連れられてきたのは校舎から離れた位置にある廃墟だった。
扉こそ壊れていなかったものの、建物の中はクモの巣が張って荒れ放題だった。
「ここであればとりあえず雨風はしのげるはずです。」
校長先生はそう言って私を談話室らしき部屋まで案内した。
「確かに凌げはしそうですが……。」
「であれば問題はありませんね。私は調べものに戻りますので適当に過ごしていてください。学園内はうろうろしないように!では!」
余りの部屋の荒れっぷりに思わず文句を言いそうになったが、校長先生はそれを遮りさっさと部屋を出て行ってしまった。
どうやら今日はここで一夜を過ごすしかないらしい。
「部屋はたくさんありそうだけど、ほかの部屋もきっと同じ感じなんだろうな。仕方ないからまずこの部屋だけ掃除して座れるようにはしておこうか…。」
1時間ほどかけて掃除をしていた。部屋がそこそこ広いせいでこれでも全く掃除が終わる気配が見えなかった。
ふと、雨が窓をたたいていることに気が付いた。もしこのまま外に放り出されていたら雨にさらされていたと思うと、さすがに校長先生に感謝せざるを得ない。人の話を聞かないけど。
雨も降ってきたので今日は休むかと思っていたが、突然の来客がそれを妨げてくる。
「ぎえー!急にひでえ雨だゾ!」
「うわ、この声は……。」
現れたのはグリムだった。
「何微妙な顔をしてるんだゾ!」
「いや、まさかまたグリムを見ることになるとは…。外に追い出されたはずでは?」
そう、グリムは先ほど上級生の手によって捕獲されて外に追いやられていたはずである。
「俺様の手にかかればもう一度学校に忍び込むことぐらいチョロいチョロい。俺様が入学を諦めると思ったら大間違いだゾ!」
いったい何がここまで彼のことを駆り立てるのか、もはやそういうことを考えることが無粋なのかもしれない。
それにしても、そもそもこのグリムを学校が受け入れるなんてことはありえるのだろうか。
「学生は人間ばかりのように見えたけど、君みたいな獣?は入れるの?」
「獣じゃない!でもオレ様は魔法を使えるから大魔法士になれないわけがないゾ!ここは大魔法士を育てる学校、ならオレ様だって入れるはずだぞ!」
「うーん、確かに?そんな気もしてきた。」
まあ、文字通りの可能性の獣ということなのかもしれない。口に出したら怒られるのが目に見えるので言わないが。
それから、グリムはこの学校へのあこがれをつらつらと語りだした。私はその話を割と適当に聞き流していた。(基本的に自慢ベースで、あまり話が面白くないのだ。)
その話が突然中断される。
「つめてっ!天井から雨漏りしてやがるんだゾ!」
「あー、見るからに古い建物だし完全に無事というわけではなかったか……。窓が割れてなさそうなのは一通り確認したんだけど。」
なんせ、すべての場所に大量に埃が積もるような建物だ。雨漏りの一つや二うしていてもおかしくない。のだが……。
「なんかもう至る所から雨漏りしてるな?これはバケツを探してこないと……。」
そういって掃除道具を探しに行こうとすると、グリムが何やら得意げに語りだした。
「こんなのは、魔法でパパーっとなおしちまえばいいんだゾ。」
「魔法ねぇ。私は使えないんですよね。」
多分今後これを言い続けることになるんだろうな、と思いながら魔法が使えないことをグリムに伝える。そういえば、私が鏡に魔法が使えないと言われたのはグリムがつまみ出された後だった。
「オマエ魔法を使えねえのか!ププーッ!使えねえやつだゾ!」
「うるさいな。じゃあグリムは直せるの?」
「手伝えって?やなこった!オレ様は雨宿りしてるだけの
なんというか、いけ好かない獣である。根本的にウマが合わない気がする。
「宿賃がてら手伝ってくれてもいいじゃないか。自己中な奴だな……。まあ、やる気がないのはわかったからバケツを探してこよう。」
そういって私は建物の探索を開始した。
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談話室こそ明かりをつけていたが、廊下は全く手つかずのまま散らかり放題になっている。
「お化け屋敷だって言われても頷ける感じだなこりゃ……。早くバケツを見つけて戻ろう。」
早速捜索を開始しようと曲がり角を曲がったとき、目の前に何かがいることに気が付いた。
それは3人組で、シルクハットを被っていて、マントをつけていて、顔がというより肌全体が真っ白で、そして宙に浮いていた。
「イッヒヒヒヒ……。久しぶりのお客様だあ……。」
それはまるで、まるで
「うわああああああ!!!!お化けだあああああ!!!!!」
反射で大声で叫んでしまった。しかし、あまりに驚きすぎて腰が抜けてしまい私はその場から動けなくなってしまった。
「何大騒ぎしてるんだ?……いぎゃあああ!!!」
騒ぎを聞きつけてやってきたグリムもお化けを見つけると悲鳴を上げていた。
「俺たちずっと新しいゴースト仲間を探していたんだ。お前さん、どうだい?」
「ヒイッ!殺される!!グリム!!助けてよ!!」
自分の身の回りで唯一頼れそうだったグリムに助けを求める。もはやなりふり構っている余裕はなかった。今自分が頼れる唯一の魔法使いはこの小さな獣一匹だけだ。
グリムはお化けを目にして震えていたがやがて意を決して炎をあたりにまき散らし始める。
しかし、その炎は見当はずれのところに飛んでいく。グリムは炎を吐くときに目を瞑る癖があるようで、狙いを定め切れていないらしい。
「グリム!そのまま炎を出してたらこの建物が燃えちゃう!」
壁紙が焦げているのを見て思わず叫ぶ。しかし、グリムはそれが気に入らないようで
「うるせえ!オレに指図するんじゃねえゾ!」
と声を荒げる。
「でも、もしこの建物が燃え尽きたりでもしたら今度こそ校長先生にとどめを刺されるかもしれない。安全かつ確実に追い払わないと!」
ちょっと卑怯だが校長先生を引き合いに出してグリムに説得を試みる。
「とどめ!?たしかにそれはこまるんだゾ。でも、こいつら複数いて卑怯なんだゾ!オマエ!お化けがどこにいるかオレ様に教えるんだゾ!」
「頑張る!やってみよう。」
どうにかグリムを説得して協力体制を築いた私はじっとお化けたちを見据える。
これが私とグリムとの初めての戦いだった。
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「右!真後ろからきてるよ!」
「ふなあああ!!!」
私がお化けの位置を伝えて、グリムがその方向に炎を吹く。
「あちちっ!」
どうやらお化けにも炎は効いているらしい。
効果があるならば、それを当て続ければいつかは追い払えるはず!
「グリム!このまま押し通すよ!」
リズミックパートは割愛です。
リズミックパートは基本的に私のいないところで起きている感があって……。
でも、ほかのリズミックでは話をさしこめるよう頑張ります。