アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!? 作:文字の忍者-遅筆
まあその、なんだ。また結論から言わせてもらおう、ゴースト襲来まで……つまるところ5ヶ月くらい。
それまで僕の日常になんら変化はなかった。ゆきのんにいいように揶揄われたり、レインにアカデミアのあれこれを案内したり、アキ達5D‘s組と親交を深めたり……後は試験とかWRGPあれこれとか、そのくらい。
相変わらずレインは何も話してくれない。なんでも「守秘義務」だとかなんとかで自分の秘密に関しては話せないんだとかなんとか……なんだよそれ、それじゃあこっちも話すこと話せないじゃん。まあできれば話さない方がいいんだけど……
……ああそうだ、日常にはなんら変化がなかったけど……カードには少し変化があった。
フェルグラントが時折り赤い炎を放つようになった。以前のような青黒い炎ではなく、赤。恐らく地縛神が再び封印されたことが色の変化に関係しているんだろうけど……相変わらず何に反応しているのかはさっぱりだ。冥禪に聞いても「俺たちには感知できない何かを捉えているとしか思えない」だそうで……意思疎通ができない以上ただ首を傾げることしかできない。
まあ変化という変化はそのくらいだ、他は強いて言えばアカデミアでの「王子」呼びが更に悪化したくらい。なんだよあいつら……以前にも増してゆきのんに絡まれたりレインのお世話してるだけなのにやれ「目指せハーレム」だの「本命はどっち」だのあらぬ噂垂れ流しやがって……お陰でこっちは委員長やらツァンに真面目な話でもしかしてそういう趣味?って言われたりしたんだぞ……性自認がまだ微妙に男だから完全には否定できないのが微妙にムカつく、いっそ男に生まれていればよかったのに。
そんなこんなでデュエルアカデミアネオドミノ校は今日も平穏な変わらぬ毎日が繰り広げられている。何やらWRGPに向けて大規模な計画が動いているらしいけど僕には多分無関k……いや、今までの流れだと絶対何かあるな、用心しておこう。
ただいきなり何か変わるというわけでもない、そこまで気を張る必要は……
「ねえ鞍馬、ちょっといい?」
「ちょっとって……僕が基本暇なの知ってるだろ。というかよかろうがよくなかろうが強制連行でしょゆきのんは」
「あら、私の事よく分かってるじゃない。そういうところは好きよ?」
「ええ、よーく身に染みて理解していますとも」
……あったようだ。昼休み、学食でも食べに行こうかと思っていたら唐突に雪乃に押しかけられた。まあ珍しくないことだけど……今日は微妙に表情が真剣だ。ただ周りからはまたいつものが始まったとか思われてるのでやるなら場所を移して欲しい。
「で、何用?いつもの「ちょっと来なさい」じゃない分真面目な内容だとは思うけど」
「あら敏感、微妙な口説き文句の変化にも気付くのね貴方は。ちょっと意外」
「毎回思うけどその誤解を招く表現はやめてもらえないかな……」
「い・や・よ、生憎性分なの」
「いやな性分だなぁ……とりあえず此処で話すならちゃちゃっと済ませて、周りの視線が少し辛い」
「全くお子ちゃまねえ……この程度の視線で恥ずかしがるなんて」
「はいはいお子ちゃまで結構です……ほら早く、用件」
「あら、もうちょっと楽しんでいたかったのに……まあ、単刀直入に言いましょうか」
「鞍馬、貴方スタントマンに興味はないかしら?」
「……はい?」
……どういうこったい。
「……ノリと勢いで引き受けちゃったけど……本当に大丈夫なのかなこれぇ……」
「こういう場で緊張していると食べられちゃうわよ?ほら、平常心」
「言い方……ま、そうだね。深呼吸」
(まさかお前の身体能力がこうやって有効活用される時が来るとはな)
「僕自身こういうことになるなんて思ってもなかったよ……」
「私もまさか貴方に頼る事になるとは思っても見なかったわ……」
……紆余曲折を省いて説明すると僕は今映画のスタジオにいる。
経緯はこう。雪乃のお父さんが主演の映画でスタントマンが不慮の事故で負傷、撮影現場を離脱せざるを得なくなってしまった。そこまではまあ問題なかったんだけどここで代役のスタントマンがスケジュールの都合などで用意できなくて現場はてんやわんや、しかもクライマックスということでカットするわけにも行かず……という事情で僕の高校生にしては異常である身体能力に目を付けた雪乃が声をかけた、というわけである。
幾ら主演の娘だからって友達を紹介するなんて大丈夫なのか……とは当然言われたけど三角飛びで2階まで登ったりカード手裏剣の要領でワイヤー飛ばしたりなんて芸当を実演してなんとか納得してもらった……ちなみに何故かゆきのんは誇らしげだった、なんでだよ。
「……一応台本は読み込んだし、どういう動きをすればいいかも頭の中に入ってる。んで対戦相手が……」
「私のお父様、ね。丁度良いじゃない、顔合わせができて」
「なんのだよ」
「ご・あ・い・さ・つ」
「絶対に違うでしょ。そもそも僕と君は同性、それにゆきのんなら……」
「あら、私なら……何かしら?」
「……なんでもない、とりあえず打ち合わせ行ってくる」
「女を焦らす術なんて覚えちゃって……これ以上何人引っ掛ける気?」
「だから僕は!お・ん・な・だ!それと誤解を招く表現はやめろって毎回毎回……」
「もう少し素直になっても誰も責めないわよ?」
「はぁ……君のご両親がいない場所でよかったよほんと……行ってくる!」
「あら……そんなに恥ずかしかったのかしら……ほんと、素直じゃないのね」
「……直前にもう一度確認しますけど、合図があったタイミングであの崩れる足場に居ればいいんですね?」
「ああ、そこ以外は全部アドリブで格闘戦をやってくれと監督が」
「なんでまたそう極端な」
「曰く君に惚れ込んだ、だそうだ。あそこまで動けるスタントマンなんて早々居ないからね」
「だからってこっちに全部丸投げって……まあ別に構いませんけど、その、そちらの方は大丈夫なんです?全部アドリブなんて」
「ふっ、こっちも伊達に芸歴二桁ではないよ。当然合わせてみせるさ、君の方こそ遅れないでくれよ?」
「そりゃあありがたいですけど……なんでまた貴方まで僕に期待……というかそういう目線を……」
「まあ……そうだな、娘がわざわざ紹介してくるほどの子だから、かな?」
「は、はあ……?」
……撮影直前、僕は主演……ゆきのんの父親と最終打ち合わせをしていた。アクション監督が演者に殺陣を丸投げするとかいう前代未聞の事態に結構困惑していたが、ゆきのんの父親……紛らわしいので藤原さんと呼ぼう。彼が合わせてくれると自信満々に言ってくれたのだからまあ、大丈夫なのだろう……なんかすっごいスカウトマンみたいな目をしてるのは気になるけど。
「……そろそろですね、ちょっとあれ被ってきます」
「ああ、あれは少し視界が狭いがまだマシな方だ。うっかり落ちないでくれよ?」
「冗談、その程度で大失敗するようならゆきのん……じゃなかった、雪乃は僕を紹介なんてしませんよ」
「なるほど、そこまで進展していたか……」
「何がですか」
「いや、此方の話だ。後にしよう」
「は、はあ……」
……なんなんだよ藤原さんまで。後でっていうのが少し気になるけど……今は撮影の方に集中しよう。そういえば僕の役回りは主人公……藤原さんの敵組織のヒットマンらしい、顔は仮面で隠れているから背丈を靴で調整すれば割とどうにかなるということでゆきのんが僕を呼んだんだとか。身体つきでバレないかちょっと心配だが……まあなんとかなるでしょ、多分。
ちなみに仮面だが思ったより視界は悪くなかった、なんなら普段使ってる始末屋の仮面の方が視界が悪いまである。まああれは僕の自作だからってのもあるけど……今度遊星辺りに頼んで作ってもらうか。
「藤原さん、鞍馬さん!そろそろです!」
「よし、準備はいいかな「王子」君?」
「え、な、なんでそれを!?」
「いやぁ娘が最近よく話しててね、男ではないけど良い顔をする子が居るって」
「……なる、ほど?」
「まあそれも含めて後で話そう。今僕達は役者だ、芝居に真剣にならなきゃいい映像は取れない」
「……わかりました、胸を借りようと思います」
「練習ではないけどね」
「承知してます」
……もうやだ、王子呼びがアカデミア外にすら浸透してきてる……
「……肉体的なあれは、そこまでだけど……心労が、す、凄い……」
「お疲れ様。随分と激しかったじゃない、お父さんとは楽しめたかしら?」
「言い方ァ!……いやまあ、楽しめたっていうのはそうかな。あそこまで身体動かせたの結構久々だし……藤原さんも合わせてくれたというかほぼほぼ本気だったけどその分良い絵取れたんじゃない?監督満足気だったし」
「お父さんならあっちで息を切らしているわ。よっぽど激しかったのね、落ち着くまで立てないんじゃないかしら」
「だから言い方!?」
「あら、ナニを想像してたのかしら?」
「想像とかしてない!ないったらない!」
「んもう、素直じゃないんだから……」
……撮影自体はほぼほぼアドリブだったからかなんと1回目でOKが出た。こっちの空中蹴りやらワイヤーアクションに藤原さんが普通に付いてきたからつい興が乗ってしまって……気づいたら当てないだけで本気の格闘戦をしてしまっていた。ちなみにうっかり合図を逃しそうになったけど藤原さんが機転を利かせて僕を崩れる足場まで蹴り飛ばしてくれた、なんだかんだあの人もデュエルマッスル……かどうかは怪しいけど相当鍛えてるんだな、さすが俳優。
「んで……僕の出番これだけでいいんだよね?」
「確かこれだけの筈よ。他のカットは前のスタントマンで全て撮り終わっているし……ひとまずお疲れ様。帰りに一杯奢りましょうか?」
「ノンアルだよね?」
「確かにアルコールではないけどそんなケチくさい真似する訳ないじゃない。暗喩も分からないほど読解力がなかったかしら貴方?」
「ジョークだよジョーク……悪いけど多分無理、なんか藤原さんに話がしたいとか言われちゃってさ……」
「お父さんから?」
「うん、何かは分からないけど」
「……それなら仕方ないわね、また今度にさせてちょうだい」
「そうしてくれると助かる。にしても話ってなんだろうな……」
「私には大凡検討が付くのだけれど……まあ自分で考えないと貴方のためにならないわね」
「なーんか前にも別の奴に言われたなそれ……」
「つまり貴方は自他共に認める朴念仁ってことでいいのかしら」
「何がどうしたらそうなる……はあ、もう少し休憩……」
「添い寝でもしてあげましょうか?」
「あらぬ噂がこれ以上広がるのは勘弁……」
「釣れないわねぇ……」
「いやそれ以前に此処床だからね?」
相変わらずゆきのんに絡まれるとペースが乱される。主導権を奪えるのはいつになることやら……
「来たか鞍馬君。待っていたよ」
「こっちとしては待たせている以上申し訳ないんですが……」
「構わんさ、もう撮影は終わった、今の君は共演者ではなくただの客人さ。娘の連れてきた、ね」
「そんな彼氏みたいな……」
「違うのかい?」
「違いますし性別的に無理です……ひとまず本題に入って貰えませんか、このままだと何か嫌な予感が……」
「……なるほど、雪乃の気持ちがよく分かった気がするよ」
「今の流れで……?」
撮影所、広間。全体の撮影はほぼ完了して後は撤収……って時間、藤原さんはそんな時間にわざわざ僕を呼び出した。
「……さて、君もそう言ったことだし本題に入ろう。まあこっちはすぐに終わるさ」
「こっちはって、まるで要件がまだあるみたいな……」
「すぐにわかるさ。という訳で本題だが……」
「君、将来こっちの道に進むことは考えているかい?」
……ど直球でスカウトだな、これ。
「……正直悩んではいます。彼処まで身体を動かせる感覚はライディングデュエルともまた違う感覚ですし……ただ、今のところ目指しているのはプロデュエリストなんです。勝手が違い過ぎるかと」
「いや、プロデュエリストとこっちを兼業している者を見ないわけじゃない。皆オフシーズンの間やデュエルを題材にした映画など時期を選んではいるがね」
「ははあ……」
「まあ単刀直入に言ってしまおう。君がこの業界に欲しい」
「そんなことだろうと思ってましたよ」
やっぱりな。
「君のその実力、共演した身としては余りにも惜しい……まあ今すぐにとは言わないが、卒業までには答えが欲しい」
「……それまでに答えを出しておきます」
「頼んだよ……さて、本題「は」此処で終わりだ」
「……その徐に取り出したディスクで他の用件が何かは想像つきましたよ」
……念の為デッキ持ってきててよかった。
「聞けば君の実力はデュエルアカデミア最上位、そしてあのフォーチュンカップに出場し準決勝まで残ったそうじゃないか。私とて俳優である以前に一介のデュエリスト。挑んでみたいと思うのは当然だろう?」
「何か他の意図がある気もしますが……こっちとしても断る理由はありません、受けて立ちましょう」
「そう来なくてはな……では、始めようか!」
少し距離を取り、ディスクを構える。どういう意図かは知らないけど挑まれたデュエルから逃げるわけにも手加減するわけにも行かない。本気で行こう。
……気のせいかな、顔が彼氏を見定める親のそれだ。
もしヒロインを作るとしたら
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ゆきのん
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レイン
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まだ見ぬTFキャラ達
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寧ろ主人公がヒロインでは?