エース君とグリムと合流して4人横並びで元居た場所へと走る。
しかし、ふと後ろを振り向いたエース君が何かを見てぎょっとして叫ぶ。
「なっマジかよ!?アイツ追いかけてきてるぞ!しかもなんか足速くね!?」
「これじゃあ追い付かれちまうゾ!」
私も思わず後ろを振り向くと、怪物は大釜を押しのけてこちらの方に走ってきていた。
俊敏な印象こそないものの、図体が大きいせいで今にも私たちに追いつきそうだった。
追い付かれれば我々が無事では済まない。しかしながら、先の作戦でみんなの魔法はあの怪物に効いている。
それならば、
「あいつを倒すしかない。もう一度力を合わせて魔法を打ち込むんだ!」
そう私が叫ぶと3人はバッと後ろを振り向き、怪物に対峙する。
「あーっ、もぉ!やったろーじゃん!」
「オイ、ユウ!どうすればいいんだゾ!?」
怪物は目前まで迫っていた。戦いが始まれば相談はできない。手短に済ませなければこちらがどんどん不利になる。
「グリムとエース君はさっきの合わせ攻撃を繰り返すんだ。ただし、デュース君か私を攻撃しようとしているときだけ。自分が狙われているときは逃げることを最優先。
で、デュース君はさっきの大釜攻撃でアイツの気をひく。いかにも頭が弱点っぽいからそこをめがけて打つんだ。それでデュース君のことをねらい始めたらやっぱり逃げることを優先するんだ。
わかった?」
新しい作戦を考える時間はない。ならばさっきやったことと同じことを繰り返すようにするしかない。
ただし先ほどと違い攻撃を受けるリスクが高い。だから、狙われてない方が攻撃をすることを繰り返して体力を削る。
それを伝えて、私は囮になるべく3人から離れたほうに駆け出そうとする。
その時、エース君が私の肩をつかんで止めてくる。
「了解。でも、ユウが囮になるのは駄目だ。」
「え?」
「お前が怪物の近くにいると、安心して魔法を打てない。オレ達だったら自衛できるかもしれないけど、ユウは魔法が使えないだろ。邪魔になるからいない方がいい。」
エース君は真剣な表情で私にそう言う。確かに、自分が魔法を食らう可能性を全く考えていなかった。
「……わかった。みんなのこと、信じてるよ。」
私はエース君を見つめて頷き、一人怪物から距離をって木の陰に隠れた。
既に怪物は目の前に迫ってきていた。
いよいよ、最終決戦が始まる。
~~~~~~~~~~~
そこからの戦いは、圧巻の一言だった。
私には文字通り介入の余地がなく、3人が力を合わせて怪物を圧倒していた。
デュース君が気を引いたら炎をまとった風を浴びせかける。
エース君たちに気が向いている間にデュース君が大釜をぶつけまくる。
たったこれだけで怪物を完封することができていた。
そしてやがて怪物は地面に倒れこんで動かなくなった。
「やった……のか……?」
「勝った……!オレ様達が勝ったんだゾ!」
「よっしゃあ!」
3人も怪物を倒せたことに喜びを隠せていなかった。
あのデュース君すらも雄たけびを上げて喜んでいた。
「勝利のハイタッチなんだゾ!」
グリムはぴょんぴょんと飛び跳ねながらそう言うと、戦っていた三人できれいなハイタッチをする。
「「「イエーイッ!」」」
皆輝くような笑みを浮かべていた。
「みんな本当にすごいよ!それに、なんだかんだ言って仲良くなっちゃって。それも含めて完璧、って感じかな?」
私はそう言って3人の方へ歩み寄っていく。
「ち、違う。別にこれはそういうんじゃない!」
「そーそー!変なこと言わないでくれない?」
「オレ様が天才だから勝てたんだぞ!」
3人は私の「仲良くなった」というセリフを聞いて口々に否定する。
でも、私にはさっきの笑顔が嘘には見えなかった。だから、みんな照れ隠しなんだと思う。
「えぇ、みんな否定するの早いね……。まあ、魔法石は手に入った。目的は達成だね。みんなのおかげだよ。さあ、帰ろう。日が昇る前に魔法石を届けなきゃ。」
私は魔法石を達成感と、目標達成まであと少しという思いから学校への道を歩み始める。
すると、うしろからデュース君が声をかけてくる。
「……、いや。これはユウのおかげだよ。ユウの作戦が無ければ俺たちは魔法石を手に入れることも、戦って勝つこともできなかった。」
「そう……かな?でもほら、私魔法が使えないから。この勝ちはみんながいないと成り立たないよ。」
まさかまっすぐ私を褒めてくれると思っていなくて、思わず謙遜してしまう。
「ユウがいなかったら今頃オレは学校に帰って荷物をまとめてたね。正直怒鳴られたときはどうしてやろうかと思ったけど、ユウが言ったことは正しかった。迷惑をかけたまんま逃げるなんて、スゲーダサいよ。だから、ありがとう。」
「こちらこそ、ひどいことを言ってごめんなさい。カッとなって言いすぎちゃった。」
今度はエース君が私に言葉をかけてくれる。
今思うと、本当にエース君にはひどいことを言ってしまった。
「オレ様は……」
最後はグリム。私の方をじっと見つめて、
「腹が減ったゾ!」
と叫んだ。
エース君とデュース君はあきれた様子でグリムのことを見る。
「お前、今はユウにお礼を言う流れだろう……。」
「ハハハ……。まあ、グリムはマイペースなのがいいところだよね。」
とグリムを囲んでみんなで笑っていると、グリムが何かを見つけたようで地面から拾い上げた。
「これは……黒い石?」
「さっきのバケモノの残骸か?」
なるほど、頭から黒いインクが垂れていたことを考えると、いかにもあの怪物の残骸のように見える。
そういえば、地面に倒れていたはずの怪物は跡形もなく姿を消していた。
「みんなこれ何か知ってる?」
「魔法石か……?でもこんな石炭のような真っ黒なものは見たことがない。」
3人に聞いてみるとみな一様に首を横に振る。
先ほど手に入れた魔法石はきれいな光を放っていたが、こちらの意思は全く光を発していなかった。むしろすべての光を吸い込んでいるような気すらしてくる。
「クンクン……。なんだかこれ、すげーいいにおいがするんだゾ……」
黒い石を手にもっていたグリムが突然そんなことを言いだす。
「石なのに?本当?」
「うそだあ!?」
グリムの言動に驚いていると、グリムはそのまま黒い石を丸のみにしてしまう。
「ええ、石を食べた……。」
黒い石を食べたグリムはその場でしばらく目を閉じていたが、しばらくすると目を開きこぶしを突き上げて
「うんまあ~~~~~い!!」
と叫んだ。
余りにも予想外の反応にみんながびっくりしていると、グリムはそのまま石の食レポを始める。
「まったりしていてそれでいてコクがあり、香ばしさと甘さが舌の上で花開く……。まるでお口の中が花畑だゾ!」
「なんでそんなに事細かに説明できるの?ちょっとおいしそうに聞こえるし。」
「やめとけやめとけ、モンスターと俺たちの味覚は違うんだぞきっと。」
グリムがあまりにも丁寧に石の味を説明してくれるものだから、私は石に興味を持ってしまう。
それを慌ててエース君が止める。まあ仮に止めなかったとして石は既にグリムの胃の中なので、私が確かめる術はないのだが……。
「というか、ほとんどの人間は地面に落ちているものをそのまま口にしたりはしない。そこら辺の行動も含めてモンスター、という感じだな。」
デュース君は冷静に地面にあった石を拾って食べたことを突っ込んでいた。
たしかに、そんなことをしていたら味とか関係なく体調を崩してしまうかもしれない。
「まあ、グリムが大丈夫そうならいいか。それよりはやく学園長のところに魔法石を届けに行こう?」
「そうだな。」
そうして私達はドワーフ鉱山を離れ、ナイトレイブンカレッジへと帰還した。
戦闘描写苦手過ぎます!のでバッサリカットです。
プロローグもいよいよ終わりが見えてきましたね。