スパロウに憧れる者   作:ぺへ

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3話

アメリカ某所。田舎の廃村にある剣を回収するというのが今回の任務だ。詳細は教えられなかったが言う事には必ず従えという。俺以外にも男女の訓練生が居て、教官も五名。総勢十五名の団体だ。

 

ここまで教官が多い理由は向かっている場所に悪魔が何名か居るらしい。正直、信じ難い事だったが異能があるのなら居るのだろうと納得した。

 

それにしても、いつまでも歩くのだろう。体感では既に数時間は歩いている。それも森の獣道だ。悪路にも程がある。実際、俺を含め慣れない道に子供達は疲弊しきっていた。

 

何となく後ろを向けば栗毛の髪をした女の子が盛大に転んだが誰も助けようとはしない。少しため息をこぼして彼女に手を差し伸べる。

 

「ほら。大丈夫か?」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

「どうした?そんなに落ち込んで。」

 

「つ、疲れただけよ!」

 

「その元気があれば大丈夫そうだな。ほら、行くぞ。」

 

彼女を引っ張り俺達は列を追う。そしてまた歩き続けようやく目的地へ到着したらしい。俺と彼女が最後に足を踏み入れた瞬間、突然空がキラリと光り何かの文字に埋め尽くされた。

 

「な!?結界か!?」

 

「まさか、気付かれていた!?」

 

教官達の慌てように訓練生の間では不安が拡がっていく。隣の子も今にも泣き出しそうだ。だが俺にとっては興味深い。その辺の雑草を抜き投げてみると燃え上がった。

 

「へぇ。こりゃあ面白い。」

 

ますます、異世界だと思い知らされるな。まあ喜んでいる場合では無いか。結界とやらは奥に見える教会まで続いている。進む以外道無しってとこか。

 

「これは・・・進むしか無いな。」

 

「くっ・・・悪魔どもめ・・・!!」

 

教官達は苛立ちに包まれている。だが、可能性を考慮しなかった教官達が悪い。まあ口に出せば斬られるから言わないが。

 

栗毛の子はと言うと既に腰を抜かして泣いていた。世話の焼けるやつだ。

 

「立てるか?」

 

「む、むり・・・」

 

「しょうがない。おんぶしてやるから落ちるなよ。」

 

有無を言わさず彼女をおんぶする。何故か俺は彼女達より恐怖を感じていない。恐らく、未だに現実感が湧かないからだろう。

 

皆、恐怖心に何とか抗いながら時間を掛けて教会へ辿り着く。教官達は警戒しながらドアを開け、そして二人殺された。頭だけが弾け飛び、それを見た連中はパニックに陥った。

 

一人の子供が逃げ出そうと結界に触れ燃え上がる。焼かれるという苦痛の中死んでいく。そしてパニックはもっと強くなった。誰も教官の言葉など耳に入っていない。

 

背中の子も泣き喚いている。ここに居ても巻き込まれるだけだろう。そう思って、全員の目を盗み教会内へと侵入する。入る時に死ぬかもと思ったが、扉を開けた時にしか作動しない様だ。運がいい。

 

栗毛の子をチャーチチェアの後ろに隠す様に座らせる。俺は剣を抜き警戒した。ここは既に敵地。どこからでも来るだろう。

 

そして今しがた入った扉から全身を燃やした誰かが慌てて入ってきた。熱さに泣き叫びながら転げ回り、タコ足の様な物に刺された。恐らく、あれが悪魔とやらだろう。

 

声を上げようとする女の子の口を手で塞ぎもう片方の手で静かにとジェスチャーを送る。

 

意味を理解した女の子が震えながら頷いたのを確認して手を離す。女の子の綺麗な顔は既にぐちゃぐちゃだ。

 

ゆっくりとチャーチチェアの後ろを移動し端から気付かれないように覗くと、この世のものとは思えない物体が焼かれた遺体を貪っている。

 

幸い後ろを向いていた事もあり俺は思いっきり剣で突き刺した。

 

『ブォォォォォォォォ!!!!』

 

「おわっ!」

 

突然の痛みに驚いたのだろう。剣を抜こうと暴れだし、握っていた俺も振り回される。離せば死ぬかもしれない。故に手放せない。

 

だが剣の方が持たず、根元から折れてしまいチャーチチェアを幾つかぶち破って壁に激突した。

 

痛いし苦しいが前に比べればそうでも無い。立ち上がり横に逸れると、さっきまで居た所にタコ足が突き刺っている。

 

「危ねぇな、チキショウ!」

 

悪態を付きながら化け物の背後を目掛けて走る。真っ直ぐに行けばタコ足の餌食だ。

 

持ち手だけになった剣を捨て走りながら、折れている棒を拾い只管に走る。そして、追いかけっこをすること体感五分。

 

化け物は入口から入ってきた複数の子に意識を切り替えた。正直、アイツらを助けられそうには無い。見捨てるつもりは無いが、死んでも仇は取ってやる。

 

今まさにタコ足で子供達を攻撃しようとした時、ようやく剣を突き刺した場所まで辿り着けた。俺はそのまま棒を突っ込み化け物の体を貫く。

 

甲高い悲鳴を上げた後、化け物は力尽き体が溶解した。ドロドロに溶けた化け物の上に四角形の物体だけが残っている。拾い上げ開けてみればコンパスだ。

 

その時、俺の頭に二つの風景が照らされた。一つは通り道だった為覚えがあるが、もう一つは見た事もない場所。

 

「なるほど。神からの試験だった訳だ。」

 

悪魔とやらはコイツ以外には出ない。恐らく情報自体間違いだったのだろう。とりあえずコンパスに目をやるとクルクルと回転していた針が一点を指す。

 

「まあいい。帰るとしよう。」

 

数名の子供を連れて、俺たちは教会の外へ出た。




コンパスの外箱は『パイレーツ・オブ・カリビアン』、中の羅針盤は『ワンピース』の『ログポース』をイメージしています。
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