ゼーロ様、呪術界に殴り込む。   作:うみじゃけ

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(ドゥ)話 《呪霊を人間にする術式》

「……お前ら、何度やれば気が済むんだ」

 

「「「…………」」」

 

 

 翌日の呪術高専にて、五条、夏油、家入は3人とも正座して担任である夜蛾に説教を喰らっていた。

 

 

「なんかが飛び出す前で良かったものの……見ろ、『黒い月の下に浮かぶミステリーサークル』——テメェらがこの前やらかした屋敷倒壊よりもヒデェことになってんぞ!」

 

「せんせー! 黒い月の時点でどうしようもなくないですかー!」

 

「どうしようもないのをどうにかすんのが呪術師だ。こんなんで2人に星漿体の護衛を任せられるものか……」

 

「それは先生。特級呪術師の私達以上の適任者が見つかればの話ですね」

 

「ガッテム……とりあえず五条と夏油の2人は護衛の方に言ってもらう。時間はまだ早いが遅いよりはいいだろう」

 

「はーい」「じゃあね硝子」

 

「あっ、ちょっ……私だけ説教継続ですか?」

 

「説教は俺もたくさんだ。それより……ゼーロのことだ」

 

 

 一方のゼーロと言えば、呪術高専の校庭で1年の灰原雄と七海健人に混じって遊んでいた。

 

 

「GRの力、オーラの力、ないー!」

 

「ゲキャ!」

 

 

 ゼーロは意味深なことを呟きながら校庭を走り回り、時に転びながらも無邪気に駆けていく。灰原と七海はゼーロが古本や錘で作り出した呪骸をしげしげと眺めていた。

 

 

「ホントに呪骸になってるっ、ゼーロくん凄いよ!」

 

「じゅがい、違う。堕魔(ダーマ)

 

「そっか! 名前は大切だもんね!」

 

「しかも半自動的に動いている。数という側面を考えれば、夜蛾先生の術式と大差ない実力と見てよさそうですね」

 

 

 それらを夜蛾と家入は校舎の窓辺から見守っていた。

 

 

「昨日の事情聴取からわかったことだが、やはり身体は人間だが中身は全くの別物だ」

 

「呪霊ってことですか?」

 

「呪力から、そう考えられる。加えてゼーロは食事の方法もなっていなかった……飯を食ったことがなかったようだった。それとゼーロの話していたことは眉唾もいいところだが——それでも他に説明できる理由もないのでな——ゼーロは別の世界で一度死んだという」

 

「一度、死んだ……」

 

 

 信じられないとばかりに家入は懐からタバコを取り出し、教師の前だというのにおもむろに吸い始めた。

 

 

「それが並行世界だの異世界だの、そんな小難しい話は抜きにする。だがゼーロは死に、再び生を受けたと考えられる……そう考える他に今のところ考えられない」

 

「呪霊が死んで……人間になったと?」

 

「そういった術式があるのやもしれん。だがそれならばさらに話が難しくなる——呪霊を人間にできるのなら、その反転……人間を呪霊にできる術式があるということだ。お前らの話によると、ゼーロは無機物を呪骸に、呪骸を媒介として呪霊を何もないところから呼び出した、だったな。そのプロセスの先、あるいは応用や基礎としてその術式があるかもしれない」

 

「しかもその呪霊、夏油が取り込めないっていう性質持ちですしね」

 

 

 『本当に存在すれば厄介になる』と夜蛾は続け、さらに『秘匿死刑も考えられたが、その術式を持つ呪詛師がいるかもしれない以上、手掛かりを消す訳にもいかんと決まった』とサングラスを正した。

 

 

「でも……良かった。私たちからしても敵意はまるでないですし、人間だっていうならあの力も出来れば人の役に立ててほしいですから」

 

「今のところ呪術高専で世話を見ることになっているが、ゼーロの様子を見て、できれば転入生として――」

 

 

 夜蛾がそう言いかけて、『あ』と家入とともに零した。

 

 2人の視線の先、ゼーロが七海と灰原に堕魔をけしかけていたのだ。

 

 

「グリペイジ! ドゥスン!」

 

「あーあー」

 

 

 家入がどうしようもなさそうに呟き、夜蛾は額を右手で覆っていた……が、七海と灰原は悪い気はしておらず、むしろ模擬戦を心得たようで各々構えて迎えていた。

 

 

「「ゲヒャヒャヒャヒャ!」」

 

「来るッ……あ、れ……右手の呪力が霧散した!」

 

「身体が重い……呪骸にも術式があるのか」

 

 

 堕魔達の特殊な能力に2人は一瞬驚くものの、しかし2体の突進攻撃を容易く避けて反撃に移る。

 

 

「――【十劃呪法】」

 

 

 七海の生得術式。対象の長さを線分した時に7:3の比率の点に強制的に弱点を作り出す術式である。

 

 七海は自重に任せて突撃してきた錘の堕魔の縦から7:3の比率の点に呪力で強化した拳を叩きつける。

 

 

「左手なら間に合う!」

 

 

 灰原はペラペラと飛びながら襲い掛かってくる本の堕魔を呪力で強化した左拳の一撃で撃ち抜いた。

 

 

「硬い……」

 

「それぞれ三級といったところでしょうか」

 

「凄い! どっちも一撃で壊した!」

 

 

 ゼーロは呪核を壊されて地に伏す堕魔達に見向きもせず、2人の攻撃に嬉しそうに手を打った。

 

 

「くひひっ……ドゥザイコ!」

 

 

 しかし攻撃の手を弱めず、サイコロを2つバラまいてそれを堕魔にさせる……白面の小さなそれが喜怒哀楽の顔を持つ黄色いサイコロに変化した。

 

 

「ああやって呪骸を生成しているのですね」

 

「呪骸じゃなくて堕魔だって。って、倒したヤツも……!」

 

 

 灰原の指摘した通り、2人が倒した堕魔がゼーロの黒い呪力を纏ってふわふわと浮かび出し……サイコロの堕魔達と一緒に空を旋回していった。

 

 

(グリ)(ドゥ)(ザン)……(ゼーロ)!」

 

 

 4体の堕魔が一斉にぶつかってその身に宿っていた呪力を散らし、円状の陣として空を彩る――その陣越しに見える太陽は昨日の夜の月のように黒く染まっている。

 

 

「開け、《無月の門》!」

 

 

 ゼーロが愉快そうに頭の上で両手の爪を合わせて○のポーズをすると空の円陣が4つの扉に開き、そこから紫色の炎が校庭へと降り注ぐ。

 

 

「ストロング・ゲドー!」

 

 

 降り注いだ炎は地面に突き刺さった剣を形作り、柄を掴む腕が炎から生み出されたかと思えば剣を抜き、そのまま剣を構える剣士へと成った。

 

 

 

 ――ストロング・ゲドー 卍。二級クラスの呪霊であった。

 

 

 

「壊す……遊ぶ!」

 

 

 ゼーロは無邪気に笑っていた。

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