異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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聖地解放運動

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 ──聖地解放運動

 

 

 迫りくる騎馬集団はいかにして太平洋保安公司のドローンを撃墜したのか。

 

 まず彼らダークエルフたちはドローンが太平洋保安公司や近衛第2猟兵連隊の目になっていることに、これまでの戦闘の経験から気づいていた。そして、この目があるからこそ奇襲や待ち伏せが不可能だということも分かった。

 

 そうであるが故に、まずはドローンを仕留めなければという結論に至る。

 

 そうなってからはことは早かった。

 

 ダークエルフたちは遊牧民として様々な動物に親しんでいる。その中でも大型の猛禽類は、狩りをする彼らの相棒であった。

 

 鷹匠に似た技術を持つ彼らダークエルフは、その大型の猛禽類によってドローンを襲わせた。地球上の猛禽類よりさらに大きなその鳥は中国製のクアッドロータードローンを見事仕留め、撃墜した。

 

 それによってドローンによる監視に穴が開いたのだ。

 

「進め、進め!」

 

 ドローンによる監視の目がなくった隙に騎馬集団は平原を駆け抜け、フィリアン・カール野戦キャンプを目指す。

 

 彼らの手には依然として弓矢があり、腰には山刀を下げていた。

 

 しかしながら、彼らは犠牲を払いつつも急速に近代的な戦闘に適応している。

 

「炎の魔術を撃ち込んだらすぐに撤退だ。行くぞ!」

 

 ダークエルフたちはもうひとつ学習した。

 

 弓矢では正面から戦えば銃火器に勝てないということ。

 

 弓はダークエルフたちにとって誇りであった。弓の名手こそが、部族の中でもっとも尊敬される戦士であった。

 

 弓の名手ともなれば、ダイヤウルフやオークのような危険な魔物でも軽々と倒してしまう。それは部族を守る力になっており、彼らは部族の守護者であったのだ。

 

 しかし、状況は変わったことを認めなければならない。

 

 弓矢で戦ったダークエルフの戦士たちは、どんな弓の名手であろうと銃火器を前に倒れた。大勢が無謀な戦いを戦い、一方的に殺された。

 

 弓と矢だけでは連中に勝てない。

 

 だが、ダークエルフたちにはもうひとつの武器がある。それが魔術だ。

 

 この世界における魔術は戦争とともに進化した。

 

 攻城兵器を補佐するものとして射程300メートルほどの火球を放物線上に投射する魔術が生まれ、魔術は主に攻城戦などで使用された。野戦においての使用は弓矢を補佐するために小規模な魔術師による部隊が編成されることがある程度だ。

 

 射程100メートルから400メートルが限度で、発動には矢を放つより時間がかかる。そのため攻撃の即応性が求められる野戦では廃れていった。

 

 それとは別に負傷者を手当てする治癒魔法も戦争の中で、実験を繰り返して進化していったものだ。今にも死にそうな負傷者はたとえ失敗して助からなくても、後で責められることは少ないのであったためである。

 

 今回は割合として減った野戦における攻撃魔術が使われることになった。さらにそれを補助するように風の魔術で威力を増した矢が使われる。

 

「もう少しだ! 進め、進め!」

 

 まだ太平洋保安公司の緊急即応部隊(QRF)は到着しておらず、近衛第2猟兵連隊も戦闘準備を整えていない。チャンスだ。

 

 ダークエルフの騎馬集団とフィリアン・カール野戦キャンプの距離が縮まる。

 

 距離600、500、400、300──!

 

「放て!」

 

 ダークエルフの魔術師が練り上げていた火炎の魔術を放ち、戦士たちは風の魔術で強化された矢を一斉にキャンプに向けてはなった。

 

 炎の魔術も矢も放物線を描いて、ヘスコ防壁を飛び越え、キャンプの中に降り注いだ。中にいた近衛第2猟兵連隊の兵士たちが建物などに隠れ、攻撃を凌ぐ。

 

「続いて放て!」

 

 さらにもう一発攻撃を放つダークエルフたち。

 

 攻撃によって兵舎で火災が発生し、駐車場の車両などが矢を受けた。

 

「いいぞ、いいぞ。撤退だ! 退け、退け!」

 

 攻撃を終えるとすかさずダークエルフたちは方向転換して撤退を開始。

 

 彼らはこのままならば逃げ切れるはずだったが、しかし。

 

『ケベック・リードよりアルファ・リード。そちらから逃走中の騎馬集団を視認している。確認するが、これが敵か?』

 

「そうだ! 逃がすな!」

 

 ここで太平洋保安公司の緊急即応部隊(QRF)が到着。爆装したパワード・リフト機に搭乗した彼らが、逃げるダークエルフたちを追う。

 

「撃て、撃て。ハチの巣にしてやれ」

 

 パワード・リフト機にドアガンとして装着されている口径7.62ミリのガトリングガンが火を噴き、ダークエルフたちをなぎ倒す。それによってダークエルフたちはミンチ同然になるか、あるいは落馬して動けなくなった。

 

「クソ! 何としても逃げきれ!」

 

 ダークエルフたちは必死に馬を走らせるが、パワード・リフト機は馬などよりずっと早く地形も気にせず進む。パワード・リフト機のハードポイントに搭載されていたロケット弾が相次いで発射され、さらにダークエルフたちを屠る。

 

「よーし。これぐらいでいいだろう」

 

 爆炎に包まれた地上を見て、緊急即応部隊(QRF)の指揮官が頷く。

 

「降下、降下」

 

 それから緊急即応部隊(QRF)は地上に降下し、動けなくなったダークエルフたちの方に向けて前進。

 

「武装解除して拘束しろ。すぐにだ」

 

「了解」

 

 銃口を突き付けたまま、緊急即応部隊(QRF)はダークエルフを武装解除する。弓矢を押収し、見事な彫刻がされた鞘や柄のある山刀を奪い、後ろ手に手錠で拘束した。

 

 17名の騎馬集団のうち、生きて拘束されたのはたったの4名であった。

 

「ケベック・リードよりアルファ・リード。敵集団を無力化し、4名を捕虜にした」

 

『了解。こちらに連行してくれ。我々の友人が話を聞きたがってる』

 

 緊急即応部隊(QRF)の指揮官が報告するのに川内がそう命じる。

 

 スーリオン大佐は激怒していた。ダークエルフたちは名誉ある閲兵を受けていた近衛第2猟兵連隊を襲撃し、閲兵式を中止させた。それはスーリオン大佐の顔に泥を塗りつけたのも同然である。

 

 スーリオン大佐は報復に捕虜を拷問するつもりだ。

 

「大佐。拷問するのは結構だが、情報を引き出すのを忘れないでくれ」

 

「分かっている。さあ、捕虜を渡せ」

 

 川内が捕虜引き渡しの前に釘をさすのにスーリオン大佐は苛立った様子で返す。

 

「オーケー。捕虜を引き渡せ」

 

 川内は緊急即応部隊(QRF)に命じ、緊急即応部隊(QRF)は捕虜をスーリオン大佐たち近衛第2猟兵連隊に引き渡した。

 

「楽に死ねると思うなよ、ダークエルフども」

 

 スーリオン大佐は捕虜たちにそういい、彼らをフィリアン・カール野戦キャンプの倉庫へと連行していった。

 

 それからはダークエルフたちは激しい拷問を受けた。

 

 定番のウォーターボーディングから電気ショック、あるいは犬をけしかける拷問まであらゆる拷問にダークエルフたちは晒された。

 

 この手の拷問を仕込んだのも太平洋保安公司だ。彼らはグアンタナモや非合法捕虜収容所(ブラックサイト)で、この手の拷問を行っていた経歴ある人間が、近衛第2猟兵連隊にもその技術を指導していた。

 

「お前たちは誰の命令でここを攻撃した! 言え!」

 

 スーリオン大佐たちはダークエルフが誰の命令で、このフィリアン・カール野戦キャンプを襲撃したかを気にしている。

 

 既に部族評議会は解散したままで、それに代わる自治組織が発足したとも聞かない。

 

 では、誰がダークエルフを組織して、武力闘争を行わせているのか?

 

「せ、せいち……」

 

「何だ! はっきりと言え!」

 

 あちこちから血を流しているダークエルフが意識が朦朧とした状態で呟く。

 

「せい、聖地解放運動……。それが命令を下している……」

 

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