思っていた以上に面白かった。にしてもあれがジャック・スパロウ・・・とても魅力的なキャラだ。どうせなら彼になってみたかった。あそこまで頭の回転が早い訳ではないが。
そんな感想を抱いていると眩しさに目を焼かれる。慣れてくると目の前にはぼやけてはいるが老人が優しげな笑みを浮かべていた。
「この様な所に赤子を見捨てるとは。主よ、この赤子に聖なる祝福を与えたまえ。」
そうして俺は抱き抱えられた。というより赤ん坊からなのか。そして捨て子だったのか。運がいいな。
老人は俺を抱えながらどこかへ歩き出す。その際の揺れが心地好く一気に眠気が襲ってくる。俺は導かれるように眠りに着いた。
次に目が覚めた時にはどこかに寝かせられていた。両隣りにも俺と同じ様に赤子が寝かせられている。両方とも金髪だ。兄弟か姉妹なのだろう。
にしても腹が減った。そう思った途端、俺の意識とは別に泣き出してしまう。すると修道服?を着た女性が俺を抱き上げて哺乳瓶でミルクを飲ませてくれる。
味は無い。だが、多分そんなものなんだろうと納得しそのまま飲み続け腹を満たす。腹が満たされればまた眠る。そんな生活を長い間していた気がする。
いつの間にか体の感覚がハッキリして曖昧だった五感が戻ってくる。そして完全では無いが歩ける様にもなり自由に探索しては連れ戻される日々に繋がる。
まさか自分自身で赤子の成長を見る事になるとは思わなかったが中々に面白い。痛くもなければ辛くもない。こんなに楽しいのは初めてだ。
両隣りにいた『アーシア』と『イザイヤ』とは、まるで兄妹の様に仲良くなりいつも三人でいた。飯を食う時も遊ぶ時も喧嘩する時も寝る時も。この体験が更に俺を楽しくさせた。
だが四歳になった時、とある二つの事が起こった。一つはイザイヤの失踪。もう一つは俺とアーシアの異能が発現した事。
イザイヤの失踪は孤児院で大騒ぎとなりあらゆる人達が探すも結局見つからなかった。俺もコンパスを頼りに探そうとしたが、肝心のコンパスが何処を探しても見つからない。毎晩泣くアーシアを落ち着かせながら俺も悲しみに暮れた。
そして異能の発現もまた嵐を呼んだ。俺の異能はまだしも、アーシアの異能は教会を騒がせるには充分な起爆剤。聖女として祀られ連れて行かれた。
俺たち三人はバラバラになった。だが、俺は残ったアーシアを一人にさせない為に教会へと入った。だがそれでも会う事は出来ない。
一番可能性があるのは教会の戦士となって昇進する事。俺は自ら痛みへと飛び込んだ。だが昔と違うのは目的がある。それにより、どんな痛みも耐えることが出来た。
だがやはり俺は運が良かった。訓練へ出向く際にアーシアの部屋を偶々見つけた。それも登れそうな木の近くだ。訓練終わり、近くにあった小石を拾い人目を盗んで木を登る。
アーシアの部屋を見て電気が付いているのを確認すると窓に向かって小石を投げる。幸い、ガラスは割れることなくアーシアが窓を開けた。
「ジャック!?」
「しー!声が大きい。」
アーシアは口を両手で塞ぐ。こういう所は変わってない。いくら聖女と呼ばれてもやっぱり俺の妹だ。
「こ、こんな事してたら怒られちゃうよ!」
「少しの間ならバレないさ。それよりもお互い、今日あった出来事でも話そう。」
そうして俺たちは毎日、夜の少しだけ話す事が日課になった。俺は訓練終わりに、アーシアは聖女としての仕事終わりに。
そんな生活を五年程続け、俺は遂に実戦へ赴く事になった。