アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!? 作:文字の忍者-遅筆
「先行は貰う。ドロー、スタンバイ、メイン……」
……こんな状況でわざわざ僕にデュエルを仕掛けてくる、正直理解が追いつかない。矯正って言われたって何をどう矯正するのかわからないし……とにかく今は、デュエルをするしか。
「「不知火の武部」を召喚し効果発動、デッキから「妖刀-不知火」を特殊召喚する」
「チェーンはない……もとより、そんなカードはこのデッキには入っていない。お前が一番理解している筈だ」
「……レベル4「不知火の武部」にレベル2「妖刀-不知火」をチューニング」
精霊界とは言っても特殊なカードでなければそこまで普通のデュエルと変わらないらしい。いつも通り妖刀がシンクロの輪を作る。
「妖封じし猛き将よ、その力、刃に宿りて今現界せよ」
「シンクロ召喚……来たれ「刀神-不知火」」
そうだ、精霊とのデュエルとはいえ何も焦る必要はない。いつも通り、いつも通りのデュエルを……
「カードを3枚伏せ、ターンエンド」
「私のターン、ドロー……「忍者マスターHANZO」を召喚」
いつものように効果音と共に現れたHANZOはIKUSAに向けて跪く……こんな演出は見たことがない。もしや、精霊が?
「忍者マスターHANZOの効果発動、デッキから「忍法」カードを手札に加える」
「チェーンはない」
「「忍法 落葉舞」を手札に」
突風とともにIKUSAの身に着けたディスクからカードが1枚吹き飛び手札に加わる、忍者デッキのいつもの光景だ。
「更に手札より「蟲の忍者-蜜」の効果を発動」
蟲の忍者-蜜
【昆虫族/効果】
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分フィールドに「忍者」カードまたは裏側守備表示モンスターが存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。②:相手がモンスターの効果を発動した時、自分フィールドの裏側守備表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを表側守備表示にし、このカードを裏側守備表示にする。対象のモンスターが「蟲の忍者-蜜」以外の「忍者」モンスターだった場合、さらにその相手の発動した効果を無効にする。
「……それにもチェーンはない」
「であるのならば手札のこのカードを守備表示で特殊召喚する。来い、蜜」
「彼」が使えない都合、今まで出すことが少なかった彼女……蜜が水飛沫と共に現れる。
『あら、本当にやるのね御当主。まあ私としてもいい加減どうにかしてほしいと思っていたし……いい機会だわ』
「喋った……!?」
「何を今更、此処は我らの隠れ里。住民である我らが意思を持つのは当然のことだろう?」
……そうか、ここは「隠れ里-忍法修練の地」か。そういうものなのかと疑問はあるけど……まずは目の前の相手に勝つ、それだけを考える。
「私はカードを3枚伏せ、ターンエンド」
「そのエンドフェイズに速攻魔法「逢華妖麗譚-不知火語」を発動、手札の「不知火の師範」を捨て、デッキから「逢魔ノ妖刀-不知火」を特殊召喚する」
……此処までは想定通り、伏せは見えてる落葉舞と残り2つ……考えろ、どう動けば勝てる?
「……十六夜アキとの一戦、お前は伏せを怖がらずに攻めに行けば勝っていた」
「急に何を……」
「自分で考えることだな、お前のターンだ」
いつものような対戦の振り返り……けど、少し声色が違う。一体何を考えているんだ……?
「僕のターン、ドロー、スタ」
「そのドローフェイズに「忍者マスターHANZO」をリリースし、永続罠「忍法 分身の術」を発動する」
「!?」
忍法 分身の術
①:自分フィールドの「忍者」モンスター1体をリリースしてこのカードを発動できる。レベルの合計がリリースしたモンスターのレベル以下になるように、デッキから「忍者」モンスターを任意の数だけ選び、それぞれ表側攻撃表示または裏側守備表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは全て破壊される。
何故このタイミングで分身を……いや、此処は「彼ら」の本拠地、だったら「彼」自ら出てきても可笑しくは……!
「チェーンして罠カード「不知火流 燕の太刀」を「逢魔ノ妖刀-不知火」をリリースして発動。対象は……そこの伏せ2枚」
だとすればあの分身の術はなんとしても食い止めなければならない。通してしまえば……僕の勝目はほぼ消え失せる。
「……そこか。チェーンして対象になったセットカード「忍法 落葉舞」を「蟲の忍者-蜜」を対象に発動」
やっぱり白竜の忍者を呼ぶ気だ、だけどそれは想定済み……!
「さらにチェーンして罠カード「逢華妖麗譚-魔妖不知火語」を「刀神-不知火」をリリースして発動」
逢華妖麗譚-魔妖不知火語
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:自分フィールドの、「魔妖」S・リンクモンスターまたは「不知火」S・リンクモンスター1体をリリースして発動できる。このターン、お互いに手札・デッキ・EXデッキからモンスターを特殊召喚できない。②:墓地のこのカードを除外し、除外されている自分のアンデット族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを墓地に戻す。
「チェーンはない」
「逆順処理だ」
「「逢華妖麗譚-魔妖不知火語」の効果でこのターンお互いに手札・デッキ・EXデッキからモンスターを特殊召喚できない」
「「逢華妖麗譚-魔妖不知火語」の効果適用により「忍法 落葉舞」は不発に終わる」
「「不知火流 燕の太刀」の効果で最後の伏せカードと「忍法 落葉舞」は破壊され」
「「忍法 分身の術」の効果は「逢華妖麗譚-魔妖不知火語」の効果適用によりまた不発に終わる」
「……不知火流 燕の太刀の効果で破壊された「風魔手裏剣」の効果発動」
風魔手裏剣
「忍者」という名のついたモンスターのみ装備可能。装備モンスターは攻撃力が700ポイントアップする。このカードがフィールド上から墓地に送られた時、相手ライフに700ポイントダメージを与える。
「700ポイントのダメージだ、チェーンはないな?」
「っ……」
あの時の復習とでも言わんばかりにバーンが飛んでくる。
「……全く、想定通りだが、こうも見事に転がってくれるとは思わなかったぞ」
「想定、通り……!?」
まさか私の行動を全て予測している……?いや、そんな訳が……!
「……スタンバイ、メイン。フィールド魔法「不知火流 転生の陣」を発動」
月明かりに対抗するように僕の周りに炎が灯り、紋章が発生する。
「手札の「もののけの巣くう祠」を捨て、「不知火流 転生の陣」の効果を墓地の「刀神-不知火」を対象に発動。特殊召喚する、舞い戻れ刀神」
周囲に灯る炎の一つが燃え盛り、先ほど墓地へ送られた刀神が復活。
「バトル。刀神-不知火で蟲の忍者-蜜を攻撃」
『……はあ、頼んだわよ御当主、さっさと目を覚まさせてやって』
「……」
随分と気になる言葉を吐きながら蜜は刀神に切り捨てられた。
「……メイン2には入らない。そのままターンエンドだ」
「私のターン、ドロー……お前はいつもそうだ」
「何が……」
「不動遊星とのデュエル」
「!?」
今度は、何だ?
「くず鉄のかかしを見てからではなく、最初に櫓丸を特殊召喚してマッシブ・ウォリアーを除外していればニトロ・ウォリアーをシンクロ召喚されることはなく、その次のターンに余裕を持って勝利できた」
「だから何を……!?」
「……ここまで言ってもわからんか。私は速攻魔法「異譚の忍法帖」を発動。墓地から「忍者マスターHANZO」、デッキから「忍法 超変化の術」をセットする」
「……」
……「彼」がフィールドに降り立つのを阻止するため前のターンで妨害は使い切ってしまった……このターンの展開を止めることは、できない。
「「獣の忍者-獏」を召喚する」
『……!!……?』
「自分で気づかねば意味がないだろうと思ったが……重症だな、あれは」
続いて呼び出された異端の忍者、火光は蜜と同じようにIKUSAと呆れたような顔をして会話する。なんだよ、重症って。
「獏の効果発動。墓地・除外状態の忍者または忍法カード……「忍法 落葉舞」を手札に」
『……!!!』
獏の咆哮とともに落葉舞が舞い戻る。これは……
「カードを1枚伏せ、ターンエンド」
「僕のターン、ドロー、スタンバイ、メイン……」
「メインまでカードの発動はない……さて、此処までやっても気付かんか」
「だから何がさ!」
「『お前が勝てなかった理由』だ」
「……!?」
……なんで今、それを?
「お前はとにかく不確定要素があればそれを明かすことを最優先にする。目と鼻の先の勝利など切り捨てて、だ」
「……別に、それ自体は悪いことじゃないだろ。仮に99%勝てるとしてもたった1枚の伏せカードで逆転されることだってあり得るんだ」
「ああ、私とてそれを否定はしない……だが、そうした所為でお前は二人に負けた」
「うぐ……」
耳が痛い、確かにそれは事実だ……けど、それを治せっていうのもおかしな話だ。
「お前はあまりにも慎重すぎる。だがそれはお前の勝ちたいという意思とは別に原因がある」
「……は?」
「お前は確かに勝つ為のデュエルをしている、だがその根底にあるのは「勝ちたい」という意地や「楽しみたい」という思いではない」
「……待って、何の話を」
「お前のデュエルの根源、そして勝てない理由」
「それは「勝たなければならない」という義務感だ」
どういうこと、だ?
「もっと簡単に言い換えてやろう」
「お前は
「……けど、僕はアキと遊星に、負けて」
「ああそうだ、だがその敗北でお前に湧いた感情はなんだ?」
「それは……」
それは、当然……
……あ。
「そうだ」
「「仕方ない」、それがお前が最初に抱いた感情の筈だ」
「っ……」
……心臓の鼓動が聞こえる。時間が、ゆっくりになる。
「「
「お前はそう自分に言い訳をすることで、「負けてしまった」ことから逃げようとしている、「何故負けたか」考えることを放棄している。それは何故か?」
「……やめ……」
「「何故負けたか」を考えてしまえば「仕方ない」負けはそうではなくなる、「やるだけをやって不確定要素に負けたのだから仕方ない」という言い訳は使えなくなる」
「やめろ」
「とんだ腰抜けもいたものだ。「負けてはならない」と怯え、いざ負けてしまえば「仕方ない」で逃げ」
「やめろ!」
「……図星のようだな?」
「……少なくとも……そっちの狙いは……大成功だよ」
動悸が止まらない、頭が纏まらない。
「何が、言いたい……僕は、それでも……」
「言っただろう、お前が「勝てなかった」理由だと。これから先もそのようなデュエルをするのならお前は勝てない、お前に我らが応えることはない。それは彼ら……不知火達も同じこと」
「え……?」
「お前が時折感じる燃える感覚、あれは不知火達がお前に
「……」
「だが、今まで一度たりともそれが叶ったことはない、なぜか?」
「……」
「お前が逃げているからだ、お前が我らを使っているからだ」
「……は?」
それじゃあまるで、忍者と不知火を使っているから勝てないって、言ってるような……
「……まだ気づかぬか、この阿呆がぁ!」
「ガッ……!?」
痺れを切らしたIKUSAにデュエル中だというのに胸倉を掴まれる。かなり、苦しい。
「
「それ、は……」
……だって、使う以上、勝つのは絶対条件、で。
「言ってやろう!デュエリストという奴らはお前の想像など軽く超えていく!全てを白昼に晒したとてそれをひっくり返してくる!そういう生き物だ!」
「ならばそれに対抗するための術は?恐れず懐に飛び込むことだ!」
「で、も……」
それで負けたら、全部、台無しだ。
「それは我らを「使っている」からそういう発想に至るのだ、デッキはデュエリストの魂、共に戦う仲間たち、そうではないのか!」
「ぁ……」
……僕は……とんだ、勘違いをしていたらしい。
「確かに貴様が望んで得た力ではない。だが我らは一度お前の手に渡った以上その魂の一部となった……真に望むならば応えよう、しかし腑抜けているのなら道理は無し」
「今一度問う!貴様は我らと……「共に戦う」意思があるか!暗闇に恐れず飛び込む勇気があるか!」
「僕、は……」
……自覚した今、正直、まだ、怖い。本当に応えてくれるのか、とか。大事なところで負けてしまったら、とか。
けど、このままじゃダメだっていうのは、理解、してる……!
「僕は……もう、逃げ、ない」
「ほう?」
「こわい、けど、それは、逃げる、理由に、ならない……」
「皆が、僕を、信じてくれるって、いうのなら……」
「僕も……皆を、信じたい……!」
「……」
「その言葉、偽りは……ないな?」
恐怖と表現する事すら生ぬるい凍てつく視線が僕を貫く。けど、決めたんだ。
「……もち、ろん……!」
逃げない、って。
「……ならば我らもお前を信じ、今一度主として仕えることにする……手荒な真似をしてすまなかったな」
IKUSAの力が緩み、解放される。まだ少し息苦しいけど……遊星に負けた時とはまた違う、清々しさを感じる。
「いや……元はと言えば腑抜けていた僕が悪かった。君たちを使っているんだから勝たなきゃダメ、それを信念にデュエルしてるんだから応えてくれなくて当然だよ」
「ああ、だがそれはもうやめたのだろう?」
「……うん。これからは、君たちを「信じて」デュエルすることにする。だからIKUSA達も……できれば、それに応えてほしい」
「枕詞を付けるな、そもそも我らはお前のカード。お前が吹っ切れた今、求められればそれに応えよう」
「……ありがとう、IKUSA」
「礼には及ばん、私は私のできることを……おっと、時間のようだな」
「え?」
IKUSAに言われて辺りを見回せば、再び白くなり始めていた。
「恐らくエンシェント・フェアリー・ドラゴンのシグナーが次のダークシグナーとの戦いに突入したのだろう、お前をこちらに維持する力を対地縛神に回し始めたようだ」
「成程……え、じゃあデュエルの続きは!?」
「必要ない、デッキを信じていない状況でドローしたカードで逆転などできる筈がないだろう?」
「それは……まあ……」
「はっはっは、では現実に戻ろうではないか」
……拉致まがいの招待をされた時はどういうことかと思ったけど、結果的に一番大事なことを理解した。
そうだ、不知火達もIKUSA達も僕のデッキを支える仲間たち。こんな簡単なことにどうして気づかなかったのだろう。
随分と遅い目覚めになってしまったけど……その分頭がスッキリした、気がする。
「ああそうだ」
「IKUSA?」
「心機一転記念というわけではないが……」
「本当に必要な時に限り、「俺」と「爺」を使うことを許可する。望めば……応えてやるとも」
「!」
……それって。
「認めて、くれたの?」
「お前が俺たちを信じると言ったのだ、それに応えねば恥よ」
「……ありが、とう」
「おいおい泣くな……さあ行くぞ、まだ戦いは半分も過ぎ去っていない」
「……うん、行こうIKUSA……いや、違うな」
「行こう、●●●●!」
「応!」
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ーーーー視界が移り行く中、僕と「彼」は、真の意味で「仲間」になった。
主人公にはどういう活躍を期待している?
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蹂躙、無双
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いい感じの熱いデュエル
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ギリギリを演じる2枚目