異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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騎兵隊参上

……………………

 

 ──騎兵隊参上

 

 

 ウィットロックたちは接近してきた聖地解放運動の部隊と交戦を開始。

 

 ウィットロックたちが装備する2体のアーマードスーツはヴィルトカッツェと呼ばれるもので、その名の通りドイツ製だ。しかし、その武装はドイツのそれではない。

 

 口径70ミリ多目的ロケット弾や口径12.7ミリ重機関銃を装備しており、これにさらにオプションで口径40ミリオートマチックグレネードランチャーや各種対戦車ミサイルを装備できる。

 

 今回は正面切っての突破というより、友軍歩兵への火力支援と持久戦が重視されたため、最低限のロケット弾と重機関銃の組み合わせだ。

 

「撃て、撃て」

 

 アーマードスーツの重機関銃が火を噴き、群がるダークエルフたちを薙ぎ払う。大口径ライフル弾の殺傷力は抜群であり、体に命中すれば肉が裂け、骨が砕け、肉体の一部が消滅したかのようにえぐれる。

 

「クソッタレ。凄い数だ。先手は撃てたが……」

 

 暗闇の中でも位置を探られないようにウィットロックたちの武器にはサプレッサーが装着されている。それは音とマズルフラッシュを隠してくれるが、アーマードスーツは派手に騒いでいるために、ダークエルフはそれに寄って来ていた。

 

「進め、戦士たち! 連中を決して逃がすな!」

 

「おおっ!」

 

 そう叫ぶのはオロドレスだ。

 

 彼は部下たちに古くからダークエルフに伝わる薬草を与えていた。それは興奮作用があり、恐怖を一時的に忘れさせるものであった。しかしながら、それを使った戦士はそれに依存してしまう傾向がある麻薬に似たものだ。

 

 アイナリンド大佐は部下たちにそのような薬草を与えることを嫌ったが、オロドレスはそんなアイナリンド大佐を腰抜けと見做し、部下たちに伝統的なこの薬草をタバコのようにして戦闘前に吸わせていた。

 

 それゆえに今のダークエルフたちには恐怖というものがない。

 

「オオオオォォォォッ!」

 

「殺せ、殺せ、殺せ!」

 

 仲間たちが一瞬で原形を留めぬ肉塊となろうが、相手を殺すことだけを考えて進み続けている。山刀を手にした戦士たちが前列を進み、弓を構えた戦士たちはなるべく近づいて矢を浴びせようとする。

 

「クソ。連中、何かしらのドラッグを使っているぞ」

 

「ミンチになるまで爆薬と銃弾を叩き込むしかない」

 

 狂ったように雄たけびを上げて前進してくるダークエルフたちを前にウィットロックたちの表情が引きつり、彼らは文字通りダークエルフがミンチになるまで爆薬と銃弾を叩き込んでいった。

 

「残弾が残り少ない!」

 

「クソ。ここまでの戦闘は想定外だ」

 

「迎えのパワード・リフト機はまだですか!?」

 

 次々に押し寄せ、大量の銃弾を消費させるダークエルフたちを前にウィットロックたちも危機感を覚え始めた。弾薬は瞬く間に損耗し、さらにはダークエルフたちの放つ矢も届き始めている。

 

『こちらウィスキー・リード。間もなく到着する。そちらの現在地を照明弾で示せ』

 

「了解。諸君、騎兵隊が来たぞ!」

 

 緊急即応部隊(QRF)であるレッドファング・カンパニーがパワード・リフト機で近づいてきているのが知らされ、ウィットロックが部下たちを鼓舞する。

 

 それから照明弾が打ち上げられ、それをレッドファング・カンパニーを空輸しているパワード・リフト機のパイロットが視認。

 

『照明弾を視認。降下開始だ、野郎ども!』

 

 パワード・リフト機はウィットロックたちが守る離脱地点上空に到達すると、レッドファング・カンパニーのワーウルフたちを降下させていった。その中には団長のヴォルフも含まれている。

 

「来たな、騎兵隊。歓迎するぞ!」

 

「おう! 後は任せろ! お前ら、ダークエルフどもを蹴散らすぞ!」

 

 弾薬が切れたウィットロックたちは後方に下がり、代わりにヴォルフたちが前に出る。彼らレッドファング・カンパニーには軍事コンサルタントの天竜も同行していた。

 

「俺たち無敵のレッドファング・カンパニー!」

 

「恐れ知らずの兵士たち!」

 

 ワーウルフたちが叫ぶように歌い始め、天竜も声を合わせている。

 

 いきなり響いてきた歌にダークエルフたちは一瞬戸惑ったのか、そのドラッグによって促されていた前進が停止。

 

『こちらドードー・ゼロ・ツー。機銃とロケット弾で地上を掃射する』

 

 それが不味い選択になった。

 

 一瞬でも立ち止まったダークエルフたちに向けて武装したパワード・リフト機からロケット弾と機関銃が掃射され、地上が炎に染まる。炎に飲まれたダークエルフたちは薙ぎ払われてしまい、ついに彼らは戦意より恐怖を抱いた。

 

「俺たちはレッドファング・カンパニー!」

 

「いかなる戦場でも我らに敵う者なし!」

 

「俺たち無敵のレッドファング・カンパニー!」

 

 レッドファング・カンパニーは歌いながら前進し、ドラッグで作られた偽りの闘争心が崩壊しつつあるダークエルフたちを追撃する。

 

「進め、進め、どこまでも!」

 

「進め、進め、どこまでも!」

 

 ヴォルフと天竜も歌いながらダークエルフたちを銃撃し、戦場から駆逐していく。

 

 銃弾がダークエルフたちを引き裂き、軽迫撃砲の砲撃がダークエルフたちを薙ぎ払い、そして突撃してくるワーウルフたちの剣がダークエルフたちを叩き切る。

 

 銃声。爆発音。悲鳴。怒号。歌。

 

 戦場はまさにカオスだ。

 

「もうダメです、オロドレスさん! 味方は逃げ散りつつあります!」

 

「おのれ! おのれっ!」

 

 オロドレスは自らが捕らえた人質を簡単に奪われ、さらにはそれを奪還しようとした戦士たちに多大な犠牲を出し、その上で敗北したという事実を突きつけられた。

 

 彼は怒りに燃えたが、燃えたところで現状が変わるわけではない。

 

「……撤退だ。これ以上犠牲者を出すわけにはいかない」

 

「了解です」

 

 オロドレスの命令で撤退を知らせる角笛が吹かれ、戦士たちが撤退を始めた。とはいえ、もはや総崩れになっていたダークエルフたちに秩序だった撤退などできず、殿を守る部隊もなく、敵に背を向けての惨めな敗走が始まった。

 

「ははっ! 連中、逃げていくぞ!」

 

「やりましたねえ!」

 

 ヴォルフが逃げていくダークエルフたち向けて中指を突き立て、天竜がぱちぱちとレッドファング・カンパニーの傭兵たちに拍手を送る。

 

「人質3名の収容が完了。脱出準備はできています!」

 

「よーし! 俺たちも引き上げだ!」

 

 ダークエルフたちを蹴散らしたレッドファング・カンパニーは着陸したパワード・リフト機に乗り込み、人質とウィットロックたち救出部隊を乗せたパワード・リフト機とともに基地へと帰還した。

 

 この知らせはすぐにヴァンデクリフトから司馬に届けられた。

 

「人質は全員が無事です。救出は成功しました」

 

「よくやった。我々の勝利だ。しかし、このような事件が続くようならば対策を取らなけれならないな……」

 

 今回はたまたま人質の奪還に成功したからいいものの、次に誘拐が起きた場合は同じように解決するという保証はない。

 

「聖地解放運動と交渉チャンネルを持つ必要がありますんね」

 

「ああ。その通りだ。どうにかして接触する手段を確立しなければ」

 

 大井と聖地解放運動は事実上の戦争状態だが、戦争を終わらせるにせよ、休戦するにせよ、相手と連絡する手段がなければ話にならない。

 

 しかし、現状では聖地解放運動は大井との取引になど応じそうにもないし、交渉チャンネルは見当もつかない状況だ。

 

 部族評議会が解散させられ総督ファレニールが中立を覆したのが、あまりよくはなかった。彼が中立を維持し、部族評議会が今も存在していれば、交渉の相手になってくれたのだろうが。

 

「ヴァンデクリフト。最悪を想定しよう。我々がエルディリアを巻き込んで、どの程度までの軍事コストで聖地解放運動を壊滅させられるかだ」

 

「分かりました。検討しておきます」

 

「頼むぞ」

 

 最悪の場合というのは軍事力でダークエルフを根こそぎにすることだ。

 

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