異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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兵站攻撃

……………………

 

 ──兵站攻撃

 

 

 ヴァリエンティアから聖地解放運動に地球製の武器が運ばれている。

 

 その事実を掴んだ太平洋保安公司は行動に出ることを考え始めたが、まずは許可が必要であった。この作戦には政治的リスクが伴うからだ。

 

「越境攻撃が必要になります」

 

 ヴァンデクリフトがエルディリア事務所でそう告げる。

 

「ヴァリエンティアから聖地解放運動に武器が運ばれているのは間違いありません。これを阻止しなければ、聖地解放運動は強力な武装勢力に成長するでしょう。そうなってからでは手遅れです」

 

「しかし、我々が無断で越境攻撃を行うのはリスクが高いのでは?」

 

 ヴァンデクリフトの発言に法務部のホンダが苦言を呈する。

 

「ええ。リスクは大きいですが、放っておいてもそれは同様です。しかも、放っておいた場合は確実にリスクになります。一方越境攻撃の方はリスクが生じる可能性もあるという話に留まります」

 

 ヴァンデクリフトが言うようにこの武器の輸送を放置すれば、聖地解放運動は地球製の武器で武装してどこまでも脅威になる。それは放っておけば確実に生じるリスクだ。

 

「具体的にどのような攻撃を計画しているのか教えてくれ」

 

 司馬がそこでヴァンデクリフトに尋ねる。

 

「敵の車両の破壊。ヴァリエンティアにおけるダークエルフの拠点攻撃。そして、武器を流している人間の暗殺。これらを段階的に検討していきます」

 

「成功率は高いと見ているのだな?」

 

「エルディリアにも言えることですが、ヴァリエンティアには防空設備がありません。レーダーサイトも戦闘機もなし。我々が密かに部隊を送り込んでも、ヴァリエンティアが気づくことはまずありません」

 

「よろしい。では、作戦を検討してくれ。話はその後で聞こう」

 

「了解」

 

 こうして大井内では越境攻撃が検討され始めた。

 

 太平洋保安公司は自分たちの身分を偽装して、攻撃を仕掛けることを考えており、装備を変更し、IDを偽装したコントラクターたちからなる潜入工作部隊を編制し始める。

 

 それらを輸送するパワード・リフト機も別に企業のものを使用し、徹底して太平洋保安公司ととられないように工作を行った。

 

 しかし、まだ作戦にはゴーサインが出ていない。

 

「部隊の準備はできています。許可をいただければすぐにでも」

 

「……本社が横やりを入れてきた。越境攻撃を行い、戦争になったらどうすると」

 

 ヴァンデクリフトが言うのに司馬が忌々しげにそう言う。

 

「では、中止ですか?」

 

「中止すればしたらで問題があると君が言っただろう。よって、本社を説得しながら実行することになる。まず、攻撃目標の厳密な規定だ」

 

 司馬はそう言って話を続ける。

 

「第一にヴァリエンティアの所有する設備と彼らに属する人間には一切攻撃を加えないこと。それが重要だ。戦争の口実にされないためにはな」

 

 ヴァリエンティア政府が保有し、責任を有する生命・財産には一切手を出さない。司馬はまずその方針を告げた。

 

「次に絶対に我々が攻撃を行ったという証拠を掴ませないこと。証拠は徹底して抹消しろ。作戦終了後に一切の資料を破棄し、焼却し、追えないようにしておく」

 

 次に証拠の徹底した隠滅。

 

「最後だ。リスクを冒して攻撃を行ったという意味があるだけの結果を出すこと」

 

 当然ながらリスクに似合った成果がなければ、この冒険は無意味なる。

 

「この点を徹底した計画を策定してくれ。私がそれを本社に提示し、説得する」

 

「了解です、ボス」

 

 それから作戦計画は練り直され、まず目標が変更された。

 

 まず車両はヴァリエンティア領内にいる間は攻撃せず、エルディリア領内に入ってから攻撃する。そして、武器を流している人間はヴァリエンティアに関係にある人間である可能性があることから攻撃対象外とする。

 

 身分の偽装と隠蔽についても徹底される運びになり、使用する武器については足がつかないように中国製の武器を使用。中国製の武器は市場にあふれており、誰が入手してもおかしくないというものであるがためだ。

 

 こうして本社を説得できる計画が練りなおされ、本社から許可が得られた。

 

「本社は許可した。いつ始められる?」

 

「ゴーサインがいただければいつでも」

 

「よろしい。始めてくれ」

 

 そして、ついに作戦にゴーサインが出た。

 

 越境攻撃を行う部隊は以前にも動員された元アメリカ海軍DEVGRU所属の大尉のワイアット・ウィットロックが指揮する部隊。

 

 彼らは密かにパワード・リフト機で国境を越えてヴァリエンティア領内に降下。

 

 それから国境から数キロ離れたダークエルフたちの拠点へと向かう。

 

「あれだな。目標を視認した」

 

 ダークエルフたちの拠点は古い要塞の跡地にあった。そこには昔からの石造りの壁が周囲を囲みながらも、恐らくは地球から提供されたであろうプレハブ式の建物がその中に作られている。

 

 そこには射撃訓練用の訓練場や体を鍛えるトレーニングコースなどが設置されていた。ここでダークエルフたちは訓練を受けて、エルディリアに戻っているのだ。

 

 さらに情報部はこの施設に弾薬も備蓄されているとみている。

 

「襲撃は予定通りだ。可能な限り我々の痕跡を消すために、弾薬庫を派手に爆破する。それによってこの拠点が崩壊すれば文句はない」

 

「了解」

 

「では、始めるぞ」

 

 ウィットロックたちは熱光学迷彩を起動してダークエルフたちの拠点に忍び込む。

 

 これは一種の秘密作戦(ブラックオプス)であるため、緊急即応部隊(QRF)による掩護や航空支援は受けることが難しい。越境攻撃を行ったという事実が発覚してはならないのだ。

 

 そうであるため、ウィットロックたちは可能な限り戦闘を避けることに。

 

 何せウィットロックたちは12名のチームでしかないのだ。それに対してダークエルフたちの数は百を超える。それに加えてここにいるダークエルフたちは地球の銃火器で武装しており、ウィットロックたちに武器によるアドバンテージはない。

 

 前回の人質救出とは違う状況だが、ウィットロックたちはこういう場面を乗り切るための訓練を受けている。それこそがアドバンテージだ。

 

 ダークエルフたちの歩哨を回避し、殺害や戦闘を避けて拠点内を進む。

 

 彼らが探してるのは弾薬庫。爆発物から放たれる微量な粒子を探知するセンサーを使って拠点内で爆発物が収容されている場所を探した。

 

「この先から強い反応です」

 

「オーケー。進むぞ」

 

 反応は古い要塞の地下からだ。ウィットロックたちは気づかれぬように慎重に階段を降りていき、要塞の地下に降り立った。

 

「おおっと。こいつだな」

 

 ウィットロックたちの前に大量の弾薬箱と銃火器が現れた。ダークエルフたちが使っているアメリカ製の古い銃火器とその弾薬だ。他にも無反動砲や迫撃砲、自爆型ドローンなども蓄えられている。

 

「まずは証拠撮影だ」

 

 後でヴァリエンティア政府が越境攻撃の事実に気づいて抗議してきた際に、ここにいるダークエルフたちがエルディリアを攻撃していたという事実を突きつけるために、ウィットロックたちは武器弾薬の撮影を行った。

 

「よし。撮影完了。爆破準備だ。爆薬を仕掛けろ」

 

「これが吹っ飛べば盛大な花火なるぞ」

 

 爆薬が設置され、無線信号で起爆するそれの設置が完了すると入ってきたとき同じように静かに拠点から去った。

 

「起爆準備」

 

 それから爆破を担当するオペレーターが無線信号を送る。

 

 まずは閃光が瞬き、ずうんと重低音の爆発音が響いたかと思うと、ダークエルフの拠点があった位置に黒々としたきのこ雲が上がる。爆破成功だ。

 

 爆発が起きたダークエルフの拠点は阿鼻叫喚の地獄絵図である。

 

 突然起きた爆発によってダークエルフたちは引き裂かれ、八つ裂きにされた。あちこちに彼らの一部だったものが転がり、無数に響いていたうめき声が時間を経るごとにひとつずつ消えていく。

 

「任務完了だ。帰還する」

 

 地獄を生み出したウィットロックたちは徒歩で国境を越え、それからパワード・リフト機によって回収されたのだった。

 

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