「はあ、はあ。さすがに疲れた。もう限界……。」
「ぜぇ、はあ……どうだあ!」
私もグリムも息も絶え絶えになっていた。
校長先生は元の人の姿に戻って私たちの様子を見ていた。
「なんと。まさかモンスターを従わせることができる人がいるなんて。」
「従わせる?」
校長先生から見ると、モンスターを従わせているらしい。
グリムが人に従う様子なんてあまり想像できないけれども。
というか今回のも私はたいして絡んでない気がする。結局火を吐いてたのはグリムだし。
「実は入学式騒動の時から私の教育者の勘が言ってるんですよねぇ。ユウさんには調教師や猛獣使い的な素質があるのではないか、と。」
「なるほど?よくわからないですね。」
校長先生と話すと知らない用語が大量に出てくる。
というか教育者の勘ってなんだ。勘で人の素質を見ようとしないでほしい。間違ってたらどうするつもりなんだろう。
「つまり、私を調教師として育てようということですか?」
「そうなります。」
しかし、これはかなりいい展開かもしれない。自分の学校でのポジションを変えることができそうだ。とするならば、グリムにも義理だてる必要があるだろう。
「それなら、一つお願いが。このグリムをこの寮に置いておくことはできませんか?」
「なんですって?モンスターを?」
やはり
「確か、手懐けていない使い魔を連れるのは校則違反ですよね。さっき見てもらった通り私はこのグリムを従えています。それならば問題はないですよね?」
「な!?オレ様はこいつなんかにフガフガ」
「ちょっと静かに!うまくいけばグリムもここで暮らせるんだから。」
グリムがプライド高く従っていないことを主張しようとするので慌てて口をふさぐ。グリムのためを思ってやってるのだからちょっとは信用してほしい。
「お願いします!」
「……仕方ありませんね。いいでしょう。」
「本当か!?」
ついに校長先生からYESを引き出すことができた。
「しかし!闇の鏡に選ばれなかった、しかもモンスターの入学を許可するわけにはいきません。ユウさんについても、元の世界へ戻るまでただ居候をさせるわけにはいかない。」
「んー、まあそれはそうですよね……。」
「ぬか喜びだゾ……。」
が、満額の解答というわけにはいかなかった。確かに、名簿にない人間(モンスター?)を学校に通わせるわけにはいかないだろうし、私もただでいさせてくれるわけではない。
「なのでこのようにいたしましょう。当面の宿についてはここを無料で提供します。ですが、衣食については自分で支払ってください。」
「ですが、私お金とか持ってないんですが……。」
「そうですね。ユウさんは手ぶらでした。そんなあなたが差し出せるものと言ったら…。」
「言ったら……?」
校長先生の口元が怪しくゆがむ。
「そんなに身構えなくても、学内整備などの雑用をこなしてもらうだけです。」
「びっくりした。魂をよこせとか言われるのかと。」
「子供相手にそんな横暴なことはしませんよ。私、優しいので。」
それにしても、本当に何かやばい取引を持ち掛けられるのではないかと構えてしまった。
先生の提案としては学内の雑用バイトをして生活費を稼ぐということになる。
「あなたは掃除の腕がありそうです。この談話室をきれいにしたのはユウさんですよね?」
「あ、はい。まだ全然終わってないですが。」
「この時間の仕事としては十分でしょう。ひとまず二人一組で『雑用係』はいかがです?そうすれば特別に学内に滞在することを許可して差し上げます。」
「だってさ、グリム。わかった?」
ポンポンと話しが進んでいそうだったのでグリムに話を振ってみる。
足元のグリムを見るとそれはそれは不満そうであった。
「ええ~!?それは嫌なんだぞ。オレ様もあのカッケー制服着て生徒になりたいんだゾ!」
「不満ならば結構。また外に放り出すだけです。」
予想通り不満を漏らすが、即座に校長先生に脅されてしまう。
まあ、立場を考えればそうなるのは当然ではある。
「グリム、もしこの学校にいたいなら従う方が賢明だと思うよ。」
「ぐぬぬ……。やればいいんだろ、やれば!」
「では、明日からナイトレイブンカレッジの雑用係として励むように!」
「はい」
「は~~い。」
まだ不満そうなグリムをどうにか説得して、明日から『雑用係』として働くことが決定した。
これが、僕とグリムのペアが結成された記念すべき瞬間だった。
会話を作るのは楽しいですね。
ただ、油断するとすぐ地の文がなくなってしまいます。
いい感じのバランスを探る日々です。