目が覚めるとまだヘリの中だ。でも頭にある感触は固いと言うより柔らかい。顔を上に上げればシスターがいた。
「ふふ。おはよう。」
「おはようございます。着いたんですか?」
「ええ。後は私達だけよ。立てる?」
「恐らく。」
頭を上げ立ち上がったはいいが、フラりとよろめく。倒れそうな所をシスターが支えてくれる。
「まだ無理そうね。」
「大丈夫です。酔っ払い気分を味わえますから。」
「ふふ。なによそれ。」
再び自分の足で立つが体が以上に重い。緊張感が抜けたからだろう。心は穏やかでも体は無理をしていたようだ。
ヘリから降りれば乗っていた子供達が親らしき者達と抱き合っていた。それを見て、俺は守れたと安堵する。
「ジャック!!」
「おっと。よう、アーシア。」
ふらつきながらもアーシアのハグを受け入れる。彼女は目を赤く腫らしていた。
「良かった・・・!イザイヤだけじゃなくてジャックも居なくなったと・・・!!」
どうやら彼女もイザイヤの事は覚えていたらしい。コンパスの事はまだ言わない方が良さそうだ。
「聖女様!いけません!!」
数人の神父が走ってきて俺とアーシアを引き離す。アーシアは泣きそうになるのを堪えそれを受け入れた。少しイラついたが、俺には何も出来ない。それでも伝えなければいけない事が俺にはある。
「アーシア。」
今、背を向けたばかりのアーシアが振り返る。神父達の目も俺を怪訝そうに見ている。
「俺は死なない。たとえ離れていてもそれは変わらないさ。だからそんなに悲しい顔をするな。」
アーシアはそれを聞いて満足そうに微笑み神父達と歩いていく。家族との再会を喜んでいる子供達を少し見てコンパスを開く。
俺が今、心から望んでいるのはイザイヤの遺留品だ。もし死んでいないのならコンパスは道を指しはしない。だが俺の予想とは違ってコンパスは道を示した。
「あなたは家族の元へ行かなくてもいいの?」
後ろを振り返れば微笑むシスター・グリゼルダがいた。そして俺が振り返った事によりコンパスへ視線が行く。
「ええ。俺は家族と会いましたから。」
「そう。そのコンパスは?かなり古い様だけど。」
「兄弟から貰ったものです。と言っても数年は行方不明ですが。」
「そう・・・。ごめんなさい。言い辛い事を言わせてしまって。」
「気にしてませんよ。では。」
俺はコンパスの指す方向へ足を運ぶ。最初は腰に下げていた剣だが身長のせいで転びそうになる為、背中に背負う事にした。コンパスの言う通り右へ左へ。
そしてようやく辿り着いた場所は山奥にある建物だ。人の気配は感じられないが少しの間、様子を見て出入りが無いかを確認する。
三十分ほどしても人っ子一人通らない為、そのまま侵入した。ドアには鍵は掛かっておらず、電気も通って居ない様で真っ暗だ。
任務の際、懐中電灯を忍ばせて良かったと思いそのまま探索を始める。一階を歩き回っているとコンパスは真下を示した。
「・・・なるほど。地下か。」
剣を抜き『地下への出口を開けろ』と心の中で願うと目の前の床が崩れ行けるようになった。それもただ崩れただけでは無い。崩落した物が階段を作りあげているのだ。
「これは凄い。注文通りだな。」
下へ降りればとてつもない激臭が鼻を襲う。慌てて鼻を摘んでも呼吸の度に臭いを感じてしまう。
「何の臭いだ・・・?というより鉄格子・・・?」
懐中電灯で反射した鉄製の檻。何か動物でも飼っていたのかと思ったが違った。中に居たのは既に骸骨となった人だ。床には何かの液体がこびり付いている。
そして死体は一つでは無く数え切れない程ある。その全てが同じく骸骨だ。コンパスに目を向ければ骸骨の山を示している。
「マジかよ・・・。」
まだ生きているかもしれないという希望的観測さえも失われた。胸中は悲しみに支配されるがここで立ち止まれはしない。イザイヤの分も生きてアーシアを守らなければいけない。
俺は骸骨達に「また来る」と声を掛け地下への入口を閉じた。