それ〝最強〟ってことじゃんか   作:渚 龍騎

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妖怪も宇宙人もいるんだから、当然呪霊もいる。
強い相手と戦うなら、適当に壁とか殴りまくって黒閃が出てから奇襲をかけましょう。

※ダンダダン漫画のネタバレがあります。時系列はおいおい決めていきます。


一話 最強再臨

 

 

 

 重力制御装置──起動。

 ────予備動作問題なし。

 

 目標を捜索。時空連続体に接続開始──完了。

 時間軸逆転。過去を対象に演算開始。

 

 

 ────算出。

 

 

 二つの生命体を発見。個体値から、類似する他生命体を検索──検索結果無し。個体値が高過ぎる。

 結論──これらを同時に召喚することは不可能。

 

 推奨──一体を召喚。従属化及び記憶の改竄。もしくは意識の乗っ取り。

 予測──この個体から算出された作戦の成功率は98.8パーセント。あの惑星(ほし)を征服するには充分な値。

 

 

『分かった』

 

 

 見上げなければならないほど大きなスクリーンを前に、()()()はその触手のような腕でパネルに触れる。画面に映し出された二人の人間を見つめて、()()()はどちらの人間を召喚するのか議論した。

 

 結果が出るのは、案外早かった。

 誰もが()の在り方に疑問を抱いていたからだ。彼は、人間と呼ぶには些か異形だった。

 邪悪にして、恐怖の権化。過去に犯した出来事の全てを網羅して、()()()()の力は疑わずとも、その中身が作戦を壊しかねないと判断した。

 

 自ずと導かれたのは、もう片方の人間。

 異形と同等の個体値を持ったこの男を、地球征服の為の道具として()()()は選んだ。

 

 

 ────術式、展開。

 

 

 ────地球中枢、記憶域に接続開始。

 

 

 宇宙は一つではない。()()()は地球を征服する為に、別の宇宙の別の地球に存在していた不可思議な異能を過去そのものから呼び出し、自身の手中に納める。解析不可能な異能を自分らのテクノロジーと組み合わせ、更なる力を得る。そして様々な宇宙に飛び立ち、支配し征服していく算段だった。

 

 

 ──人類は、そのヒトを()()と呼んでいた。

 

 

 高度なテクノロジーは人知を超えた仕組みで動き出す。幾何学模様が無数に空中で漂い、蒼い稲妻が辺りの機器類に撒き散らされながら轟音を響かせた。

 召喚しようとしている対象の膨大なエネルギー量に、()()()のシステムがオーバーヒートをしていた。

 

 

『──素晴らしい』

 

 

 ()()()は歓喜に満ちていた。

 人間の身でありながら、外宇宙のテクノロジーと同等かそれ以上の力を持っている。そのヒトを自分の手にできるのだと、嬉々としてその光景を見守っていた。

 

 

 ──素晴らしい──すばらしい──スバラシイ──スバらしい──素晴らしい──素晴らしい──スバラシイ──スバらしい────。

 

 

 広大な宇宙を行き来する渡り船──地球ではそれを宇宙船と、情熱と浪漫を込めてそう呼んでいた。

 その夢が詰め込まれた宇宙船が、ヒトを一人召喚するだけで(ごう)と揺れていた。

 

 

 ─────特異点、解放。

 

 

 空間が渦を巻いて歪んでいく。蒼い稲妻が徐々に空間に穴を開けていき、数多の粒子が地球の記憶を読み取り、()の身体を構築する。なにも存在していなかった場所に光の粒子が徐々に人の形を形成していき、次に精神を再構築。そして最後に、絶対に必要なものがある。人が人である以前に、命ある生物であるが為に無くてはならないもの。

 

 

 

 人々はそれを────〝魂〟と呼んでいた。

 

 

 

 魂、及び精神を外部の干渉から守る身体。空っぽの身体(うつわ)を満たす精神。そして生命を生命たらしめる為の根源である魂。

 損傷した肉体をどれだけ治癒しようと、新たな肉体を完璧に模倣しようとも、その中身に〝魂〟が無ければ人であるどころか生命にすら成り得ない。

 

 

 ─────肉体模倣完了。

 

 

 そこで必要になるのが、()()()が生み出したテクノロジーだ。

 惑星には必ず宿る核──それは星を生み出しただけの膨大なエネルギーと共に、そこには生まれた生命の情報を宿す記憶域が存在している。()()()は核に接続し、時間軸に干渉。時空連続体を遡って、過去に散った生命の魂の情報を降ろす。降霊に近いが、それよりも高度な術式だった。まさに神業────、

 

 

 ────記憶域に接続完了。

 ────魂の情報を肉体に降下。

 

 

 人間の倫理に反する悪業そのものだった。

 死んだ人間を、新たな肉体と共にそのまま現代に蘇らせる。これほどの神業を人間が行わないのは、その技術が無いと同時に終わりこそを美しいと謳っているからだ。

 だが()()()には倫理など心底どうでもいい。

 宇宙を我が物にする為なら、どんな鏖殺も厭わない。

 

 

 

 ────肉体の再現率 90.08%

 ────魂の悉皆まで、残り──、

 

 

 

 カウントダウンが始まる。数字が徐々に減っていき、()()()の感情は昂ぶっていた。そしてそれがゼロを示した直後に、総ては滞りなく完成を迎えた。

 爆発音が響く。システムがエラーを発しながらも、作業の工程すべてを完了させた通知が画面に表示される。撒き散った白煙が船内に遍き、オーバーヒートした機器類が火花を散らした。

 

 白煙の中で、人影が揺らぐ。身長は約190センチと()()()の戦闘スーツに比べて小柄だが、漠然とした力を肉体にひしひしと感じられた。

 

 

「…………傑?」

 

 

 人間は妙に長い腕で頭を掻きながら、誰かを探すように白煙で埋まった辺りを見渡していた。

 漆黒に溶け込む制服を纏い、革靴が甲板を叩く音が反響する。そして足音が消えた瞬間に、人間は()()()の背後に回っていた。

 

 

「あんたら何者? タコの呪霊? ってか、ここ煙過ぎ」

 

 

 人間は真っ黒なサングラスの奥から鋭い眼差しで()()()を睨む。敵意を剥き出している人間に向けて、戦闘用スーツを身に纏っていた()()()の数体が銃口を構えた。

 だが、指揮系統を担っていた()()()の一体が目の前まで歩み寄っていき、人間は恐怖に満ちるどころか「マジか」と口に出した。

 

 

『我々は惑星■■■■から来た』

「すっげー絵に描いたような宇宙人だと思ったわ。というか、惑星の名前まったく聞き取れなかったんだけど」

『君を蘇らせたのは、これから向かう別の地球を我らの手にする為ダ』

「別の地球って……あー、マルチバースてきな?」

 

 

 人間の理解力とは末恐ろしいものだな、と()()()は人類の技術が自分たちよりも圧倒的に劣っているにも関わらず感嘆と頷く。目の前の人間は向けられている戦闘兵器の恐ろしさなど知らずに、そこで腰に手を当てた。

 

 

『人類の理論ではそう呼ばれているらしい。そこで、数多の惑星から最強の個体を選別して我らの戦力と加え、宇宙を支配しているのダ』

「へえ、そういうのってウルトラマンが許してくれないんじゃない?」

『なんダそれは?』

 

 

 ウルトラマン知らないのかよ、と僅かに肩を落とす人間。戯言に付き合うつもりもない()()()は巨大なスクリーンに映し出されている地球を指差した。

 

 

『我々は地球の重力の所為で長時間の活動ができない。そこで手始めに君の力で、人間の社会的機能を削いでもらう』

「それ、僕にメリットあんの?」

『拒否権があるとでも? 例え君の力がどれほど強力であっても、それは人間的な範疇に過ぎない。我々の技術には勝てない』

 

 

 ()()()は無駄に長い触手のような腕を鷹揚と広げ、キキキと不敵に笑いながら語った。

 

 

『君が我々に協力すれば、報酬は弾む。我らの所有する仮想通貨で永遠の安泰を約束しよう』

「それ、映画とか見放題ってこと?」

『映画? 人間の娯楽か、それもイイだろう』

 

 

 なるほどね、と人間は顎に手を置く。()()()がゆっくりと触手の腕を差し伸べ、人間に協力を仰ぐ素振りを見せた。

 真っ白な髪が靡き、人間は腕を組んで考えるなり即座に笑顔を浮かべた。

 

 

 

「僕は古い人間だからさ、現金しか対応してないんだよね」

 

 

 

 瞬間──手を差し伸べた宇宙人が言葉の意味を察するまでもなく身体が吹き飛ぶ。軟体生物のような身体を穿ち、不可思議な液体が辺りに飛び散る。その刹那に攻撃を察知した()()()が慌てて引き金を引き絞った。

 

 閃光が瞬き、銃声が響くのと同時に集束されたエネルギー弾が人間に向かって放たれる。本来であれば人間がどんな装備をしていようと簡単に貫通できる威力だ──その光線は人間に命中し、爆炎で辺りの空間を吹き飛ばした。

 

 

『勿体ナイ』

『おロカだ』

『人間ノ最強トワ、こんなモノか』

 

 

 口々に呆れの声を漏らす宇宙人。指揮系統を担っていたモノの死体を見つめていると、爆発が起こった先で溜め息が聞こえた。

 宇宙人たちが慌てて振り返る。そこには確実に吹っ飛ばしたはずの人間が傷一つなく平然と立っていた。

 

 

「誰が、こんなものだって?」

 

 

 人間はサングラスを取って、宙に浮かんでいた。

 宇宙人たちを睥睨しながら、苛立った様子で乱雑に頭を掻く。その一瞬の油断を逃さずに、宇宙人は装備したスーツの圧倒的な巨躯と怪力に任せて勢い良く拳を振り下ろした。

 船内の大気が一気に圧縮され、圧倒的な暴風が巻き起こる。普通の人間が受ければただでは済まない。運が良くても致命傷だ。しかし、宇宙人は驚愕で声を荒げた。

 

 

『な、ナンダと……っ!?』

 

 

 渾身の力で振り下ろした拳は、人間に命中することなく空間()()()()に阻まれているようだった。

 触れられないのだ。どれだけ力を込めても、拳が人間との距離を詰めることはできない。

 人間は何もせずに、ポケットに手を入れたまま宇宙人を見上げる。そして不敵な笑みを浮かべた直後に、人間の姿がまたもや一瞬で消えた。

 

 

『──どこダっ!?』

 

 

 身に付けたパワードスーツの視覚機能で、人間の動きを見渡すが、それすらも捉えられない程に速い。四方八方に高速で移動しながらも、人間は確実に宇宙人の数を減らしていった。

 だが、宇宙船間を繋ぐポータルからまた新たに宇宙人が姿を現し、人間は高速での移動を止める。はあ、と面倒くさげな溜め息を漏らしてから口を開いた。

 

 

「──〝位相〟」

 

 

 呪詞による詠唱の開始。呪力の起こりが始まる。人間の肉体に有り余るほどのエネルギーを感じながら、宇宙人たちはその圧倒的な威圧感に圧されて後退った。

 

 

「──〝波羅蜜〟」

 

 

 人間の指の先で、赤い閃光が渦を巻きながら集束する。体内に駆け巡る呪力が無限を現実に反映し、呪詞によって威力が底上げされていった。

 危険を察知した宇宙人たちは慌てて背を向けて逃走するが、それを待たずに人間は最後の呪詞を唱えた。

 

 

「──〝光の柱〟」

 

 

 この人間が扱う異能とは、宇宙人の技術を以てしても再現することができなかった、人類にだけ与えられた天賦の才。更にその中でも、この男が使用する力は群を抜いていた。

 

 

()は寝起きが悪くて、今は穏やかじゃないんでね」

 

 

 人間は軽口を叩いてから、指先を宇宙人へ向けた。

 それはまさに〝無限〟の実現。無限の収束と無限の発散に加えて、概念上の相対距離をも無限にする最強の矛と盾を兼ね備えた、まさに人類最強の異能。

 

 

「──術式反転〝赫〟」

 

 

 刹那──真紅の虚空が、空間を穿った。

 衝撃に次ぐ衝撃が宇宙人たちを消し飛ばし、宇宙船内で大爆発を起こす。紅く染まった衝撃波は宇宙人だけでなく宇宙船内の機械類をも破壊。〝赫〟による破壊が終わる頃には、船内に宇宙人の姿は一つとして存在せず、人間はゆっくりと降り立った。

 

 

「はあ、まったく……」

 

 

 溜め息を漏らした男は、辺りを見渡してから真っ黒な金属で埋め尽くされた天井を見上げる。なにもかもが消えてしまった静謐な船内で、人類最強と謳われた彼はたった独りで頭を抑えた。

 

 

「蘇らせたって言ってたけど、どうしたら戻れるんだよ……」

 

 

 舌打ちを漏らす。そこで宇宙人たちの増援が送られてきたポータルを思い出した。

 視線を向けてからゆっくりと歩み寄ったが、赫による破壊の影響で僅かに損傷しているようだった。

 

 

「これ使えば地球に戻れる? ていうか、宇宙にいる感覚がまったくしないな……」

 

 

 宇宙といえば無重力でふわふわと浮く──そんなイメージを膨らませながら、ガラスの外を見つめた。

 そこには無数の煌めきが闇を照らしている光景があった。街灯の淡い光の一つとして存在しない闇夜を見上げているような感覚だ。惑星の一つでも見えなければ此処が宇宙とは思えなかった。

 だが、それを覆す光景が別に広がっていた。

 

 

「うわ、マジか……」

 

 

 星が輝くのとは違った光。そこには無数の見たこともないような──否、漫画や映画で散々見たことのある宇宙船が無数に浮かんでいたのだ。

 惑星を見る以外に、自分が宇宙にいると確信させるには充分な光景だった。それと同時に此処が自分のいた世界とは別であることも理解した。

 

 

「さて、ここからどうするかな」

 

 

 男の脳裏に浮かんだ選択肢は、地球を救う為にここにある宇宙船を壊滅させるか元の世界へと帰るかの二択だ。ただし、宇宙空間では男の異能は働かない。もちろん空気がなければ男は生きられない。

 腕を組み、ポータルを見つめる。そこで男は「よし」と呟いて、ポータルへと踵を返した。

 

 

「僕を生き返らせる技術を持っていて、とんでもない装備をしてるのにも関わらず地球を直ぐに襲えない──それには何か理由がある」

 

 

 ポータルの横にあるタッチパネルに触れて、スクリーンに映し出された地球をタッチする。操作も、それがどういう装置であるのかも、すべては男の勘でしかなかった。

 映画で腐るほど見た知識のおかげかもしれない。

 結局はそのポータルが本当に転移装置である確証もない。だがそれでも、そこに賭けるしかなかった。

 

 

「はあ、面倒な事に巻き込まれちゃったかな」

 

 

 ポータルに足を踏み入れて、男はガラスの外を見つめる。脳裏に過ぎった親友たちの姿を感情の中に埋めて、小さな声で「ふっ」と笑った。

 現代における最強の呪術師────五条 悟はその美しい瞳にサングラスを掛けて呟いた。

 

 

「もう少し、そっちに戻るのは遅くなるかもしれない。まあでも、これが片付いたら直ぐに戻れるさ。方法はよく分からないけど」

 

 

 誰もいない空間で、誰にでも伝える訳ない言葉を天に向けて囁く。そして五条悟はポータルの中で光に包まれて消える。その目的地は、五条悟が生まれ育った地球とはまた別の地球。宇宙人に侵略されようとしている、UMAや妖怪が跋扈する別の地球へと───、

 

 

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