、校長先生って言ってるんだ?」
質問は校長先生の呼び方についてだった。
「なんでかと言われると……、先生が自分のこと校長だって自己紹介してたからかな。あと、学園長っていうより校長先生っていう方が呼びなれているからかな。もしかして、学園長のほうが一般的?」
「だいたいの人がそう呼んでると思うぜ。」
エース君によれば、新入生から先輩まで、ほとんどの人がクロウリー先生のことを学園長と呼んでいるらしい。
前の世界では学校のトップと言えば校長先生だったから、そんなことは気にもしていなかった。
「ふーん。じゃあ、今後は学園長って呼ぶようにしようかな。」
最悪の場合二度と使わないかもしれない知識だな、とそんなことが脳内をちらついたがそれを口に出すことはなかった。
それを口にしてしまえばみんなの士気が下がるのは想像に難くなかった。
「あ、そうだ。私からも一つ質問していい?」
「ああ。いいぜ。」
良い機会だと私もエース君に質問を返すことにした。
「ずっと気になっていたんだけど、二人が持ってるそのステッキって学生さんはみんな持ってるの?」
そう言って、エース君が持つステッキを指さす。すると、エース君は大層驚いた表情でこちらを見つめる。話を聞いていたデュース君もぎょっとした表情でこちらを見てきた。
「お前、マジカルペンも知らねえの?信じられないぐらいなんも知らないんだな。」
「ペン?」
どうやらステッキだと思っていたものは「マジックペン」というらしい。確かにステッキというには小さすぎるかなとは思っていたのだけれども。
「そう。勉強の時にはペンとして使うけど、魔法を使うときの道具としても使える優れもの。ナイトレイブンカレッジの生徒には一人一つ支給されている。」
なんというか、学校らしいアイテムだなと思った。学生の本分である勉強を象徴するペンを魔法の道具として使うなんて素敵なアイデアだ。
「待て!」
他にもデュース君が大釜を召喚するのが得意だとか、私とエース君で雑談をしていると、先行していたデュース君が注意を促してくる。
「ヒーッヒッヒ!10年ぶりのお客様だあ!」
そこにはゴーストがいた。寮にいたゴーストはシルクハットを被っていたが、こちらはフード付きのマントを羽織っていた。
「みんなどうする?戦う?」
戦闘能力のない私は、皆に判断を仰ぐ。
「いや、俺たちにそんな時間はない。ここは逃げて撒こう」
デュース君がそう言ったのを合図に、私たちは一目散に駆け出して行った。
もろもろ
ネタのメモ
「やっぱり閉鎖された鉱山ってことは幽霊が出るのかな?」
ディズニーランドのアトラクション「ビッグサンダーマウンテン」より
ビッグサンダーマウンテンは西部開拓時代に栄えた金鉱山が舞台です。
その鉱山が閉鎖された後無人の機関車が暴走したりと幽霊騒ぎが起こるようになる、というストーリーがあります。