アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?   作:文字の忍者-遅筆

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ビリーブ・アン・ダウト

 

「改めて、タクヤを助けてくれて本当にありがとう……何とお礼を言えばいいか……」

「いえ、お礼も何も、それが僕の仕事だっただけですから」

 

 ……深夜、マーサハウス。あの後遊星とルドガー……ではなくラリーのデュエルは終わり、ダークシグナー達は宣戦布告だけして帰って行った。エンシェント・フェアリー・ドラゴンのことやら各々の事情やら、僕の事やら……整理することが山積みになった一行はひとまず帰還した。

 

「……さて、シグナー御一行の視線が痛いし……そろそろ話をしようか」

「ああ、始末屋……いや、何と呼べばいい?」

「別に始末屋のままでもいいんだけど……呼ぶなら名前で呼んでくれた方がいいかな。苗字はあまり慣れてない」

「そうか、では衣玖……お前は本当に「始末屋」なのか?」

「その通り、かな。今までのは変装でもなんでもなく僕が「始末屋」本人。キング……いや遊星さん、疑うようなら貴方とのデュエルを詳細に話してもいいよ」

「いや、充分だ……しかし何故……?」

「どういう意味の「何故」かははわからないけど……どうして此処に居るかって意味の「何故」ならゴドウィン長官から依頼を受けたから。シグナー達の助けになってくれ、ってね」

「それだけではあるまい。本来地上絵に取り残された一般人は地縛神降臨の生贄となってしまう。だがお前は生贄にならなかったばかりか、妙な力で五体満足と来た……答えろ、何を隠している!」

 

……素顔は晒したけど相変わらずジャックの物言いがきつい……けど今までよりはだいぶマシだ。あの子を助けたからだろうか?

 

「あれは多分これのせい……いや、おかげかな?」

 

不知火のデッキからフェルグラントを取り出す。特に違和感を感じたりとかはないが……龍可が少し怯えた顔をしている。実際に召喚しないことには僕は体感できないけど多分相当なんだろう、このカードに込められた負の感情は。

 

「そのカードはあの時の……」

「そう、巨骸竜フェルグラント……十六夜さん、貴方と戦う直前にゴドウィン長官から渡されたカードだ」

「なんですって!?」

「ゴドウィンが……お前に……!?」

 

……何処まで話すべきだろうか。僕の旧姓のことは隠すとして……無念の集合体ってことくらいは共有しておいて問題はないだろう。

 

「なんでもこのカードはこれまで5000年周期で続いてきたシグナーとダークシグナーの戦い、その中で散っていった者たちの無念の集合体……らしい。見た目こそドラゴンだけど多分在り方としては地縛神に近い、だから何か特別な力が働いて僕を守ってくれた……んだと思う」

「無念の集合体……今となってはあり得ない話ではないが……」

「それを信用して大丈夫なのか?」

「……完全に信用してくれとは言えない。僕自身今の説明はゴドウィン長官からの又聞きなんだ」

「ゴドウィンの……」

 

すっごい胡散臭そうな目で見られてる……まあうん、全員が全員ゴドウィンに不信感抱いてるし、そうなるよねとは思ってたけど……どうしよ。

 

「……大丈夫」

「龍可?」

「そのカード……確かに怖いものがいっぱい集まってる。けど、誰かを害するような意思は感じられない……むしろそういうものと戦おうとしてる感じがする。だから……信じていいと思います」

「……昨日も思ってたけど、そういうのってわかるものなの?」

「なんとなくですけど……」

 

……僕にもIKUSAが憑いてるけどそういう類の物を実態が出ていない時に感じることはできない。こればっかりは才能だろう、自分で分かれば楽なんだけど……いや、それはそれでフェルグラントから出てきた嫌な感じに押しつぶされそうな気がする。

 

「ふん、そういうのであればひとまずは信用してやろう……タクヤを助けてもらった恩もあるしな」

「ジャック、なんであんたはいつもそう素直じゃないんだい!普通そこは礼をいうところだろう!?」

「し、しかしだなマーサ……」

 

 

「僕、あの人があそこまで狼狽えてるの初めて見た気がする……」

「ジャックは昔からああいう不器用な奴さ……俺からも礼を言わせてくれ、タクヤを助けてくれてありがとう」

「……ああいう素直じゃない人も居るし、素直にどういたしましてって言っておくよ、遊星さん」

「さんは付けなくていい」 

「え?」

「理由はどうあれ、今の俺たちは共にダークシグナーと戦う仲間だ。そうだろう?」

「……」

 

……どうしよう、あの子を助けただけでここまで好感度上がるものなの?正直自分が仲間と呼ばれる立場になっていいのかすら疑問に思いたいレベルで現実が想像を追い抜いていくんだけど……

 

「……じゃあ遊星、改めて……よろしく」

「ああ、こちらこそよろしく頼む、「衣玖」」

 

こちらが差し出した手を遊星は力強く握り返してくれた。正直まだまだ不安な事ばかりだけど……この手は、凄く心強い。

 

「……あ、他の皆もそれでいいのかな?」

「私は構わないわ、よろしくね衣玖」

「俺も!下手に君とか付けられてもちょっとむず痒いからさ……」

「私も龍亞と同意見かな……やっぱり畏まるって緊張するし」

「お前達は簡単に絆されすぎだ、仲間とはいえどダークシグナーとの戦いに絆は関係ない。求められるのは個の実力のみであることを忘れるな!」

 

……まあ、ここで流れに乗らないのがジャックって人間だよね。

 

「……あ、マーサさん。シチューってまだ残ってるかな?やっぱりパンだけじゃちょっと足りなかったみたいで……」

「勿論だよ!今用意してくるからたんとお食べ!」

「ありがとうございます……ふぅ、やっぱ気を張り詰めるのって疲れるなぁ……」

 

先程までの一触即発な雰囲気から脱した事を理解して思わず背筋を伸ばす。元々の予定では始末屋として顔を隠しながら裏方に徹するつもりだったけど……案外こういうのも悪くないかもしれない。その分期待という重圧も凄くなるけど……

 

「なあ、始末屋……じゃなかった、衣玖」

「牛尾……さん?」

「めんどいからさん付けはしなくて結構だ、ちょっと時間いいか?」

「いいですけど……マーサさんに怒られたくないので早めにお願いしますね」

「あたぼうよ」

 

……彼から僕に用事?なんだろう。

 

「あのガキどもがよ……」

「……成程」

 

大体理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、ええと……しまつや……じゃなくて……衣玖お姉ちゃん……」

「何をそんなに怯えてるかは分からないけど……そこまでビビる必要もないし、後普通に呼び捨てでいいよ?ほら、僕今怒ってないしさ」

「わ、わかった……」

 

 牛尾に連れられて行った先に居たのはあの時止められなかった少年3人。絞られでもしたのだろうか、少し目尻が赤い。

 

「その……ごめんなさい!」

「うん」

「俺達がお姉ちゃんが止めるのも聞かずに遊星兄ちゃんの所に行ったから大変なことになって……それに、衣玖お姉ちゃんが危険な目に」

「悪気はなかったんでしょ?」

「ダークシグナーっていうのがクロウ兄ちゃんたちが居なくなった原因だって聞いて……そんな奴らと遊星兄ちゃん達が戦ってるのに俺達何もできないのが嫌で……」

「いてもたってもいられずに飛び出しちゃった、と」

「本当はジャック兄ちゃん達と大人しく隠れてる方がよかったんだ……俺達が行っちゃったせいで皆が危険な目に……」

「確かにそうかもだけど……あまり悪いことだとも思わないかな」

「え?」

 

慰める訳じゃないけど……この子達の気持ちだって理解できる。

 

「君達は自分達で何かできることをしようとしたんだ。それの成否はともかく、実行に移せる意思があるってのは素晴らしいことだって少なくとも僕は思うよ」

「でも……結果的に……」

「まあ確かに結果論でみると最悪寄りの結果にはなっちゃったけど……部屋に閉じこもって何もできないのは嫌だっていうのはよくわかるし、やり方が違えば本当に遊星たちの助けになれてたかもしれない。そういう視点で見ると行動したことは悪いことだとは言い切れない」

「衣玖お姉ちゃん……」

「ただし自分の力量はしっかりと把握しておくこと。手の届かない塀は掴めない、サイズの合わない服はまともに着れない。次があるかはわからないけど……もしあるんだったらその時は自分達にできることの限界を知った上で改めて何ができるかを考えるんだ。じゃないとセキュリティなんて夢のまた夢だぞ、なんてね」

「おい、なんでそこで俺を見る」

「丁度良い見本だと思って、違います?」

「う、うぐ……はぁ、そうだぞお前達。自分達がなんでもできるって思い上がるんじゃあない。そもそもな……」

 

つい話を振ってしまったばかりにそこそこ長くなってしまいそうだ。程々で抜け出してマーサさんのシチューを頂くとしよう。

 

……1人でできる事には限界がある。けど時に人はその限界を超えていると感じる無茶を要求されることだってある。

でも、要求されるってことは要求された側にできる力があるってことで。

……僕はシグナー達と共にダークシグナーと戦う事を要求された、それは僕にできるだけの力があるってこと。

だったら断るわけにも逃げるわけにも行かない。

 

……そうだ、僕はダークシグナー達と戦わなくちゃいけない。

 

戦って、勝たなきゃいけないんだ。

 

(……)

 

 

(……阿呆が)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、夜明けを待たずにシグナー一行はそれぞれダークシグナーが待つ旧モーメントの制御塔へと出発した。タイムリミットは日暮れ、それまでに全ての制御塔を起動できなければ……冥界の門が完全に開き冥界の王が現出、ダークシグナーの完全勝利となってしまう。

僕は最年少である龍可と龍亞に同行しようとしたのだけど……

 

「……本当に任せて大丈夫なの?」

「あたぼうよ、これ以上恥ずかしい格好晒せるかってんだ。あいつらは俺が必ず守りきってやる……お前はお前の仕事を果たせ「始末屋」!」

 

……っていう感じで覚醒した牛尾がやる気満々だったので任せてしまった。

 

そういうわけで今回の役目はシグナーの護衛ではなくサテライトに何か異常がないか見回ること。万が一新たなダークシグナーや何かの予兆があれば近くの制御塔へ向かってシグナーに通達……というのが役割。龍可曰く「フェルグラントと地縛神の気配は似ているから何かあったら共鳴するかもしれない」とのことで……つまるところ僕はサテライトを走り回るダークシグナー探知機ってことだ。

 

「……とは言っても……地上絵が浮かぶと気持ち悪い感覚が発生するだけで特に何か起こるわけじゃないんだよな……」

 

時刻は明朝、つい先程猿の地上絵が消えたのを確認して僕は一時停止していたフェニックスを再び走らせる。そういえばフェニックスって開発コードだったよな……この戦いが終わったらちゃんとした名前を付けてあげよう。

 

なーんてとても決戦の最中とは思えない呑気なことを考えていた時である。

 

(……)

 

「確かこの後鯱の……え?」

 

走行中に突然辺りが白くなった。ダークシグナーのお出ましかと思ったけどフェルグラントに反応はないし、Dホイールのマップ機能はエラー表示。

 

「……何が、どうなってるの?」

 

困惑しながらも少なくともこの状況で止まったところでどうしようもないだろうと判断してそのまま加速する。フェルグラントが反応しない以上これはダークシグナー案件ではない、じゃあなんだ?

 

「……っ、やっと視界が戻……え?」

 

1分程走行し、ようやく真っ白な視界が戻ったと思えば周りに広がるのは月明かりの広がる山奥。おかしい、僕はさっきまでサテライトにいた筈。

 

「……ね、ねぇIKUSA、何か……あれ?」

 

いつもの癖でIKUSAに判断を仰いでしまったところで気づいた。彼が、居ない。

 

「え、え?一体何処に……」

 

「此方だ、阿呆が」

 

「あ、阿呆ってなんだよ!?一応僕は……へ?」

 

声がした方向に振り向いてみればそこに居たのはいつものような半透明ではなくしっかりした実体のある仮面の忍者……IKUSA。

 

「……どういう、こと?」

 

「先程第一のダークシグナーが倒され、エンシェント・フェアリー・ドラゴンが解放された。お……私は彼女に頼み、一時的にお前を精霊界へと招いたのだ」

 

……いつもの無口が嘘のように今の彼は饒舌だ……って、待って。

 

「招いたって……今どういう状況か分かってるの!?ダークシグナーに勝たなきゃ世界が滅ぶんだよ!?こんなところで油売ってられる状況じゃないでしょ!」

「こんな状況だからだ阿呆。お前の事は幼い頃から見ていたが……流石にそろそろ矯正せんとまずい」

「矯正って何をさ!?」

「それにいきなり答える程私は優しくない。ともかく、現実世界に戻りたいのであれば……」

 

 

 

「今此処で私とデュエルしろ、我らの担い手……鞍馬衣玖」

「デュ、デュエルって、IKUSAにデッキは……あれ?」

 

……デュエルディスクにセットしていた忍者のデッキが、ない。

 

「その程度の問題とうに想定済みだ。お前が操る我らのデッキ……今限り、私が使わせてもらう」

「……本気なんだね」

「無論だ。本気でなければわざわざお前を精霊界へ招かん」

「……時間がないんだ、とっとと終わらせよう。モーメント・アウト」

 

Dホイールからディスクを取り外し、不知火のデッキをセットする。何がなんだか知らないけど……早くデュエルを終わらせてサテライトに帰らなきゃ。

 

「準備はできているだろう……始めるぞ」

「……わかった」

 

 

 

 

「「決闘(デュエル)」」

 

 

……月明かりが照らす中、何が目的かわからないIKUSAとのデュエルが幕を開けた。

主人公にはどういう活躍を期待している?

  • 蹂躙、無双
  • いい感じの熱いデュエル
  • ギリギリを演じる2枚目
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