「なあ、聞いたか?例の大火事。」
「ああ、あれだろ?晴れてたのに森の一部が火事になったってやつ。」
朝、食堂ではその話で持ち切りだった。昨日、ソビーニャと弔ったあの建物だが、如何せん燃料が多く周りまで延焼したのだ。
結果、二人で消火するのは
それだけの大規模火災を誰も見ていないはずも無く、こうして話題に出されている。
犯人である俺は特に顔に出す事は無かったが、それ以上に困っている事も当然ある。
「・・・ずっと俺を見てるがなんか付いてるか?」
「み、見てなんかいないわ!」
ずっと栗毛の女が見てくる。それもあの時助けた女だ。
既にこの会話は三回はやってる。無視しようにもずっと見てくる為気になって仕方ない。
俺は食器を持って立ち上がると彼女も急いで食事を食べ始める。それを横目に見つつ食器を返却して外へ出た。
今日は何も無い日だ。というのも、あれだけの大惨事を経験した為、大人達から療養しろと言うことで何もする事が無い。
「ま、コイツに慣れるか。」
俺は訓練場へ寄ってカカシを複数借りた後、焼け野原へ歩みを進める。
「・・・」
ずっと付いてくるな、アイツ。しかも変な頭巾を頭に被って。まさか、アレで隠れてるつもりなのか?だとしたら、よっぽどのバカだ。
「お前、いつまで付いて来るつもりだ?」
「な、なんで分かったの!?」
どうやら本当のバカらしい。頭巾をズボンに突っ込んでコッチへ走ってくる。真剣な目で俺を見つめて頭を下げてきた。
「あの時は本当にありがとう!どうかお礼をさせて!」
「いらない。」
「お願いよ!なんでもするから!」
正直、凄い面倒だ。だが、往来でこんな事をされて周りの目が気になる。
「分かったよ。んじゃ、これを運んでくれ。」
頭を上げた彼女にカカシを投げ渡し歩を進める。彼女も置いて行かれないように走ってくる。
「ねえ、ジャック君!今からどこに行くの?」
「広い場所。」
「広い場所?それに訓練用のカカシって事はトレーニングをするのね!?」
「いいか、お嬢さん。頼むから少し静かにしてくれ。」
「やだ!」
何でもすると言いつつ拒否か。少しイラっとしたがまあいい。
「それじゃあお願い事だ。場所は聞かないでくれ。着いたら分かるから。」
「分かったわ!」
それからも彼女はずっと喋っている。得意料理や好きな飲み物、果ては幼馴染がどれだけしつこかったかを延々と聞かされた。
途中スコップを二本拝借すれば、それを何に使うのか永遠に聞いてくる。適当に答えれば良いように勝手に解釈する。
そんな事を繰り返している内に昨日荷車を隠した近くまで来た。
「ここでいいだろ。ほら、お前も手伝え。」
「お前じゃなくてイリナだってば!」
「分かったからとっとと手伝え。」
スコップをイリナの前に挿して俺は穴を掘る。彼女も手に取り掘り始めた。掘ってる間もずっと話しかけて来る為、相当な体力の持ち主なのだろう。
「それでその幼なじみがね!俺は主人公なのに!とか言い出して!」
「主人公?」
「ええ。正直今もだけど、何言ってるんだろって思ってた!」
「本の見すぎだな。」
「本当よ!でも離れられてスッキリしてる!」
「そうかい。よし、こんなもんでいいぞ。」
体感で約一時間、二人で掘りっぱなしだった穴はそれなりの深さになった。後はこいつが見ていない間に隠し扉でも取り付ければ色々隠せるだろ。
「少し休憩だ。飯でも食いに行くか?」
「なら、家なんてどうかな?お料理屋さんなの!」
「決まりだ。道案内は頼む。」
嬉しそうにするイリナの後ろを俺はついて行った。