異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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部族評議会解散命令

……………………

 

 ──部族評議会解散命令

 

 

 霊山が崩れ去り、部族評議会の権威は失墜した。

 

「長老たちは聖地すら守れなかった!」

 

「これ以上、耄碌した年寄りには頼れない!」

 

 シルヴァリエンの部族に多く存在する若い戦士たちは、もう部族評議会の長老たちを信頼せず、好き勝手に行動するようになってしまっていた。

 

「愚かな。このままで我々は分断され、いいように屠られてしまうと言うのに……!」

 

 部族評議会の長老たちはこのままでは別々に行動を始めたものたちが、それぞれ各個撃破されてしまい、ダークエルフという種が滅ぶだろうと懸念している。

 

 事実、大井はそのつもりで部族評議会と若い戦士たちを分断するように、情報工作を進めていたのだった。

 

 しかし、ここで大井にとって計算外のことがいくつか起きる。

 

 ひとつは近衛第2猟兵連隊の暴走だ。

 

「ここに命令する。部族評議会のメンバー全員をすぐさま拘束せよ!」

 

 スーリオン大佐がそう命じる。

 

 スーリオン大佐と彼の近衛第2猟兵連隊は霊山での勝利に気をよくしていた。だが、彼らはできるならばもっと戦果を挙げたいとも思っていた。

 

 そこで彼らは戦士たちが離反し、無力になった部族評議会を拘束することで、アルフヘイムに自分たちの功績を示そうと考えたのだ。そのことによってスーリオン大佐はますます第二王子アイリアンへの忠誠を示せるがため。

 

「無意味だ。連中を捕まえても意味はない。既に部族評議会はその力を失っている。連中を活かし、ダークエルフたちを分断し、相互にいがみ合わせる方が利益だ」

 

「いいや。ダークエルフどもは残らずひっとらえる。意味はある」

 

 このことに軍事コンサルタントは反対したが、スーリオン大佐は強行。

 

「それならば支援はできないが、それでもいいか?」

 

「構わん。我々だけで達成可能だ」

 

 またしても太平洋保安公司側は近衛第2猟兵連隊の好きなようにさせることに。彼らは雇い主である大井からエルディリア軍を矢面に立たせろという、秘密の命令を受けており、それに従っているともいえる。

 

 いずれにせよ近衛第2猟兵連隊は部族評議会の拘束に向かった。

 

 テクニカルとトラックがフィリアン・カールを駆け抜け、部族評議会が集まっている村へと向かう。村といってもダークエルフたちにとっては数ある遊牧地のひとつでしかなく、固定された建物は井戸くらい。後は移動できる天幕などだ。

 

 今回は太平洋保安公司によるドローンの支援もなく、テクニカルとトラックの車列は兵士たちが自らの目で見張りながら進んでいた。

 

「な、なんだ!?」

 

「敵だ! エルディリアの連中だ!」

 

 しかし、村の周りを巡回していたダークエルフの騎兵が車列を発見し、角笛を吹き鳴らした。これにより部族評議会と彼ら側についた戦士たちが警戒態勢に入る。

 

 それからダークエルフたちは森の中に潜み、村に続く道で車列を待ち構えた。

 

 近衛第2猟兵連隊の車列はそれに気づかずに村を目指している。

 

「今だ! 放て!」

 

 近づいた車列に向けてダークエルフたちは弓矢で十字砲火を浴びせる。左右から矢が飛来し、何名もの近衛第2猟兵連隊の兵士たちが射貫かれた。テクニカルにも、トラックにも装甲という装甲はなく、矢は車内にいる兵士たちに届く。

 

「クソ! 降車、降車!」

 

 スーリオン大佐が無線で命令を叫び、兵士たちが大急ぎで車両を降りて、車両を盾にダークエルフの待ち伏せに応じる。

 

「クソッタレのダークエルフどもめ。火力を集中させて叩きのめせ!」

 

 スーリオン大佐は太平洋保安公司から軍事教練を受けている。歩兵部隊の運方法については北大西洋条約機構(NATO)式のものを十分に取得しているといえた。

 

 テクニカルが後方に下がりながら、自分たちの武器の射程が活かせる距離で射撃を行う。弓矢の射程より重機関銃の射程の方が圧倒的に長いのに、至近距離で戦う必要などないのである。

 

 重機関銃をマウントしたテクニカルに続いて、口径40ミリのオートマチックグレネードランチャーをマウントしたテクニカルがグレネード弾を勢いよく叩き込み始めた。サーモバリック弾のそれが炸裂するたびに巨大な炎が巻き起こる。

 

「進め!」

 

 テクニカルの火力支援を受けて、歩兵が自動小銃や機関銃で射撃を行いながら、遮蔽物となっていた車両から出て前に押し進む。敵の抵抗を粉砕するために手榴弾も投擲され、激しい爆発音が森に挟まれた道沿いに響いた。

 

「行け、行け! 押し進め!」

 

 スーリオン大佐もリボルバーを振り回しながら部下たちを鼓舞し、ダークエルフの防衛線を突破することを目指した。

 

 ダークエルフたちは火力の差もあって確実に追い詰められており、彼らが戦闘力を喪失するまではさほど遠いことではなかった。

 

「撤退だ! 撤退、撤退!」

 

「怪我人は見捨てるな!」

 

 ついにダークエルフたちは敗走を開始。それを近衛第2猟兵連隊は追撃しようとするが、車両が矢で貫かれ、破壊された車両も多く、追撃はかなわなかった。

 

「さっきの連中は戦い慣れていたようだ。前に話に合ったアルフヘイム方面から逃亡してきたというダークエルフか?」

 

「捕虜に聞けばわかるだろう。幸い、捕虜は少なくない」

 

 軍事コンサルタントが言うのに、スーリオン大佐はそういう。

 

 既にこの戦争で5、6名の捕虜が得られていた。スーリオン大佐は彼らを尋問して、デックアールヴ旅団の将兵かどうかを確認するつもりだ。

 

「予定は狂ったが、このまま部族評議会のメンバーを拘束するぞ。前進再開!」

 

 スーリオン大佐の目的は部族評議会のメンバーの拘束である。たとえ抵抗を受けようとその目的に変更はない。

 

 近衛第2猟兵連隊の将兵はまだ無事な車両に乗り込み、あぶれたものは徒歩で移動し、目的地である村を目指して進んだ。

 

「見えてきました、大佐殿。しかし、部族評議会のメンバーを拘束することは可能でしょうか? 先ほどの戦闘で我々の動きに気づかれたのでは?」

 

「だとしても作戦に変更はない。予定通り、村を包囲し、突入し、制圧せよ」

 

「了解」

 

 スーリオン大佐の部下の言葉にスーリオン大佐は作戦を強行する意志を示した。

 

 それに従って村が包囲され、それから一斉に歩兵が突入していく。

 

 村は天幕が4つほど張られ、井戸があり、馬が停めてあるだけの小規模なもので、近衛第2猟兵連隊の兵士たちは天幕に自動小銃を構えて突入していった。

 

「動くな! 抵抗すれば射殺する!」

 

「撃つな。我々は武装してはおらん」

 

 そして、兵士たちは天幕のひとつに集まっていた議長ギルサリオンを始めとする一部の部族評議会のメンバーを発見した。

 

「大佐殿。部族評議会議長のギルサリオン他4名を拘束しました」

 

「ふん。部族評議会は7名で構成されているはずだ。逃げたか、最初からいなかったか。この付近を隈なく探せ!」

 

「了解」

 

 近衛第2猟兵連隊はこの付近を捜索したものの、残る2名のメンバーは見つからず。

 

「見つかりませんでしたが、どうしますか?」

 

「クソ。忌々しいダークエルフどもめ。やむを得ない。ここは一度退く」

 

 流石のスーリオン大佐もこれ以上敵地に長居して、さらに車両などの装備や人員を失うリスクを抱え込むことは避けた。

 

 彼らはギルサリオンの他に4名のダークエルフの長老たちを拘束し、連行すると捕虜収容所へと収容した。

 

 これを受けてダークエルフたちは総督ファレニールに新しい部族評議会のメンバーを認めるように求めたが、ファレニールは部族評議会に半永久的な解散命令を下し、自身がフィリアン・カールを直接統治すると宣言。

 

 今やエルディリア王室とダークエルフたちが交わした約束は完全に放棄された。

 

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