異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~   作:第616特別情報大隊

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掃除

……………………

 

 ──掃除

 

 

 ヴァンデクリフトの猟犬たちはアフシャール排除に向けて行動している。

 

 彼らはホテルの図面を入手し、それからホテル従業員の制服とIDを密かに入手した。清掃員のそれを身に着けたヴァンデクリフトの猟犬たちが動き出す。

 

 彼らはまず従業員用出入口から侵入。清掃道具の中に銃火器を紛れ込ませた彼らは、アフシャールが偽名で宿泊しているホテルのロイヤルスートを目指した。

 

 清掃道具の入った清掃カートの中には、サプレッサーが装着された自動拳銃とカービン銃が入っている。彼らは誰にも怪しまれることなくエレベーターに乗り、従業員IDでロイヤルスートのフロアに入った。

 

 それから真っすぐアフシャールの部屋を目指す。

 

 アフシャールの部屋の前には武装したヴァリエンティア人がいた。その男は神通たちが近づくと、止まれと言うように手を上げた。

 

「この部屋の清掃は頼んでいないぞ。どういう──」

 

 瞬時に神通たちは自動拳銃を取り出し、男の胸と頭に二連射(ダブルタップ)で銃弾を叩き込んだ。男の脳漿がロイヤルスートフロアの壁にまき散らされる。

 

「扉を」

 

「了解」

 

 それからすぐに偽造したカードキーでロイヤルスートの扉を開き、電子音が響いて鍵が開いたと同時に部屋の中にスタングレネードが放り込まれる。

 

 炸裂したスタングレネードによって、部屋の中から悲鳴が響く。

 

「ゴー、ゴー」

 

 それからカービン銃で武装した神通たちが室内に突入。

 

 室内の人間はスタングレネードに目と耳を潰されており、彼らが抵抗できない中で神通たちがカービン銃で次々に男たちを射殺していく。

 

「お、応戦しろ!」

 

 高級なソファーやテレビが流れ弾で破壊される室内にてアフシャールの護衛が応戦しようとするが、神通たちが奇襲で作った優位が崩せなかった。

 

「クリア」

 

「クリア」

 

 リビングにいたアフシャールの護衛は全員排除された。

 

「アフシャールを探せ。ここにいるのは間違いない」

 

「了解」

 

 それから神通たちはロイヤルスート内を捜索。この部屋にいることを確認しているアフシャールを探した。

 

 ベッドルームやダイニングなどを調べ、そしてバスルームに押し入ると。

 

「撃つな、撃つな!」

 

 アフシャールはバスルームのバスタブの中に隠れていた。

 

「アフシャールを確認。生体認証完了しました。間違いありません」

 

 ARデバイスでアフシャールの顔の骨格や網膜をスキャンして、神通の部下が報告する。ここにいるのは影武者などではなく、間違いなくアフシャールだ。

 

「オーケー。さようならだ、アフシャール」

 

「ま、待て! 金なら──」

 

 サプレッサーに抑制された銃声が響き、アフシャールの脳天に2発の銃弾が叩き込まれた。バスタブの中にアフシャールは崩れ落ち、頭から溢れる血がゆっくりと排水溝に向けて流れていった。

 

「殺害を確認。撤収だ」

 

 アフシャールが完全に死亡したことを確認すると神通たちは撤退。

 

 こうしてアフシャールは排除され、ダークエルフはそのことをのちに知ることになる。アフシャールは表向きは強盗殺人にあったとされ、そう報じられたのだ。

 

 神通たち猟犬たちは密かにヴァリエンティアからエルディリアへと帰国し、ヴァンデクリフトに任務達成を報告した。それからヴァンデクリフトが上司の司馬へとことの顛末を報告する。

 

「ご苦労だった、ヴァンデクリフト。しかし、これでアフシャールは死んだが、武器の流れはこれから絶対に止まるわけではない」

 

 司馬はヴァンデクリフトにそう言う。

 

「フィリアン・カールのダークエルフが武器を求める限り、どこからか武器は流入する。やつらは資本主義に納得していないようだが、資本主義の恩恵は受けている。すなわち需要と供給の恩恵をな」

 

 司馬は忌々し気にそう語った。

 

「では、これからも暗殺の実行を?」

 

「選択肢に入れておく。だが、根本的な治療なくして改善は認められない。いつまでも対処療法では完治しない」

 

「ええ。その点は同意します」

 

「もはやパンドラの箱は開かれている。いずれ地球製の武器は珍しくもなんともなくなるだろう」

 

 ヴァンデクリフトが頷くのに司馬はそう言って顎に手を置いた。

 

「まずはダークエルフの資金源となっている人身売買を取り締まりたい。そのことについては地球の世論も賛同することだろう」

 

「しかし、どのように? エルディリアでは人身売買は完全に違法ではありません」

 

「テロリストの資金源だとすれば、取り締まれる。アイリアン殿下に働きかけて、ダークエルフの奴隷を売買するのをやめさせよう」

 

「待ってください。ダークエルフの奴隷は近衛第2猟兵連隊も売買しています」

 

「ああ、クソ。あの連中もだったか……」

 

 そう、近衛第2猟兵連隊の汚職軍人たちも、戦場でダークエルフを捕えては奴隷として奴隷市場に売り払っているのだ。

 

「いずれにせよ、資金源を断つことからだ。近衛第2猟兵連隊以外のダークエルフ売買の禁止としてでも法律で取り締まり、テロリストの資金源を断たなければ」

 

「その点については同意します。こちらでも考えを纏めておき、ホンダと協力して規制の草案を考えてみます」

 

「頼むぞ、ヴァンデクリフト」

 

 こうして司馬たちは人身売買規制について、エルディリア政府に求めることになった。ダークエルフたちの中でも共和国陸軍は明らかに人身売買で利益を得て、それを軍資金にしているという事実を提示するとともに。

 

「言っていることはよく分かる、司馬。ダークエルフどもは同胞を奴隷として売り払って資金を得ているということは」

 

 司馬と面会したアイリアンはそう言う。

 

「だが、現実問題として奴隷市場で売買されている奴隷がどこから来たのかをはっきりさせるのは、あまりにも難しいんだ。そちらの世界では想像できないだろうが、こちらでは奴隷はパンぐらいありふれた存在だからな」

 

「これを規制しなければ、ダークエルフたちの資金源を断てません」

 

「それは分かっているよ。いっそ奴隷制を廃止するというのはどうだろうか?」

 

「奴隷制の廃止、ですか?」

 

 さきほどまで奴隷はありふれた存在と言いながらも、奴隷制の廃止を提案したアイリアンに司馬がやや驚く。

 

「どうも地球の資本家たちは我が国の奴隷制度を嫌っている。私はこのまま奴隷制を維持するより、地球の資本を導入して、このエルディリアをもっと発展させたい。協力してはくれないか?」

 

 なるほど。アイリアンは奴隷制そのものから利益を得ていない。だが、地球の資本がエルディリアに投じられれば、美味しい汁が吸える。

 

 だから、地球の投資家が投資を躊躇う原因である奴隷制度を廃止して、もっと地球からの投資を呼び込もうというわけだ。

 

「近衛第2猟兵連隊はダークエルフの売買で潤っていると聞きますが」

 

「彼らのことは私に任せたまえ。問題は別にある」

 

「保守層の反発ですか?」

 

「まさに」

 

 奴隷が何に使われているかと言えば、主に労働だ。そして、奴隷を多く保有しているのは保守層に位置する大貴族たちで、彼らは農場で奴隷を多く働かせることで、領地から利益を得ていた。

 

「殿下は保守層の支持を得ていると聞きますが、彼らと対立するのは危険では?」

 

「ああ。危険だ。しかし、女王陛下は私の意見に賛同するだろう。我々王室はフィリアン・カールで信じられないほど富んだ。他の地球からの投資も国庫を潤している」

 

 後はこの旨味を大貴族たちにももっと味合わせることだと、アイリアンは言った。

 

「彼らも利益が得られるような開発をというわけですか」

 

「そうだ。しかし、すぐに理解してはもらえないだろう。その間、私の身を守る人間が必要になる。殺されてしまってはどんな改革も行えない」

 

「ええ。こちらで手配してもいいのですが、いかがしますか?」

 

「頼もう。近衛第2猟兵連隊も一応フィリアン・カールから引き上げさせておきたい」

 

「太平洋保安公司に連絡しておきます」

 

 私兵に近い軍の部隊をアルフヘイムに呼び戻すということは、保守層の反乱を警戒しているか、あるいはアイリアン自身がクーデターを計画しているかだ。

 

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