アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!? 作:文字の忍者-遅筆
「……何故僕を?他にも候補は居る筈ですが……」
「理由は色々ある、成績だったり実力だったり。少なくとも儂は君を大舞台に送り出すに相応しい生徒だと思っている」
「それは光栄な事ですが……」
……唐突な呼び出し、かと思えば突然のフォーチュンカップ出場の話。正直に言えばすっごい困惑している、本編そのままならともかく確認した限り此処はTFキャラが存在する時空。僕じゃなくても単純にアカデミアトップクラスの実力を持つツァンとか、話題性だけならゆきのんとか候補はいくらでもいる筈……本当、なんで僕が?
「……やはり気になるかね?我がデュエル・アカデミアネオドミノ分校の誇れる生徒達の中から君を選んだ理由が」
「ええ、言っちゃああれですが僕は特に話題性も取り柄もない生徒ですよ?学年トップだとか親の家柄とか……そういうのもありませんし」
「今回の選考においてそういったものは考慮しとらんよ」
「では余計に何故……?」
話を聞くたび疑問しか出てこない、いたたまれない気分になって校長には見えないであろうIKUSAにこっそり視線を向けてみるが……
(……)
相変わらずデュエル以外に関してはほぼ何も言ってくれない薄情者だ、というか呆れすら感じたぞ今の。
「……今回の選考に当たって儂はコッソリ生徒たちの様子を観察していた。授業だったり休み時間だったりね」
「それ言っちゃっていい奴なんです?」
「構わんよ……ともかく、そうやって儂はどの生徒を送り出すべきか考えていたのだ。確かにフォーチュンカップは大舞台だ、しかし生徒に一番必要なのは経験、結果ではない。勿論結果を軽んじているわけではないよ」
「はあ……すみません、話が見えてこないんですが……」
「鞍馬衣玖君」
「君は確かに成績優秀、実力もトップクラスで周囲からの評価も高い我が校自慢の生徒だ。だが……」
「……君の様子を見て確信したんだよ、君はデュエルを楽しめていない、とね」
「……」
楽しめていない、かぁ……まぁ、一理ある。
ただ僕が楽しんでいるのは相手を術中に嵌めること、相手がペースを握っているようにみせかけてここぞというタイミングでどんでん返し。相手が絶望する顔を見て楽しむ……うん、なんて悪趣味なんだろうか、我ながら酷いものである。そういうわけで楽しめていないわけじゃないんだけど……
「君自身分かっているかもしれないが……授業でのデュエルや友人とのデュエル。君はそれを楽しいものではなく……作業と捉えているように見えた」
「それは……」
……確かにそれは、ある。僕のデュエルは手札と対面を把握してなるべく最適解を取り続ける詰めデュエルのようなものだ。傍から見れば一々策が破られたからといって狼狽えるようなこともなければ運命のドローで一喜一憂することもない淡泊な絵面だし、負ける時はさっさと諦める。……アニメみたいな熱いデュエルがしたくないかと言われれば嘘になるけど、そんなことが実現できる対戦相手とは今の所巡り合ったことすらない。今のスタイルを作業と言われると否定できないな。
「単純に儂がそういう一面しか見れていないのかもしれないが……今の君に必要なのは強者との闘い、そして舞台だ。フォーチュンカップならばきっと君が欲しいものが見つかると、そう確信している」
「……」
「どうかね、この話を受けてくれるかい?」
正直な話出てはみたい。将来的にプロデュエリストを目指しているとはいえ今の実力がどの程度のものかは確かめてみたいし、本編キャラとも面と向き合ってデュエルしてみたい。
……ただ、厄介なのはフォーチュンカップで勝ってしまった場合の事。なんせフォーチュンカップは大会とは名ばかりのシグナー発見作戦で参加者はシグナ―以外全員グル。少なくともアカデミア枠なんてのがある理由がわからないくらいにはマッチポンプな案件だ。本編では結果的に主人公たる遊星が優勝してシグナーも無事発見。ゴドウィン長官の一人勝ちになった訳だけど……もし僕が勝ち進んでしまった場合下手をすれば筋書が崩壊する。最悪地縛神によって世界が滅んでしまう可能性も……
「鞍馬君?」
「……あ、すみません。考え事を」
「そうか、まあこちらとしてもそう簡単に決断を出せないことだとは理解している。無理に今決める必要もないとも」
どうする、個人の都合を優先するか、世界の命運を優先するか……
「……」
(……)
「……そっか、うん、そうだね」
「鞍馬君?」
「はい、決めました」
少し助けを求めてまたIKUSAに視線を回せば、彼は相変わらず表情は見えないけど好きにしろとでも言いたそうな素振りを見せた。うん、そうだよな。あくまで本編は本編、僕が生きるこの世界はこの世界。だったら少しくらい我儘になっても……いい筈だ。
「フォーチュンカップの話、受けようと思います。校長の言う通り……もしかしたら僕の欲しいもの、見つかるかもしれませんから」
「わかった、ではこちらから話を通しておこう……私には応援くらいしかできないが、それは許してくれたまえ」
「大丈夫です、デュエリストは誰かと助け合うことはあっても頼っちゃいけないってどこかで聞いた気がしますから」
「それは少し違うと思うが……まあいい。頑張ってきなさい」
「はい……あれ、話はこれで終わりですよね?」
「ああ大丈夫、これ以上話はないよ。君は優秀な生徒だからね」
「分かりました、それでは」
一応探りを入れておいたがどうも「バイト」のことはバレていない様子、よかったよかった。深夜徘徊に違法デュエルとバレたらタダじゃすまないし……なんでやってるのか?……事情があるのさ、色々と。
にしてもフォーチュンカップかぁ……勝てるかな、いや、勝とう。
OCGプレイヤーとしての知識と未来のカード、2つもズルをしているんだ。これで負けたら宝の持ち腐れ、絶対に勝ってキング……ジャック・アトラスとデュエルする。
そうと決まればデッキ調整だ、早いうちに……ん?
「……げ、また仕事のメール……」
そういえば週末だけにしようかなーとは言ってたけど実行には移してなかった……まあ仕方ないし依頼と料金だけ確認して……って、へ?
これって……
『……凄まじいな、あれが黒薔薇の魔女』
……夕刻。ネオドミノシティ、ダイモンエリア。
訳アリな奴らが集うこの場所にわざわざ始末屋の恰好で足を運んでいる理由……まあ簡単に言えば「仕事」である。それもメール、郵便を経由した明らかにただ事ではない依頼だ。
内容だけ言えば「黒薔薇の魔女の動向の監視、そして可能であれば不動遊星とデュエルすること。勝敗は問わない」……とのこと、まさかの主人公とデュエルしてこいである。恐らくはどこかから依頼主はこちらを見てることだろう……というか依頼主多分治安維持局だなこれ?そうじゃなきゃ黒薔薇の魔女こと十六夜アキはともかく現状ただのサテライト住民である遊星とのデュエルなんて依頼を投げつけてくるわけがない。
まあつまりは……シグナーの実力を判断する叩き台にされたってとこかな。あんまり気分は良くないけど……やるからには全力で行かせてもらう。
『……あれか』
先刻黒薔薇の魔女のサイコデュエルによる被害で人が消え始めているデュエルコートの一角、そこに主人公……不動遊星は居た。えーっと周りに居るのは龍可と……ああそうだ、収容所組か。カードの知識はほぼ覚えているけど本編に関しては大雑把にしか覚えてないからこうしてキャラの名前を忘れることがある。どうせ本編には関わらないしとあまり気にしないでいたけど……こうなるとちょっと事情が変わるな、何とか思い出そう。
しかしどう吹っ掛けたものか……あ、そうだ。あれがあるじゃん、やろう。
『……』
フードの中から予備のカードを引き抜き、勢いのままにこの場を去ろうとする遊星の前目掛けて投擲。遊戯王アニメ名物、カード手裏剣である。現実でやろうものならいろんな意味でとんでもないことになるが此処はアニメ世界。異常な耐久力のカードは手裏剣程度では傷一つ付かないのだ……いやなんで?
「なっ……」
「か、カードが刺さったぁ!?」
「……野郎、明らかに遊星目掛けて投げてきやがった」
反応は上々。それでは満を持して……いや、ちょっと緊張してきたな、落ち着け。
『不動遊星だな?』
一旦深呼吸で息を整え、今度こそ満を持して遊星の前に登場。アンカーは……使わなくていい、今回の目的はデュエルであってディスクの破壊ではない。それに彼ならばきっとデュエルに乗ってくれることだろう。
「……誰だお前は」
『私に名はない。だが……人は私を「始末屋」と呼ぶ』
「始末屋……?」
「……あーっ!」
「典膳?」
「どうした、知ってんのか?」
「噂で聞いたことがある……シティで悪いことをしてると必ず現れてデュエルディスクを破壊しにくるっていう裏のデュエリスト「始末屋」!」
え、私其処まで名前知られてるの?
「ああ……俺も小耳に挟んだことがある。なんでも始末屋と戦ったデュエリストはそのディスクのみならず、二度とデュエルができないほどその魂とプライドをへし折られる、なんて噂もあるくらいだ。実際どうかはしらんがな」
……またそれか。確かに余裕があるときについやってしまうことはあるが……プライドをへし折るとかのレベルではない筈だぞ?
「じ、じゃあ……あの始末屋って人、もしかして遊星のディスクを……!?」
『違うな、ディスクを破壊するつもりならとうにその準備は終わっている』
「……お前は何処からの差し金だ、始末屋」
『それに応える義務はない。そしてこちらの要件はただ一つ……』
『私とデュエルをしろ、不動遊星。それが今回の「仕事」だ』
「……断る、今の俺にはお前とデュエルする理由はない」
……あれぇ?なんか普通に断られそうだぞぉ?
それはまずい、非常にまずい。何か手段は……あ、そういえば。
『挑まれたデュエルから逃げるとは……その様子ではお前はジャック・アトラスに挑むどころかフォーチュンカップすら勝ち上がれまい』
「何?」
『勝負事から逃げる者は勝てる勝負も勝てない、ということだ』
……丁度遊星がフォーチュンカップに出場するという情報は貰っていた。これをダシにして釣れればいいが……
「はっ、何を言うかと思えば見え透いた挑発か。遊星、乗ってやる必要は「いいだろう、その勝負受ける」なっ!?」
「すまない氷室。だが奴は俺がフォーチュンカップに出場するという情報を知っている。つまりは……」
「治安維持局の手先の可能性がある……ってことか、成程な」
よし、釣れた。
「「始末屋」、条件がある。もし俺が勝った場合……知っていることを吐いてもらおうか」
『了承しよう、私は嘘を付かない』
こちらとしては依頼は匿名。遊星はサテライト住民でフォーチュンカップに出場するということしか知らない。無論
『では始めようか』
「ああ……皆、下がっていてくれ」
「うん……あんなのに負けちゃダメだよ、遊星!」
『あんなの……』
……ちょっと傷つく。まあいいや、気を取り直して……
「行くぞ始末屋!」
『来い、不動遊星』
実は夢見てた本編キャラとのデュエル……
全力で行こう!IKUSA!
(……)
……なーんか今露骨に目を逸らされたような……気のせいかな?
平和なシティとマッポーなるサテライト。
その狭間であるダイモンシティにて、今新たな戦いの火蓋が切って落とされた。
主人公にはどういう活躍を期待している?
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蹂躙、無双
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いい感じの熱いデュエル
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ギリギリを演じる2枚目