4人で坑道を走り抜ける。
しかし、少し進む度に違うゴーストに見つかってしまう。
どうやらこの坑道全体がゴーストの巣窟となっているらしかった。
「いちいち構っていたらキリがない。先を急ぐぞ。」
デュース君がリーダーシップを発揮して指示を出してくれる。
が、エース君はそれが気に入らないようだった。
「偉そうに命令しないでほしーんだけど。大体、お前があんな馬鹿な真似をしなきゃこんなことにならなかったのに。」
「もとはといえばお前が掃除をさぼったのが原因だろう!」
「それを言ったら、最初にハートの女王の像を燃やしたのはそこの毛玉だぜ。」
「オマエがオレ様をバカにしたから悪いんだゾ!」
一瞬で三人の会話がヒートアップする。また喧嘩が始まりそうな勢いだ。
「三人とも落ち着いて。今そんなことを話してもしょうがないでしょう?魔法石を手に入れてからまたその話をしよう?ね?」
エース君とデュース君の間に割り込んで話を止めさせる。
「あ、ああ。そうだな。間に合わなかったら退学になるんだから、こんなことを話してる場合じゃないな。」
デュース君が神妙な顔をして頷いてくれる。落ち着いてよかったとほっとしているとエース君がいらいらした様子で呟く。
「なんで魔法も使えない癖に仕切ってるんだよ。俺たちがいなきゃ何もできない癖に。」
さっきまで雑談をしていたから認めてもらえてたのかな、と思っていたがそれは幻想だったらしかった。
いくらお話ししようが、私は魔法が使えない人間。対等ではありえない存在だった。
「私が魔法を使えないから、だよ。3人が魔法を使ってくれなきゃ何もできないんだから、3人を目的に向かって誘導させようとするのは当然でしょう?さっきも言ったけど、時間があまりないんだから喧嘩しないで先に進もう?」
しかし、それだけで引き下がっている場合ではない。鉱山に入るころには既に日が落ちており、もはや時間を無駄にする余裕はなかった。私がどうにかエース君説得しようとしたとき、坑道の奥から低くうめくような声が聞こえてきた。
「こ、この声……は?」
「なんか、いかにもやばそうだゾ……。」
何を言っているのかは聞き取れない。しかし、確実に声が大きくなっている。
「どんどん近づいてきてる!」
じっと近づいてくる何かを待ち構えていると、やがて奥から何かが現れた。
「イジハ……オデノモノダアアアアオオオオ!!!」
現れたのは右手にランタンを、左手にツルハシを持った大きな怪物だった。
しかも怪物の頭があるべき場所には割れたインク瓶のようなものがあった。
中には黒いインクが入っており、割れ目から外に零れ落ちていた。
「「「で、でたああああ!!!!」」」
「これはやばそう!みんな逃げよう!!!!」
突如現れた、明らかにゴーストとは毛色の違う怪物。
その異常さに私たちは圧倒されていた。
即座に来た道を引き返すが、怪物は私たちのことを追いかけてきていた。
「なんだあのやばいの!」
「あんなのがいるなんて聞いてないんだゾ!」
グリムは完全に戦意を喪失しているようだった。しかし、確かにあれを相手に戦って無事でいられるとはとても思えなかった。
「でもアイツ石がどうとか言ってなかった?」
エース君がふと立ち止まってそうつぶやく。
「確かに、『石は俺のものだ』って言ってた気がする。」
私がそう答えると、追い付いてきた怪物が叫び声をあげる。
「イジ…イシ、ハ……ワダサヌ………!!!」
「おお、『石は渡さぬ』と。確かに石に言及してる。」
どうやら怪物は石を守っているようだった。そして、ここはドワーフ鉱山。つまり…
「あいつは魔法石を守っている。まだここには魔法石が存在する!?」
「でも、オレ様たちじゃあんなのに勝てっこねえんだゾ!」
デュース君ははっと気が付く。しかし、グリムが慌てて首を振る。強気なグリムをしてここまで弱気にさせるほど、目の前の怪物はプレッシャーを放っていた。
「だが、魔法石を持ち帰れなければ退学……。僕は行く!」
そう言ってデュース君は怪物の方に足を向ける。
「いや、無茶だ!危険すぎる!」
「冗談でしょ!?」
私とエース君が止めようとするが、デュース君の決意は変わらないようだった。
「俺は、学園を退学させられるわけにはいかないんだ!」
デュース君がそう叫び、そのまま私たちはなし崩しで戦闘に入るのだった。