異世界で資源を開発する話。 ~いかにして地球企業は異世界を征服するに至ったか~ 作:第616特別情報大隊
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──企業は異世界を征服した
大井が支援したアイリアンによるクーデターは成功した。
「万民の守護者にして、信仰の擁護者、そして我らが王。アイリアン王万歳!」
「アイリアン王万歳! 偉大なる王よ、永遠に!」
王都アルフヘイムの王城にて喝采が湧く。
今や邪魔なギルノールやガラドミアは存在せず、さらに大井はアイリアンを事実上の傀儡政権としていた。
「これから我々はエルディリア政府に大規模にコミットメントしていく」
司馬がそうエルディリア事務所にて告げる。
「これまでは軍事においてコンサルタントを派遣していたが、これからは経済政策の策定や政治的な活動にもコンサルタントを派遣する。それによってエルディリアにおける大井の利益は守られることだろう」
政治・経済・軍事。その全ての決定に大井が何らかの形で介入し、意思決定をを操作することによって、大井にとって都合のいい決定を行わせるのだ。
「エコー・ワン鉱山に続く他の地域での活動も予定している。これからも我々はエルディリアにおいて資源開発を進めていくことになるだろう」
司馬はそう言って今回のクーデターに関する報告を終えた。
「ボス。聖地解放運動の方は無事に部族代表会議に合流しました。今では部族代表会議はエルディリアの傀儡ではなく、フィリアン・カールにおける我々に友好的な自治組織として機能しています」
「それは何よりだ、ヴァンデクリフト。今回の失敗点などをリストアップし、これから同じような案件に遭遇した際のマニュアルを作成しておいてほしい。我々は二度も、三度も同じ失敗を繰り返してはならない」
「了解」
ヴァンデクリフトもフィリアン・カール情勢が安定しつつあることを報告した。
アイナリンド大佐はこれ以上の流血を望まず、ダークエルフが勝利したといえるだけの条件を得た。それによって彼女の政治的地位は高まり、今では伝説的な指導者として、神のようにダークエルフたちに崇められている。
「これで万事順調だと改めて言える。私は報告のために一度東京に戻る。暫くの間の責任者はホンダが務めてくれ」
「分かりました」
「では、頼むぞ」
司馬はそう言ってエルディリアから東京へと戻る。
ゲートを潜り、検疫を受けてから地球に上陸。
「お迎えに上がりました、司馬様」
迎えに来たハイヤーはリチウムを材料に使った
通りには多くの人々がおり、ARデバイスやスマートフォンを操作している。それらのバッテリーになっているのもリチウムだ。この街をざっと見渡しただけでも、リチウムが使用されているものが百以上上がられるだろう。
「資本主義とはまさに需要と供給だな……」
「? どうされましたか?」
「何でもない」
市場が求める限り、供給は行われる。
それが血を吸った商品であろうとお構いなしに。
かくして、企業と資本主義は異世界を征服したのだった。
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