異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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大乱闘

……………………

 

 ──大乱闘

 

 

 最初に攻撃を仕掛けたのは共和国陸軍だった。

 

 中国製の銃火器で武装し、ロシアとイラン製のドローンを装備する彼らは、太平洋保安公司の警備が手薄になった隙に攻撃を仕掛けた。

 

「進め、進め! 裏切りものどもを皆殺しにしろ!」

 

「おおおおっ!」

 

 隠れていた場所から一斉にダークエルフの戦士たちが飛び出し、村に向けて前進していく。全員が漏れなくドラッグを使用しており、彼らは高度な興奮状態にあった。

 

「敵襲、敵襲!」

 

本部(HQ)に増援要請を出せ!」

 

 太平洋保安公司の警備は1個分隊8名程度に過ぎず、それに対して襲撃者である共和国陸軍は1個中隊100名程度だ。

 

 もっとも太平洋保安公司は少数のコトントラクターでも村を防衛可能なように、いくつかの対策を施していた。

 

 AI連動のリモートタレットや、強固な防衛陣地やパニックルーム、そしてすぐに駆け付けることを約束している緊急即応部隊(QRF)などなど。

 

緊急即応部隊(QRF)はそちらに向かっている。到着予定時刻(ETA)0252(マルニイゴウニイ)

 

「了解! それまで持たせる!」

 

 押し寄せる共和国陸軍に向けてリモートタレットが激しく銃撃を行い、太平洋保安公司の警備要員たちは陣地に籠りながら応戦。激しい銃撃戦が繰り広げられるが、損害を出しているのは共和国陸軍の側だ。

 

 太平洋保安公司と同じように銃火器を使うようになった彼らだが、練度の面においては圧倒的に太平洋保安公司の方が上だった。

 

 まして薬による興奮だけで戦意を持たせている彼らは、遮蔽物を利用するなどと言った戦術行動がとれておらず、太平洋保安公司の訓練されたコントラクターにとってはただの的も同然だった。

 

 適切な場所に陣地を設営し、火点を設置して待ち受けていた太平洋保安公司に対して、共和国陸軍は無理やりに突っ込むばかり。これでは自分から肉挽き器に突っ込んでいるようなものである。

 

 しかし、その肉挽き器も徐々に回転速度が落ちつつあった。ダークエルフの戦士たちがロシア製の対戦車ロケットで攻撃を始めたことでリモートタレットなどが破壊されつつあるのだ。

 

緊急即応部隊(QRF)はまだかよ!」

 

「文句を言うな! 死にたくなきゃ戦え!」

 

 太平洋保安公司のコントラクターたちが必死に応戦する中で、到着したのは援軍ではあったが緊急即応部隊(QRF)ではなかった。

 

「指揮官! 近衛第2猟兵連隊が来ています!」

 

「何だって? どういうことだ!?」

 

 近衛第2猟兵連隊のストライカー装甲車が無人銃座(RWS)の重機関銃で共和国陸軍に向けて射撃を行いながら前進してきた。何がどうなっているのか、村を警備する太平洋保安公司側には分からない。

 

 ただ近衛第2猟兵連隊は味方で間違いないだろうということだけだ。緊急即応部隊(QRF)の到着が遅れる中で、太平洋保安公司にとっては救いの女神である。

 

「後者、後者!」

 

「ダークエルフどもを皆殺しにしろ!」

 

 襲撃を行っている共和国陸軍の側面に向けて突っ込んだ近衛第2猟兵連隊の機械化歩兵部隊は歩兵が降車して、共和国陸軍部隊と交戦。

 

 近衛第2猟兵連隊は今ではストライカー装甲車のファミリー化された装備のひとつである自走迫撃砲も装備しており、車載されている口径120ミリ迫撃砲が火を噴いた。

 

「クソ! 何てことだ!」

 

「ひとりでも道連れにしろ!」

 

 砲弾が降り注ぐ中で、興奮した共和国陸軍の戦士たちは、村ではなく近衛第2猟兵連隊に向けて突撃を開始。銃を乱射しながら鬼気迫る表情で、自分たちに接近するダークエルフの戦士に近衛第2猟兵連隊の将兵も一瞬気圧された。

 

「怯むな! 撃て! 殺し尽くせ!」

 

 しかし、そこでスーリオン大佐が声を上げ、反撃が続いた。

 

 全ての戦闘が終結したとき、そこには死体の山が築かれていた。

 

「スーリオン大佐。協力に感謝する」

 

 ここで太平洋保安公司側の指揮官がそう礼を述べた。

 

「我々には我々の任務がある。そちらにも協力してもらおう」

 

「と言うと?」

 

「エーミール・ルートを襲撃したテロリストをこの村が匿っているとの情報を得た。捜査を行う。協力してもらおうか」

 

「それは……」

 

 スーリオン大佐の言葉に太平洋保安公司側の指揮官が渋い顔をする。

 

 しかし、スーリオン大佐に助けられたのは事実だ。スーリオン大佐の近衛第2猟兵連隊が来なければ全滅していた可能性もある。ここは協力すべきだろうと彼か考えた。

 

「好きに調べてくれ」

 

 太平洋保安公司の指揮官はそう言ってスーリオン大佐たちを村の中に通した。

 

 村の中にはリンスィールがいる。彼はまさにエーミール・ルートの襲撃から逃げてきたダークエルフである。

 

「探せ! それと思しきダークエルフは全員ひっとらえろ!」

 

 スーリオン大佐が叫び、近衛第2猟兵連隊の将兵が突入していく。

 

 彼らは荒々しく天幕を漁り、中にいたダークエルフたちを引きずり出し、銃口を突き付けてその場で尋問し始めた。

 

「大佐。テロリストの具体的な情報はあるのか?」

 

「ある。我々が知っておけばいい情報だ」

 

「クソ」

 

 太平洋保安公司側がスーリオン大佐の近衛第2猟兵連隊の所業に慌て始めるが、スーリオン大佐は捜査をやめようとしない。

 

 その捜査の手はリンスィールがいる病院に向けて進んでいる。

 

「大佐殿。病院の方にもダークエルフがいるそうです」

 

「じゃあ、調べろ。それから住民の半分はテロリストをかくまった容疑で連行する」

 

「了解」

 

 スーリオン大佐のやっていることは滅茶苦茶だったが、今さら太平洋保安公司にも止めることはできない。太平洋保安公司のコントラクターたちも津久葉の方針転換を理解していても、これまで仲間が殺されたことを忘れていないという事実もある。

 

 太平洋保安公司の軍医は既に病院を去っていた。彼女はこの付近の複数の村の病院を担当しており、一か所に留まらないのだ。

 

 そのため病院に押し入ってくる近衛第2猟兵連隊を止めるものはいなかった。

 

「な、何のつもりだ! ここは病院だぞ!」

 

「知るか。ここにエーミール・ルートから逃げたダークエルフがいるはずだ。出せ!」

 

「そんな人間はいない!」

 

 あのリンスィールに声をかけたダークエルフが病室の前で粘る。

 

 その隙にリンスィールは窓から逃げ出した。彼は闇夜の中を必死に走って、近衛第2猟兵連隊の包囲から逃れようとしていた。

 

 リンスィールは後方の病院から銃声が響くのを聞いた。誰がか撃たれたのだ。それを聞いて彼はますます走った。

 

 逃げなければ、逃げなければ。そうしなければ殺される。

 

 リンスィールはもう殺したりすることも、殺されそうになることも嫌だった。

 

「おおい! こっちだ、こっち!」

 

 リンスィールが森の中を走るのに声がした。

 

 リンスィールは一度身を潜め、声をゆっくりと聞き分ける。その声が間違いなく自分にかけられたものであり、同時に近衛第2猟兵連隊などではないことを、しっかりと確認したのだ。

 

「聞こえないのか? こっちだ!」

 

 声は近衛第2猟兵連隊ではなさそうで、間違いなくリンスィールに呼び掛けている。

 

 リンスィールは慎重に声の方に向かった。

 

「無事か? 安心しろ。俺たちは共和国陸軍だ」

 

 リンスィールを呼んでいたのは先ほどの襲撃を生き延びた共和国陸軍の残党だった。彼らはリンスィールを仲間だと思って呼んでいたのだ。

 

「ここから逃げるぞ。流石にこの数の近衛第2猟兵連隊は相手にできない」

 

「う、うん。でも、どこに逃げるの?」

 

「拠点だ。さあ、ついてこい」

 

 そして、リンスィールは次に共和国陸軍に同行することになったのだった。

 

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