教会の外へ出れば悲惨そのものだ。丸焦げの死体に剣に貫かれた死体がそこら中に転がっている。
壁には教官がもたれかかっており腹部には剣が突き立てられている。近付いて見ればまだ息はある。
「大丈夫ですか?教官。」
「君は・・・?ああ、訓練生か・・・。ははは、情けないな・・・」
「喋らないで下さい。今、剣を抜きます。」
「いやいい・・・。こういう場合は抜けば死ぬ可能性が高くなる・・・。救助を呼んだから待っていればいい・・・」
「お前ら、教官に声を掛け続けといてくれ。絶対に動くなよ。それと栗毛。その剣を貸してくれ。」
「あ、あなたは何処に行くの!?さ、さっきの化け物が襲ってきたら私達・・・!!」
「そいつらが居ないかの確認だ。いいか。さっきみたいなのが来たら全員で叫べ。すぐに来る。ほら、さっさと剣を寄越せ。」
栗毛は再び泣きそうになりながらも震える手で剣を渡してくれた。正直、持ってても俺の技術じゃ意味無いだろうが無いよりはマシだ。
俺はそのまま森の中へ入る。さっき手に入れたコンパスを頼りに来た道を戻る。そして見つけた。さっきまでは無かったはずの白骨化した死体。
右肩から掛けられた革製の鞘に収まっている剣に頭に被った三角帽子。そして肋骨の間に添えられた紙。
少し気持ち悪いと思いながら、紙を手に取り広げると手紙だ。恐らくあの神様からだろう。
そして再び船の上にいた。正面には久しぶりに見た神様だ。
『やあ、随分と久しぶりだね。中々に茨の道を進んでいるじゃないか。』
「まあな。それで?試験は合格か?」
『ああ。正直、あそこまでやるとは想定外だったよ。まあ、テストにはちょうど良かっただろう?』
そう言って神は酒を取り出しショットグラスへ注いで片方を俺に手渡す。
『君の成長に。』
「ああ。俺の成長に。」
グラスをぶつけ一気に飲み干す。やはり美味い。
『さて。君はコンパスと剣を手に入れた。後、帽子も。ただし扱いには注意しなよ。コンパスと剣には僕が直接掛けた呪いがある。君と君が心を許した相手以外が触れると呪い殺す。』
「了解。覚えておくよ。」
『それと船も自力で頑張って探すといい。パール号以外には呪いを掛けていないからね。』
「ブラックパールにはどんな呪いを?」
『それは自分で調べなよ。その方がワクワクするだろう?』
「まあ、確かに。」
『それでは良い旅路を。』
神様がニコリと微笑むと目の前には再びガイコツだ。心做しか笑っているようにさえ見える。帽子と剣を拝借した所で上空をヘリが飛んでいく。恐らく救助隊だろう。
急いで戻ると教官が担架で運ばれている。顔には布を掛けられて。どうやら俺以外は全員ヘリに乗ったらしい。にしてもヘリがあるなら態々ハイキングする必要は無かったろ。
「あなたが最後よ。よく頑張ったわね。」
修道服を着た女性が手を差し伸べ、それと取りヘリに乗る。ヘリ内には泣きじゃくる子供達とその傍に着いているシスターが数名。栗毛を見つけ声をかける。
「ほら。返すよ。」
「ひっぐ・・・ひっぐ・・・」
今まで見てきた恐怖が襲ってきたのだろう。全てが初めての体験。抜いた剣を鞘に納め適当に空いている場所に座る。
「初めまして。私は『グリゼルダ』。君の名前を聞いても?」
「俺はジャック・・・ジャック・スパロウです。」
俺は彼女に嘘を付いた。ジャックと呼ばれているのもアーシア達にそうだと教えただけで本名では無い。そもそも俺に苗字と呼べるものも無い。
それを知らない彼女は優しく微笑みながら俺の頭を撫でる。女性の手らしく小さく柔らかい。それなのに安心感を与えてくれる手。
「よく頑張りました。あなたのおかげであの子達の命は救われた。ありがとう。」
「・・・」
「ゆっくり休みなさい。」
微笑み他の子達の所へ行く。また別のシスターが来て何かを言っていたが耳に入らない。そもそも撫でられるのなんていつぶりだろうか。アーシアも撫でられているのだろうか。
そんな事を考えていると急激な眠気に襲われる。疲れが一気に襲ってきたのだろう。
俺は逆らわず、体のままに倒れ眠りについた。