アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?   作:文字の忍者-遅筆

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ニンジャ・アンド・シグナー

 

『……本当、随分と急な呼び出しだよ』

 

 時刻は昼頃。ようやく乗りこなせるようになったフェニックスを駆り、僕はゴドウィン長官の屋敷へと向かっていた。名目上は「始末屋」としての仕事、恰好はいつもの仕事着である。実は家まで取りに行けないしどうしたものかと思っていたらいつの間にか届いていた……この手腕の速さを見るにどうも始末屋としての活動は知ってて黙認されていたらしい。最初から全部手のひらの上……ってことか、少しムカつく。

しかしこのDホイール、とんだじゃじゃ馬である。なるべく早く最高速度に到達してそれをひたすら維持するってコンセプトらしいけど、とにかくそのせいで小回りが利かない。万が一クラッシュでもしたら大惨事になることは想像に難くないだろう……ダークシグナー編までのライディングデュエルはオートパイロットとはいえ、やっぱり不安は拭えない。

 

『……』

 

……不安、不安と言えばやっぱりダークシグナーとの戦いである。僕が戦うとすればこんなDホイールを貰っている以上恐らくはライディングデュエル。勝つためにSP(スピード・スペル)と睨めっこしてきたが、使いこなせるか分からないのが一つ。そして……地縛神と相対して平気でいられるかどうかが一つ。

フォーチュンカップ準決勝……ブラックローズ・ドラゴンと対面した時ですら少し寒気がした。本来は味方であるシグナーの竜だったからその程度で済んだのだろうけど……じゃあそのシグナーの竜が立ち向かう相手である地縛神は?……正直、まともでいられる自信はあまりない。それにフェルグラントっていう第三の不安要素も残っている。

 

けど……依頼されたからには、勝たなきゃいけない。それが始末屋だ。

 

(……)

 

……何故か呆れたような視線をIKUSAから向けられながら、僕はゴドウィン邸の門を跨いだ。……毎度思うけど、伝えたいことがあるのなら言葉で伝えてよ、IKUSA。

 

さて、呼ばれたとはいえ何処に……ああ、ちょうどいい所にシグナーとゴドウィン長官がいる。あそこに合流しよう。

 

「……おや、もう来たのですか」

「これは……Dホイールの?」

「もしかして……例の5人目のシグナー!?」

「いえ、シグナーではありませんが……これからの戦いにおける強力な助っ人になってくれる筈です」

「助っ人だと?貴様、また知らぬところで……!」

 

……なんか凄い一触即発な雰囲気になってる、早く合流して自己紹介を終わらせよう。

 

話を遮るように駆動音を立ててシグナー達の目の前で停止。簡潔に終わらせるためにそそくさと降車した。

 

『……取り込み中だったか?』

「いえ、丁度良いタイミングでしたよ」

「ゆ、遊星……も、もしかしなくてもあの時の……!」

「お前は……」

 

既に面識のある二人からは驚いたような反応をされ、残りの3人からは少し疑問を持った表情を返される。まあ傍から見れば不審者だし当然か。

 

「紹介しましょう、これからの戦いにおいてあなた達の力となってくれる人物……」

 

「ネオドミノの猟犬「始末屋」です」

 

……そんな大層な二つ名、いつの間に付いたの?

 

『そこの二人は先日ぶり、残りの3人は初めましてになるか。紹介に預かった「始末屋」だ、この事態が収束する間までになるだろうが……共に戦うことになる』

 

動揺をどうにか隠しながらどうにか自己紹介を終える。下手をすれば正体がバレかねないため早く終わらせたいところだが……

 

「貴様……共に戦うというのなら素顔くらい晒して見せろ!俺は他人を欺こうとする奴と共に戦う気はない!」

 

やっぱり穏便に終わる訳がない、か。

 

「彼には少々事情がありましてね、素顔を晒したくない……いや、下手に晒せない、というのが近いでしょうか」

「どういうことだ!?説明しろ!」

「別に後ろ暗い所があるというわけではありません……ただ、「始末屋」は悪事を働く者達を秘密裏に退治し、人知れず消えていく裏のデュエリスト。もし何かしらのきっかけでその素顔が割れてしまえば……」

「今まで始末屋に苦渋を飲まされてきたデュエリストが復讐に来る可能性がある、と?」

『あくまで可能性だ。だが……そうなれば私はともかく、私の周囲の者達にも危険が及ぶことが考えられる。それだけは……避けなくてはならない』

 

でも「始末屋」として活動しているのは自分の意志。自分勝手すぎないか、なんて言われるのは承知の上だ。

 

「……ふん、ネオドミノの猟犬が聞いて呆れる。猟犬を気取るのなら周囲の者くらい自分の手で守って見せるがいい」

「ジャック……」

「今の俺は貴様を仲間としては認めん!少なくともその素顔を晒さぬ限りはな!」

 

……ジャックには嫌われてしまったらしい、まあ彼の性格を考えれば当然か。

 

『随分とキングには嫌われてしまったようだ』

「今はもう元、ですがね……そういうわけで皆さん、改めてダークシグナーとの戦いには彼も加わることになります。どうぞお見知りおきを」

『……顔合わせは終わった、先に行っていて構わんな?』

「構いませんとも。サテライトには明日ヘリを出します。Dホイールは手筈通りこちらで輸送を」

『了解した』

 

ひとまず顔合わせは終わった。Dホイールを預けに……

 

「あ、あの、「始末屋」さん!」

『……なんだ?』

 

……行こうと思ったら龍可に声を掛けられた。何か気になることでもあったのだろうか?

 

「その……後で、お話することって、できませんか?」

「る、龍可!?いくらなんでも……」

『……分かった、場所は?』

「いいのぉ!?」

「後で……このお屋敷の、庭園で」

『……了解した』

 

……お話、一体何についてだろうか。ただ現状断る理由はないし、下手に断って印象を損ねても困る。ここは大人しく乗っておこう。

 

僕は改めてDホイールを駆り、一時的にゴドウィン邸を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、始末屋さん。ちゃんと待っててくれたんですね」

『経緯はともかく、これから共に戦う仲間だ。頼みを無碍にするわけにもいくまい』

「結構律儀なんですね」

『始末屋の仕事は信頼で成り立っている。それを蔑ろにはできん』

 

 Dホイールを預け、約束通り庭園で龍可と待ち合わせ。こんなあからさまに不審者ですみたいな恰好だというのに妙に普通に接してくる。本当、一体何を聞きたいのだろうか。

 

『……それで、何を聞きたいんだ?』

「その……ちょっと皆が居る前では言えないことで……」

『……まあ、そういうこともあるだろう、なんだ?』

 

 

「その……フォーチュンカップに出てた人、ですよね?不知火を使っていた」

『……』

 

……嘘だろ、なんでバレてる?

 

『人違いだろう、そもそも私はフォーチュンカップには』

「その後ろのモンスター……あの人の隣にもいました。私には分かります」

『……!』

 

そうだ、龍可はカードの精霊が見える……あの時にもIKUSAは僕の傍に居た、こんなことでバレるなんて……

 

「……別に正体を知ったからってどうかしようって訳じゃありません。仮面を脱いで欲しいってわけでも」

『……いや、バレてしまったのなら仕方ない。君もこんなのを付けてちゃ怖いだろ?』

「え……」

 

……周りに人が居ないのを確認し、ボイスチェンジャー付きの仮面を外す。多分彼女も勇気を振り絞って聞いてきたんだろう、なら僕もそれに少しは報わなければ。

 

「……一応周りには秘密にするって約束してくれる?」

「はい、大丈夫です」

「よかった……それで、聞きたいことって多分僕の正体についてじゃないよね?」

「……はい」

 

やっぱり。ただ正体が気になっただけならわざわざ呼び出したりなんてしないと思った。

 

「その……貴方がアキさんと戦った時に出した、あのドラゴンについて……」

「……フェルグラントのことか」

「はい。あのモンスター、凄い変な感じがしたんです」

 

ゴドウィン長官の説明が正しいのならあのカードの性質は地縛神に近い。彼女が反応するのも当然と言えば当然の事か。

 

「変って……?」

「その……伝わるか分かりませんけど、物凄い薄暗いものが大量に集まってる感じと……何かと戦おうとしている感じが」

「……」

「お互いに潰しあってるんじゃなくて……共存してるんです。どちらかがなくなればもう片方も一緒に消えてしまう……そんな奇妙な感覚が、あのカードからしたんです」

「……確かに僕もあれを出した時、妙に気持ち悪くなった」

 

シグナーとダークシグナーの戦いにおいて散った者達の無念の集合体と長官は言っていた、そうであるのなら負の感情はまだわかる。ただ何かと戦うっていったって……ダークシグナー側の感情も多少入り込んでいるだろうにそれが共存することがあるのか?

 

「実を言えばあれは準決勝の前にゴドウィン長官から渡されたもの。だから僕自身詳細はよくわからないんだ……ごめんね」

「いえ、私も気になっただけなので……」

「そっか……聞きたいことはそれだけかな?」

「……はい」

 

一瞬何か言い淀んだのが気になるけど……まあ、今はいいだろう。

 

「……それじゃあまた明日、サテライト行きのヘリで会おう」

「はい……頼りにさせてもらいます」

『そうか……じゃあ頼りになるよう、全力を尽くすよ』

 

彼女以外に正体がバレないように再び仮面を付け、庭園を後にする。

 

何処か呆れた表情しかしないIKUSA、フェルグラントの謎、戦いへの不安。色々と考えたいことはあるけど……まずは戦いに勝つこと、これが大前提。

 

そのために備えは万全にしておこう……ライディングデュエル用のデッキを調整しなきゃいけない。

 

 

 

 

「……ねえクリボン、言わなくてよかったのかな?」

(クリ?)

「あの人の隣に居たカードの精霊……」

 

「何処か悲しそうな顔をしてたって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、明朝。夜通しデッキを調整していたせいか少し遅く起きてしまい、急いで集合場所のヘリポートに走る羽目になってしまった……IKUSAからは溜息を付かれる始末だ。

 

『すまない、遅れた』

「いえ、丁度ヘリが到着したタイミングです。遅いということはありません」

「重役出勤とはいい御身分だな「始末屋」?」

「よせジャック、今は仲間同士で争っている場合じゃない」

「フン……」

 

相変わらずジャックからの印象は最悪のようだ。言葉で挽回できるとは思えないし、行動……デュエルで僕のやり方を示すしかない。

 

「……少なくとも俺と龍亜はお前の実力を確かに知っている。頼りにさせてもらうぞ「始末屋」」

『新しいキングにそう思われているとは光栄だ。ならばその信頼に恥じぬ働きをさせてもらおう』

「ああ、頼んだ」

 

……遊星とは一度デュエルしたからか好印象のようだけど……その分期待がちょっと重い。けど……やるしかない。

 

『……』

 

此処まで来てしまった以上もう後戻りはできない、覚悟を決めてヘリへと乗り込む。

 

……自分はただのモブキャラ1だと思っていたのに、気づけばこんな遠い所……本編にガッツリ関わる所まで来てしまった。

 

確かに勝つか分からないデュエルに臨めるのはこちらとしても望んでいたことだ。ただ……今回は以前の2戦とは違う。負ければ自分が死ぬだけで済めばまだいい方、最悪世界そのものが終わってしまう。

そんな重大な責任を背負って僕は勝てるのか?……いいや、勝たなきゃいけない。

 

「始末屋」としての矜持とフェルグラントを与えられた責任……そして世界を背負った重圧。全部背負って、戦って、そして勝つ。

 

きっとそうすることが……僕の、役目だから。

 

(……)

 

……相変わらずIKUSAは仮面でほとんど読み取れないけど、どこか呆れた顔をしていた。

 

 

 

主人公にはどういう活躍を期待している?

  • 蹂躙、無双
  • いい感じの熱いデュエル
  • ギリギリを演じる2枚目
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