異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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霊山での戦い

……………………

 

 ──霊山での戦い

 

 

 炎が地上を飲む。

 

 ドローンによって探知された熱源に向けてデータリンクしているパワード・リフト機がロケット弾で攻撃を浴びせたのだ。

 

 口径70ミリのロケットは次々に発射され、弾頭のサーモバリック弾が炸裂する。

 

「航空支援に感謝する、ドードー・ゼロ・ワン」

 

『お安い御用だ』

 

 太平洋保安公司の前線航空管制官(FAC)が礼を述べるのに、パワード・リフト機は飛び去っていった。

 

「前進してくれ、大佐」

 

「無論だ」

 

 軍事コンサルタントがそういい、スーリオン大佐が尊大に頷く。

 

 今のところ近衛第2猟兵連隊には装甲車の類は供与されていない。彼らはその手の装備について訓練中であり、今のところは誰でも使えるテクニカルだけが車両装備として供与されていた。

 

 しかし、霊山の道は巡礼用のほとんど未整備のものだし、霊山のほとんどは険しい山肌と森林地帯だ。それゆえに車両による支援は限定されている。

 

「ドローンの映像を絶えず確認しろ。決して待ち伏せはさせるな」

 

 軍事コンサルタントはそう指示し、ドローンを操作する太平洋保安公司のコントラクターたちは警戒を密にする。

 

 今の戦況は一方的なものだ。

 

 霊山に籠ったダークエルフたちは包囲網を狭める近衛第2猟兵連隊に追い詰められている。爆撃と砲撃が彼らを追い立て、歩兵と車両が包囲網をじわじわと締めていく。

 

「クソ! 俺は戦って死ぬ!」

 

「馬鹿! やめろ!」

 

 自棄になったダークエルフの若い戦士が弓だけを手に、近衛第2猟兵連隊に攻撃を仕掛けようとしては迫撃砲の砲撃か、パワード・リフト機やドローンによる爆撃に晒されて仲間たちとともに死んでいく。

 

「怪我人だらけだ! 誰か治癒魔法を!」

 

「こっちにも治癒魔法を頼む! この怪我人は今にも死にそうだ!」

 

 負傷者たちが安全な山腹に掘られた神殿の中に運び込まれていたが、治療のための医薬品も、治癒魔法が使える医者も少なく、彼らは死を待つばかりであった。

 

 しかも、その神殿に向けてパワード・リフト機は攻撃を仕掛けてくる。航空爆弾が次々に投下され、何度も対戦車ミサイルが叩き込まれ、神殿は揺さぶられ、今にも崩れようとしていた。

 

「敵は山腹のトンネルを拠点に抵抗している」

 

 軍事コンサルタントはドローンからの映像を示してそういう。

 

「このまま包囲をこのトンネルまで狭めたい。今の進軍速度なら十分だろう」

 

「分かった。このまま部下たちを前進させる」

 

 スーリオン大佐は助言に同意し、部下たちをトンネルを目指して進めた。

 

 まだ戦えるダークエルフたちは必死に身を隠して、迫る近衛第2猟兵連隊に一撃を与えようとするが、ドローンは必ず見つけ出してしまう。奇襲は成功せず、砲爆撃を受けて撃破されていった。

 

「いいぞ、いいぞ。ダークエルフどもを皆殺しにしろ。死んだダークエルフだけがいいダークエルフだ! はははっ!」

 

 スーリオン大佐はときおり生き残って拘束されたダークエルフの捕虜を金メッキのリボルバーで射殺しながら、部下たちを鼓舞して前進しさせていく。

 

 死体が、死体が、死体が、それが進むたびに増え続け、神聖な霊山に人体のパーツが散らばっている。四肢が、頭が、脳漿が、内臓が、まき散らされては聖地をグロテスクに彩っていく。

 

「畜生。あの鳥のせいで……!」

 

 パワード・リフト機が情け容赦のない攻撃を繰り返すのに、ダークエルフたちはパワード・リフト機に向けて矢を放つ。だが、それは全く届くこともなく、届いたとしても装甲に弾かれていただろう。

 

 抵抗は粉砕され、足掻きは無駄に終わり、ダークエルフたちは近衛第2猟兵連隊による山狩りによって追い詰められていった。

 

 しかし、ここで外からダークエルフたちを助けようとするものがいた。

 

 部族評議会だ。長老たちは霊山に座り込んでいたものたちの助命を求めて、大井の方に接触してきたのであった。

 

「どうか彼らを殺さないでやってほしい」

 

 大井側の窓口となる保安部門のヴァンデクリフトに長老たちがそう頼む。

 

「我々としても無益な殺生は望んでいない」

 

 その長老たちの求めにヴァンデクリフトはそういう。

 

「あなた方が現在山に立て籠もっている人間に降伏を進め、山から下りて、二度と山に入らないと約束するのであれば、我々は攻撃を停止しましょう」

 

「あの山は我々の聖地だぞ」

 

「では、攻撃を続けざるを得ませんね。自主的に立ち退かないならば、強制的にやるしかないのですから」

 

 ヴァンデクリフトは抗議する長老たちにそう言い放った。

 

「今は聖地より同胞たちの命の方が大事」

 

「ギルサリオン! しかし……!」

 

「私の責任において命じる。霊山から退去するのだ」

 

 部族評議会議長のギルサリオンが険しい表情でそう命じる。

 

「では、降伏の勧告をお願いします」

 

 ギルサリオンはヴァンデクリフトと太平洋保安公司のコントラクターに連れられて、霊山の方へと向かって行った。

 

 霊山では依然として戦闘が進行中であり、太平洋保安公司のパワード・リフト機が攻撃を仕掛けては爆発が起きていた。

 

「皆の者! 今は山から引くのだ! このままでは皆が殺されてしまう!」

 

 ギルサリオンはパワード・リフト機で山を登り、ダークエルフたちが抵抗拠点としている神殿に向けて、拡声器で呼び掛けた。

 

「何故、我々が引かなければならないのだ!」

 

「そうだ! この霊山は我々の聖地! 引くなどあり得ない!」

 

 しかし、まだ戦えるとする若い戦士たちは降伏を拒む。

 

「愚か者ども! 今ここで死ねば霊山は奪われたまま、フィリアン・カールの他の大地も奪われるだろう! 死ぬのは逃げである! 真に勇敢であれば、死なずに生きて、泥を啜ってでも生き延びよ!」

 

 ギルサリオンはそんな戦士たちをそう叱咤する。

 

「クソ。仕方ない。山を降りよう……」

 

 戦士たちも負傷者を多く抱え、自分たちが包囲されていることを理解していた。彼らは降伏することを選び、神殿の周囲を囲む近衛第2猟兵連隊に投降。

 

「全員を武装解除して拘束しろ! クズどもが抵抗しないようにしておけ!」

 

 スーリオン大佐はそう命じ、部下たちは警棒でダークエルフたちを痛めつけ、武装解除し、全裸にして手錠をかけてから連行していった。

 

 ダークエルフたちは辱められ、そのまま捕虜収容所に収監される。

 

「彼らはいつ解放されるのだ?」

 

「我々の鉱山開発が完了してからです。それまでは再教育センターに収容されます」

 

「それはいつだ?」

 

「技術的な問題ですので、我々は把握しておりません」

 

 ギルサリオンは若い戦士たちを救ったと思っていたが、そうではなかった。

 

 捕虜収容所にエルディリア王国陸軍の部隊がやってくると、元デックアールヴ旅団の将兵を探し、見つけ出すと逃亡罪で処刑することを通達していった。

 

 さらに他にも霊山で座り込みを行ったものたちが処刑され、絞首刑にされると、その死体はダークエルフたちの居住区からよく見える場所に吊るされた。

 

 処刑されなかったものも、エルディリア軍や太平洋保安公司による暴力や強姦の被害にさらされ、捕虜収容所では自ら命を絶つものすら現れ始めていた。

 

 さらに結局、彼らが守ろうとした霊山はエコー・ワン鉱山の中に含まれ、巨大な重機によって山は削り崩されてしまった。

 

 これまでダークエルフたちが祈りを捧げてきた神殿も、神秘的な山頂も、全てが破壊されて、残るのはリチウムという地球にとって金になる鉱物だけである。

 

 ダークエルフたちは屈辱の中でまたしても敗れた。

 

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